- Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
- / ISBN・EAN: 9784102169322
作品紹介・あらすじ
少年少女が際限なく殺されてゆく。どの遺体にも共通の"しるし"を残して-。知的障害者、窃盗犯、レイプ犯と、国家から不要と断じられた者たちがそれぞれの容疑者として捕縛され、いとも簡単に処刑される。国家の威信とは?組織の規律とは?個人の尊厳とは?そして家族の絆とは?葛藤を封じ込め、愛する者たちのすべてを危険にさらしながら、レオは真犯人に肉迫してゆく。CWA賞受賞。
感想・レビュー・書評
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国家保安官から地方の警官へと左遷されたレオ。
その田舎町でおきた殺人事件が、かつて自分が国家保安官時代に“事故“だと決めつけて調査しなかったモスクワでの少年殺人事件と類似していることに気づき、さらに広範囲で類似の子供殺しが起きていることを知り、命がけで調査に乗り出す。 類似の殺人事件もそれぞれの土地で、ろくに調べられないまま、今でいうLGBTなど国家から認められないものの仕業とされ、そういう人が自白を強要され、処刑されることで片付けられていた。
ソ連の体制の中で「殺人事件などあってはならない」とされていた中で、国家によって葬るように解決された事件を掘り起こして調べることは、バレたら間違いなく告発され処刑される。
しかし、元国家保安官だったレオは国家保安省の裏をついて、秘密裏に行動、妻と一緒に逃避行する様はハラハラドキドキ。アメリカ映画のよう。上巻では社会派ミステリーだと思っていたが、下巻になると「いくらなんでも」と思うくらい上手くいくアクションや命がけで奇跡のように味方になってくれるソ連の庶民たち、一番近くの裏切り者、死を目前にしたラブロマンス、主人公の秘密の生い立ちなどなどエンタメ性抜群。作者はドラマの脚本家として活躍されている方だそうだ。さすが。
犯人については、下巻の初めのほうでバラされていたのだが、上巻での伏線を覚えていなかった私は気づけなかった。でも、犯人を特定出来ても、そこからなんですよ。この小説のドラマ性は。
犯人を推測するミステリーとしての要素よりも「極限状態に置かれたときの人間の残酷性」や「極限状態の中で生まれる愛」、「束縛された社会で生まれる偏執性」など旧ソ連を舞台にした人間のドラマとして面白く読めた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「私のためじゃない。われわれとともに生活をしている人たちのためにやるんです。われわれの隣人のために。列車でたまたま隣り合って坐った人たちのために。知らない子供たち、これから会うこともない子供たちのために。」
正義を成そうとしたときに、その最大の敵が国家であるとき、進む先には絶望があるだけだ
少年少女連続大量殺人犯を追う元国家保安省捜査官のレオの前に立ちはだかるのは国家と言う名の絶対的な正義であり
レーニン主義の実現を目指す理想郷に住む人々は幸福に満ちた善良な者であり殺人犯など存在しないという作られた現実だ
それでもレオは進む
共に危険に身をさらす愛する妻と
殺人犯を憎み殺された子供たちに我が子を重ねる現実の善良な人々の助けを得て
そして国家との闘いの裏にもうひとつ大きな秘密が隠されていた!
いやいやとんでもない傑作でした!
終わり方も良かった!
しかもあとがきによれば本作はロシアでは発禁になっているとのこと、それだけでも読みたくなっちゃうわー
そして現在のウクライナ戦争にも通づるような思想も見え隠れして、今だからこそ読むべき一冊なのは間違いなし!
