- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103198321
感想・レビュー・書評
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遠田さんの作品は3冊目。毎回一気読みしてしまう。
全体的に決して明るくはないけど、ラストの暖かい感じが好き。
人の弱さ、罪、劣等感など、みんなが持っている負のものを温かく受け入れて包んでくれている気がする。 -
以前読んだ『雪の鉄樹』がとても良かったので、ここで評価の高かったこの本を読んでみることにした。
醤油を作っている蔵を改装する場面から始まる。
主人公の銀花とその夫がその様子を見守っているが、蔵の床下から子どもと思しき白骨死体が見つかる。
いきなり殺人事件?と思わせるような展開。でも銀花には思い当たることがあるらしい。彼女に驚きや焦り、怯えなどは見られない。
そして次の章からは銀花の子ども時代に戻り、ここに至るまでの長い彼女の物語が始まる。
銀花は小さい頃、絵を描くのが好きな父親と、料理が上手で家事の得意な美しい母親と三人で暮らしていた。母親には盗癖があった。お金がないわけではないのに、さして必要でもないものをお店から万引きしてしまうのだ。父親から「お母さんはかわいそうな人だから優しくしてあげなければいけない」と常日頃言われていた銀花は、そのせいでいつも大変な思いをしていたが、それでも三人で幸せに暮らしていた。
しかし、父方の祖父が亡くなったため、長男である父親が家業の醤油蔵を継ぐことになり、三人は父親の実家へと移り住む。そこには厳格な祖母の多鶴子を始め、複雑な事情を抱えた多鶴子の娘の桜子、昔からこの蔵で働いている杜氏の大原などがいて、ここでの生活には不安しかなかった。
銀花は幼いながらもとてもしっかりした優しく明るい子で、父親を慕う様子や母親を一生懸命庇う場面には心を打たれる。その真っ直ぐな性格は、たくさんの苦しい経験をしながらも尚変わることはなかった。
登場人物それぞれが、それぞれの事情を抱えている。『雪の鉄樹』の感想にも書いたと思うが、人の苦しみは外からではよく見えない。見えないからこそ、大切な人のことをちゃんと見ていなければと思う。
最後が長過ぎて(わたしには)少し興覚めしたきらいはあるが、多くの困難や試練を乗り越えてたからこそ、より強く優しい人となり幸せを掴むという、とても説得力のある話だと思う。大作。
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昭和から平成にかけての醤油蔵の話。
時代は違うものの、江戸を背景にした山本一力の小説と似た印象。
登場人物のしがらみが少しづつ解けていき、最後まで楽しめた。
多津子さんのキップの良さが素敵すぎ。
いつか再読を・・、というほどまでではなかったけど、別の作品もぜひ読んでみたい。