ブラームスはお好き (新潮文庫)

  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784102118047

感想・レビュー・書評

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  • 小説全体が、表題のブラームスの音楽のように、気だるく哀愁に満ちた雰囲気をかもし出していると感じた。登場人物の心情や関係性の変化は、『悲しみよこんにちは』よりも複雑になっているなと思った。ロジェという恋人のいる39歳のポールに対し、25歳のシモンが想いを寄せる。導入の設定は明快であるが、そこからが39歳という年齢に達した女性の、複雑な気持ちの揺れ動きが描写されており、若造としては勉強になった(?)
    ポールはロジェという恋人と6年間付き合っている。しかしロジェは浮気を繰り返し、悪びれもしていない。会えない日が多く、ロジェにとって自分は本当に必要な存在なのだろうかと思い悩む。そんな中、美貌と優しさを兼ね備えた25歳のシモンが現れる。彼はポールに若々しい熱烈な愛情を注いでくる。愚直な発想をすれば、そのままロジェなど捨ててシモンと付き合ってしまえばいいではないか、となるのだが、39歳のポールはそう単純には動かない。
    ロジェと過ごした6年という歳月は、彼女にとってはそれなりの重みがあった。シモンは『かれ』であるが、ロジェは『わたしたち』。シモンのように自分を必要としてはくれないが、ロジェはもはや同胞、家族のような存在であり、ロジェへの、苦しみを伴う、献身的な支えが、いつしか自らの存在理由となった。それを投げ捨てて、若い男との恋に走ることが、これまでの自らの努力、苦労を無にしてしまうことに等しかったのであろうか。
    シモンは、25歳の男性らしい、情熱的なアプローチを仕掛けてくる。それはポールに若き日の記憶を蘇らせたのかもしれない。そして自分ももっと若ければ、その情熱的な恋愛に身を任せることができたのかもしれない。しかし自分は39歳。ポールがシモンを選ばなかったのは、単に年の差があるから分かり合えない、とかいった単純な問題ではない。39歳になると、これまでの人生において経験して積み上げてきたものが少なからずあり、それらを積み木崩しのように簡単に捨て去ることができない。どうしても安定を求めるきらいはある。それらを捨て去ると、自らの過去の生活を否定することにもつながりかねない。
    『悲しみよこんにちは』の主人公セシルは18歳であったが、『ブラームスはお好き』の主人公ポールは39歳。同じ女性でも、年齢が違えば恋愛への向き合い方も全く異なる。2作連続して読むと、その事実をまざまざと見せつけられる。女性の心情の複雑さは、なかなか理解できないものだ。

  • 愛しているのに、孤独。愛しているから、孤独。
    しかし、もう愛する人なしには、そしてその孤独なしには生きられない。

  • 結局好きだったって思いたかった。
    ってことなのかな
    寂しかったけど時おり見せる優しさの「優しさ」の部分に惹かれていたであろう思い出が美化されてた、よくいる所謂「沼」にはまった女の人のような気がした。最後40手前になってまで、その時の自分を信じるのは少し自分には共感できなかった。
    けど考えさせられることはたくさんあった。
    登場人物のちょっとした感情の揺れの表現がうまくて、引き込まれた。変な癖がなくて読みやすかった。

    恋愛ってどれだけ相手と通じてるって思いたくてもそれは単なるエゴで大抵はずれてるけど、少なくともお互いに通じ合いたいと思い合う関係性でいたい。

  • 久しぶりに胸がきゅっとなった、甘くほろ苦い物語。ロジェに対するポールのやりきれない気持ちの言語化が好き。訳のおかげもあるだろうけど情景描写も心理描写もおしゃれ。
    欧米では年齢で女性の価値は変わらない!みたいなことをネットで見た気もするが、時代が違うとはいえ今日本人女性も感じるような心の揺れが描かれている。

  • ポールは結局のところ、ロジェを選んだんだな。
    或いは、選ばざるを得なかったんだな。

  • 山田詠美『トラッシュ』的。
    悶々とした移ろいの情念を思い起こさせる作品。
    パリのブルジョアへの理解が乏しいためか感情移入が難しい。

    1日のうちのほんの数時間のために生きてきている。それはあくまで普遍的な事実である。

  • これが元祖壁ドンか...?というシーンあった

  • パリの男女の恋の話。くどくないのに丁寧な描写に引き込まれました。悲しみよこんにちわと同じく、ハッピーエンドじゃなくて、でも悲劇とは違って、ただ、読み終わった後に心に消えない小さい傷を残してくる感じ。
    強くかわいく自立した女でいたい、でも歳を重ねて誰かに頼りたくなる弱る心。主人公と年齢が近く、そんな複雑な気持ちに共感しました。

  • 主人公達の恋愛心情が些細な事で微妙に変化するので、何が幸いし災いするか、フランス人がそうなのか著者の作風がそうなのか分からないが、相手に常に評価されてる様な感じもして、気疲れがした。ただし元来、筋を追うモノではなく、なんとなくパリの風景と男女間の空気が愉しめれば良い作品。何でもない(としか思えない)タイトルの文言は、ヒロインに刺さった台詞として出てくるが、その訳の分からなさを味わえるか否かで、好みが分かれそう。主人公の年齢が高めなのもポイント。

  • 最近読んだ本で1番好き

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著者プロフィール

1935‐2004。フランス、カジャルク生れ。19歳の夏、デビュー小説『悲しみよこんにちは』が批評家賞を受け、一躍時代の寵児となる。『ブラームスはお好き』『夏に抱かれて』等、話題作を次々に発表した。

「2021年 『打ちのめされた心は』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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