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本っ当に面白かった…なかなかこの本を超える面白さの本は現れないであろう…。上巻の冒頭が、まさかそういうことだったとはね…。
下巻は更に犠牲者も増え、更に絶対絶命で、ハラハラドキドキせずにはいられない。章ごとの引きも強すぎる。文章も上巻に引き続きかっこよすぎる、と、とにかく荒っぽい賞賛の言葉しか出てきません(笑)
全体主義への理解も否が応でも深まり、良い読書でした。続編も絶対に読みたい。
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普通だったらレオが殺人犯を追い詰めるのにドキドキするはずなのに、ソ連では事件を捜査していることがバレたら国家に対する反逆者になってしまうので、当局対レオの関係にずっと手に汗握りっぱなしだった。理想の国家に犯罪は存在しないから。そのせいで被害者が増え続けるとは、なんて皮肉なんだろう。
しかし刷り込まれて恐怖に支配された信念を壊すのは簡単じゃないはずで、それはレオの内心の葛藤から伝わってくる。だけどそんな葛藤は敵対する元同僚のワシーリーには見えないから、勝手に新しい信念でもって行動するレオに苛立ちを覚えたんだろうか。そのくせ逃げられているほうが生き生きするなんて、屈折してるな嫌いじゃないよ、と思ったんだけど。
犯人が連続殺人を行う意味や、ソ連という国家についても、読みごたえがあって面白かった。 -
スターリン体制下のソ連で起きた44人の少年少女連続殺人を描いた作品。実際にあった事件から着想を得たとされる。主人公は国家保安省の捜査官。連続殺人犯を捕まえるため、自らを危険にさらしてでも孤軍奮闘する。多くの敵をつくり、味方を危険な状況へ陥れ、結果、罪のない人々が罰せられていく。当時の貧しい生活や恐怖政治に怯える人々の姿、無慈悲な懲罰や拷問などもリアルに描れており、目を伏せたくなるほど痛ましい。ストーリーが非常に練り込まれており、とにかく息つく暇もないほどハラハラする展開に襲われる作品である。
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下巻の途中で はっ!!となった
それからは、色々な事が繋がってきて、鳥肌がたった
時代によって理不尽な事で命を落とす人が多かった一方、時代が変わっても起こる殺人
どんな時代でも子供が狙われる犯罪は心が痛む
上下巻の本だけど、引き込まれるように読みました! -
レオたちの絶体絶命の逃亡劇に
もうハラハラしっぱなしで
マジで疲れる。
けど、気になって止められない。
あぁ、おもろかった。
あと気になるのは弟の娘。
目の前で父親を殺されて
きっとレオを恨んでいるはず。
続編があるようなので読みたい。 -
レオは、少年少女が同じ方法で殺されてることを知り大量殺人鬼がソ連のどこかに存在することに気づき捜査を始める。しかし偉大な革命を成し遂げた理想の国家ソ連には"犯罪は存在しない"という考えから誰も1人がそんなことをしてるとは信じず、男色者、アルコール依存症など国に害を及ぼしかねない人をこの殺人の容疑者として何人も裁いた。
レオをおとしめたワシーリーは、最後までレオの邪魔をする。そこでレオと妻は捕まり収容所に送られることになるが、ソ連の人たちは洗脳され誰も助けてはくれないと思っていたレオだが、多くの人がレオの捜査のため命をかけ手を差し伸べる。
最終的に犯人を見つけ出すのだが、その犯人が誰であったのか、そしてレオの本当の過去とのつながりが見えてくる。
フィクションではあるが、ソ連に実在した52人もの少年少女をレイプし、殺害したアンドレイ・チカチーロ事件に着想を得て書かれている。12年間も逮捕できなかった理由は、この本に描かれている通りソ連時代の社会システムが原因である。
そして驚いたことに、この本はすでに20数カ国での翻訳が決まっているのだが、ロシアでは発禁書になっているという。
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初読
うーむむ、一気に動いたなぁー
読み進める方としては勢いに乗っていけるけど、
これ、全部載せ過ぎて尺が足りないんじゃないかなぁー
レオの変節からの構築、夫婦の関係性、体制からの人間の自由とは民主とは正義とは、
人を抑えつける側だったレオが人によって救われるカタルシス、ネステロフのキャラクター性、ワーシリーの妄執すら、尺が、尺が足りない!!
しかし、アレクサンドルの嗜好やチャプキン医師、イワンやレオの自白剤?等等伏線にいちいちオオー!
と反応し続ける私。
の割に、パタパタと小ぶりに収束していって、
続編に期待!な気配濃厚なまま
結局チャイルド44の動機は若干なんやそれ
な面も否めず…
イワンのアパートいいなー