銀花の蔵

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103198321

感想・レビュー・書評

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  • 銀花の蔵
    遠田潤子さん。

    醤油蔵の当主。銀花のお話。

    強くて優しい。
    辛いことがあって落ち込んでも、
    またちゃんと笑う。
    大きな口を開けて笑っていた。
    本当に幸せそうに笑っていた。
    食いしん坊の女の子。

    みんなが、みんな。
    不器用に、でも、
    一生懸命生きていた。

    おもしろかった。

  • はじめましての作家さん。だいぶ複雑な方向から描いた家族の絆の話。ちょっと仕込みネタが多くて、ごちゃごちゃした感もありましたが。他の作品も読んでみたいところ。
    2020/8/29読了

  • 初ノミネートの遠田さん。始めて手に取る作家さんですが、大変楽しく読ませていただきました。

    売れない絵ばかり描き醤油蔵を継ぐ気があまり無い父親、盗み癖があり家族を困らせるが料理に関しては一流シェフ顔負けの腕を持つ母親、厳格な祖母、奔放すぎる祖母の娘(あえて叔母とは書かない)、ある事件を起こしてしまう醤油蔵の親方の息子etc...
    といった、一癖も二癖もある家族や周囲の人間に振り回され続ける女性を主人公に据えた成長小説・大河小説・家族小説をミックスしたような作品です。
    登場人物のキャラクターがなかなか個性的で、個人的には主人公の母親の造詣がとても面白かったです。
    徐々に明らかになる家族の秘密、帯にも書かれているので明かしちゃいますけど、血の繋がりなんかなくたってこんなにも「家族」だっていうテーマ設定が素晴らしいと思いました。
    ストーリー展開もなかなか巧みで、醤油蔵の改築現場で子供の頭蓋骨が見つかるシーンで幕を開けるのですが、それを座敷童の言い伝えに絡めて引っ張っていく展開も面白いです。
    主人公の少女時代に座敷童を目にするシーンでホラー小説なのかと思わせておいて、実はそうではなかったというあたりも、ミステリー小説のような上手さを感じました。
    そして何より、何度も起きる理不尽な出来事にもめげず、けなげに前を向いて生きていこうとする主人公の姿がすごくいいんですよ。
    途中何度も胸が熱くなり、前半を読んだ段階では傑作だと思いました。

    なのですが後半、色々と盛り込みすぎちゃったせいか、肝心なシーンがさらっと流されていたり、やや書き急いだ感があったのがちょっと残念でした。
    タイトルもかなり安易なんじゃないかと。
    総じて荒削りな印象ですが、著者ご本人も本作の出来にはまだまだ満足はされていないようですので、今後の成長と活躍がとっても楽しみです。

  • 「オブリヴィオン」以来の遠田さんの新作は、登場人物がひたすら”強く”て、圧倒されるお話でした。銀花が子供のころからおばあちゃんになるまでの50年以上がギュッと凝縮されて描かれていますが、不思議とスーッと入ってくるところが直木賞候補作の面目躍如といったところでしょうか?
    大阪万博など”昭和”の痕跡もあって、世代的には読みやすかったっです。

  • なんだか壮大な家族の物語だった

  • 第163回直木三十五賞候補作で遠田潤子さんの新刊。絵描きの父親・料理上手の母親と暮らす娘の銀花は、父の実家(醤油蔵)に引っ越すことになり、父の妹・母親と暮らすことになる。しかしその家では、銀花以外の全員が秘密や嘘を心に抱えながら暮らしており、銀花が成長するにるれさまざまな苦難・困難が待ち受ける。およそ5世代に渡るスケールの大きな物語で、ミステリー要素もあり、ふとしたセリフに伏線が混ざっていたりしながら、ゆっくりと回収されていくのは読んでいて気持ちいい。数年後に文庫本が出たらぜひ再読したい。

  • この作家の本は3冊目だが、過去に読んだ2作にあまりいい印象はない。直木賞候補にならなければスルーしていたかもしれない。奈良にある老舗の醤油蔵を舞台に、“家族”という一番身近な他人との関係を何世代にも渡り描いた本作は、本当の意味での悪人は1人も出てこないにも関わらずひどく重く暗い空気が全編を覆っていて、読み進めるのがつらかった。誰もが小さな幸せを願っているのにうまくいかず、特にそれは主人公である銀花に顕著だ。だが、すべてが明らかになり、お互いを寛容することで関係は変わる。読み応えのある作品だった。

  • 中盤から明らかになる事実に驚きながら読み進めた。感動した。

  • 1968年、画家になりたかったが仕方なく実家の醤油蔵を継ぐ父について行った娘銀花は10歳。怖い祖母多鶴子、父とは大きく歳が離れた父の美しい妹は桜子。そして母には万引き癖。蔵には伝説があって、正式な後継者には座敷童が見えると言う。見えたのは父ではなく、銀花で・・・

    面白かった。過去の遠田作品には全然似てない。(あまり読んだことはなく知ってるのは映像化されたものばかりだけど)宮尾登美子っぼい気がする。

    一人の女性の半生を描いた年代記のような小説で、うまくいかない商売やいじめ、結婚など様々な困難や喜びがそこにはあった。

  • 主人公・銀花は奈良で醤油蔵を営んでいる。蔵の工事、そこから子どもの遺体が出てきたところから物語が始まる。
    絵描きの父、美人で料理上手な母と三人、大阪で暮らしていた銀花は当然、亡くなった祖父に代わり醤油蔵を継ぐことになった父の実家の奈良に引っ越すことになる。厳しい祖母、一歳違いの叔母と五人で暮らすことになるのだが、いろんな問題が起きる。母で苦労しているのでまだ10歳の銀花なのに気遣いは大人以上、とても10歳とは思えない。蔵を継いだものの絵描きへの夢が捨てられない父、窃盗を繰り返し銀花を苦しめる母、わがままな叔母、家族に振り回される銀花。当主にしか見えないという座敷わらしを見たことで出生の秘密を知ることになったり、次々いろんな事が起きる銀花の人生、読んでいて辛くなった。家族とは何か、辛い人生も笑顔で前に進もうとする前向きな姿に心を打たれた。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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