ローマ亡き後の地中海世界 下

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103096313

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わって気付いた。この本はイスラム海賊史だった。

  • ローマ人の物語が完成し、早2年(だと思う)。10年以上の歳月を費やし、あれだけの大作を仕上げたのだから、もう七生さんの、新刊を読むこともあるまいと思っていただが、そうは問屋がおろさないとばかりに、「ローマ亡き後の地中海世界(上下巻あわせて800ページ)」の大作をこの短時間で仕上げてくるとは、まだまだエネルギーに満ちて溢れております。 内容は、西ローマが滅んだ直後から、近代が始まる直前までの地中海の勢力争いについて。イスラムの興隆、キリスト国同士の反目、両陣営のイデオロギーのぶつかりあい、イデオロギーなど感知しないベネチア、イスラム後ろ盾を得た海賊などが織り成す地中海世界の混乱は、パックス・ロマーナを作り出したローマの偉大さをあらためて浮き彫りにする。

  • 本棚を温めていた2冊を読むことができた。実は初めての塩野七生だったが、すばらしきストーリーテラーに導かれ、完全に地中海をタイムトラベル。海賊といえば、ワンピース並みにキャラの濃い実在の人物たちが生き生きと描かれ、著者がいうように樹と森のうち森がテーマな本書だけど、ちょこちょこ面白い逸話(=樹)を混ぜてくれる。読むの大変だけど、いっきに読むべし!

  • 下巻はコンスタンティノープルの陥落後、いよいよオスマントルコの勢力が地上でも海上でも西欧の脅威となっていた時代。オスマントルコ軍は赤ひげというギリシャ人海賊の頭目を海軍の司令官にしし、以後有力な海賊たちを利用することで、対西欧の海上での戦力としていた。一方西欧側もジェノバ人アンドレア・ドーリアなど、海上戦術に優れた指揮官を登用することで対イスラムの海上防衛を組織的に行うかに見えたが・・・。 当時の強国スペイン、フランス、そして交易国家のヴェネチア、さらにローマ法王庁のそれぞれの利権とキリスト教国としての立場が錯綜していて、まあ統制のとれないこと!よく500年後の今現在EUというひとつの共同体を組成できていると思う。そもそもイタリアという国もよくひとつの統一国家に成れたと思うけど。それも戦争の功罪?
    この本は主にヴェネチア共和国を軸に描かれているように思うが、1600年代以降の記述がないのは残念だと思う。でも、地中海が世界の中心であった時代は確かにここまで。以後新大陸の発見で舞台は大西洋へと移ってく。
    上巻は海賊と奴隷の話に終始していたが、時代が下るにつれ、今巻では突出した個人が活躍しているので、読みやすさではこちらかな。でもあまりに登場人物が多くて混乱してしまいます。
    少し前に「コンスタンティノープルの陥落」を読んだばかりだったので、入っていきやすかったですね。

  • 巻末には14頁にわたる参考図書が記載されているが本文中に書名が出てくることはない。これこそ歴史小説だと思う。自署についても最初に注意書き、後は注釈程度で良かったと思うが。
    欧州諸国の何故は充分読み応えがあるが、イスラム世界側は今ひとつである。その地に今立っても書いている時代に戻れたほどの資料は集まらなかったのだろうか。肖像画などビジュアルがないことも影響しているかもしれない(イスラムでは自画像は御法度らしい)。ローマ時代には緑豊かな農業地域であったという北アフリカが、緑化も困難な土地になってしまった経緯をもっと知りたかった。住み着いた人々の民族性だけが問題だったのだろうか。海賊産業に貿易業は無理だったのは理解できるが、周辺企業?の人々はどうやって食べていたんだろう。
    一神教は度し難い。人が人のために作ったものであるとつくづく実感した。

  •  本書では、1453年のビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルの陥落以降の地中海世界の歴史を描いている。この時代以降、イスラム教とキリスト教の対立は「大国のパワーゲーム」の世紀となる。オスマン・トルコのスルタン、スレイマン。フランス王フランソワ1世。スペイン王で神聖ローマ帝国皇帝でもあったカルロス。そしてローマ法王パオロ3世。キャラの立つ登場人物が繰り広げる国際政治は、現在といささかも変わらぬリアルでシビアな冷酷さを持ったものであると感じた。
     著者は戦いの描写がうまく、おもしろい。それぞれの勢力の背景である社会制度や経済状態、また文化の違いの描写は詳細にわたっており、興味深い。
     「マルタ騎士団の戦い」は、読んで人間の残忍さとともに、血湧き肉踊るワクワク感をも感じた。全ての力を振り絞った戦いには残酷さとともに感動をも覚える。そして、戦いの最終決戦のような「レパントの戦い」(1571年)へと物語りは盛り上がる。
     地中海世界におけるイスラムの海賊は、正規の事業として運営されていたことが本書で詳細に紹介されている。時代と価値観が違うとはいえ、あまりにもむごいと感じた。我々が「海賊」というと、ディズニーのカリブの海賊を思い浮かべるが、この地中海世界ではつい最近まで多くの「海賊」が跋扈しており、あらゆる海賊行為の厳禁を宣言した「パリ宣言」が成立したのは1856年だったことを本書は教えている。本書は、「平和」の価値と、それが成立するための条件をいろいろと考えさせてくれると思った。上・下巻ともに飽きずに読める良書であると感じた。

  • 7世紀から18世紀まで地中海世界の歴史は、北アフリカから来襲してくるイスラムの海賊なしには物語ることはできない。

    現在の地中海の観光地のほとんどが、かっては海賊に荒され人も住まない地であった。

    1740年、トルコは「海賊禁令」に国として調印、海賊は政府公認の「コルサロ」は無くなり私的な利益の「ピラータ」に戻った。
    1830年、フランスによるアルジェリアの植民地化の開始
    1856年、あらゆる海賊行為を禁止する「パリ宣言」が成立。

  • 陰惨たるキリスト世界対イスラム世界との対立。欧州人がかくも海賊に恐れを抱く理由が分かった。

  • 面白かった。

  • キリスト教世界とイスラム教世界の対立の歴史が、海賊という行為を通して生き生きと詳細に描かれており、物語に引き込まれるように読めた。五賢帝以降のローマ人の物語を読むよりも、よっぽど面白いと思う。

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