八月の銀の雪

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103362135

感想・レビュー・書評

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  • 地球の内核、クジラ、伝書鳩、珪藻、風船爆弾と興味深いモチーフの数々。そこに、静かな温度感の人間模様が組みわ合わる。その両面から引き込まれてしまいます。

  • 深さ2900kmのコア。
    水深2000mのマッコウクジラ。
    1000km以上飛ぶハト。
    1/2000mmの網目のメガネケイソウ。
    安全になるまで10万年かかる使用済み核燃料。

    普通の日常から、ふっとスケールの違った世界へと飛ぶ。
    『月まで三キロ』同様、独特の世界観の短編集。

  • 社会の行き詰まりを感じて悲観的になっている主人公。
    疎遠だったのにビジネス目的ですり寄ってきた知り合い(友達では無い)と出会いながら物語が進んでいきます。

    個人的には「鬱陶しい」の一言。

    コンビニバイトのグエンさんとのやりとりでは地質学的な話が出てきます。専門的な話もちらほら。
    教科書か図鑑で読んだような話、地球の真ん中にドロドロに溶けたモノがあるという。
    実際に住んでいる地球の事は謎だらけ。これだけ文明が進んでいると思うのに海底掘り下げてもたかだか12キロとは驚きですね。

    タイトルにある「八月の銀の雪」は地球のコアな部分と人の秘めたる気持ちになぞらえているのかなと思いました。
    伝書鳩の話も、それまでの人生、これからの人の生き方など個人的には響きましたね。

    短編なので繋がりはないように感じましたが、それぞれ読み進めると地球の中心(コア)というものからはじまり、人の信念、他の動物の本能?軸?的なもの、皮肉にも原発事故になぞらえ「核」に繋げて人の生き方を投げかけていたように私は思えました。


    風船爆弾の慰霊碑、そんなに遠くでは無い所なので一度行ってみたいと思いました。

  • 「月まで三キロ」に続いて伊与原さんの作品二作目でした。
    伊予原さんの作品は、いろいろな知識を知ることができ毎回、ほ〜、へぇ〜と感心したり検索したりさながら読んでいます。毎回思うけど、理学部志望の息子にも是非読んでもらいたい...。

    短編集でどのお話も素敵でした。
    特によかったのが...
    ○八月の銀の雪
    ○アルノーと檸檬
    ○玻璃を拾う

    八月の銀の雪のタイトルの意味にビックリ...なるほど〜。アルノーと檸檬は、ちょっとウルウルきちゃいました。玻璃を拾うもステキだったな...珪藻美術館も見てみたいです。

    他の二作品もよかったです。伊与原さんの作品、もっともっと読んでみたいです。

  • ブクログでの記念すべき100冊目のレビューになりました。


    5つの短編集。自然科学と人間を絡めたお話です。
    『地震学、海の哺乳類、伝書鳩、珪藻、偏西風』
    自然に目を向けることで、自分がちっぽけな世界を生きていたなと感じました。

    「自然は愛おしい」そんな思いになりました。
    自然を肌で感じて、今自分が生きているこの世界をもっと味わいたいですね。
    コロナが空けたら、世界にも飛び立ちたいな〜


    伊予原新さんの作品は初めて読みました。他の作品も触れてみたくなるくらいとても面白かったです。
    何か、オススメがあったら教えて下さい。



    、、、ちなみに、一番好きな話は、「八月の銀の雪」です。
    みなさんはどの話が一番好きでしたか?

    • 本と声とノートさん
      こちらこそ、フォローありがとございます^ ^

      はい!この方の作品は初めて読んだのですが、とても面白かったです。
      是非読んでみてください!
      こちらこそ、フォローありがとございます^ ^

      はい!この方の作品は初めて読んだのですが、とても面白かったです。
      是非読んでみてください!
      2021/06/10
    • ありが亭めんべいさん
      予約しましたが 結構な待ち でした!(笑)
      予約しましたが 結構な待ち でした!(笑)
      2021/06/11
    • 本と声とノートさん
      結構人気なんですね!!
      早く届くと良いですね
      結構人気なんですね!!
      早く届くと良いですね
      2021/06/13
  • 就活や子育てなど人生に行き詰った人達が"科学"の知見に触れ一歩踏み出す物語。
    1.8月の銀の雪→地球内核表層に鉄の結晶が雪のように降り積もる
    2.海へ還る日→鯨の歌
    3.アルノーとレモン→伝書鳩
    4.玻璃を拾う→珪藻
    5.十万年の西風→風船爆弾

  • 五人の傷ついた心を抱えた人々が、地球や自然、生き物の不思議にふれ、自分の中にある生きる力を見つけなおす、五つの物語。


    どれも、とても良かった。
    ただただ、何もかもが思うようにならないまま、あわただしくすぎてゆく日々。小さな世界の中でもがく、さらに小さな自分。
    そんな主人公たちが出会ったのは、自然の不思議や美しさ、それに真摯に向き合ってきた人々。
    その人たちも、やはりままならない日々を、自然の力に励まされて生きてきた人たちだからこそ、静かでやさしい心を持っているのだろう。


    中でも、『海へ還る日』が良かった。
    何もかもが「人並み以下」の自分の子育てに悩むシングルマザーが、ふとしたきっかけで博物館に勤める女性と出会い、幼い娘の中に明るい未来の輝きを見つける物語。

    “わたしは、わたしたちは、何も知らない。
    クジラは、わたしたちには思いもよらないような、海の中で一人静かに考え続けているのだ。”


    それにしても、このどぎつい色の帯はどうかしている。淡い雪景色に淡い光、銀の雪の結晶が散る表紙が台無し…

  • 理系は苦手な分野のはずなのに、著者の柔らかく包み込むような表現力がクッションとなり一気に読み進めてしまいました。思い通りにいかない就活に悩む大学生とベトナム人コンビニ定員を描いた表題作は、どこへ着地するのだろうと思っていたけれど、思いもよらぬ壮大な話へと繋がっていて驚いた。どの作品も何でもない小さな日常を切り取ったエピソードから、登場人物を掘り下げていき最後には静かな感動が広がる。はるか昔から連綿と続く生物や大自然の神秘は、人間関係に疲れ果てている現代人の心をそっと癒してくれる。

  • 優しく温かい話です。
    内定を一つも貰えず詐欺もどきに手を出しかけた就活中の男子学生が、偶然知り合った優秀なベトナム人女子留学生との交流の中で前向きに変わって行く姿を描く表題作など5つの短編。
    何といっても伊与原さんの特長は、各編の中にとても興味深い科学技術の話が入っていうことです。地球内核の表面にある銀色の鉄の結晶の森とそこに降り積もる鉄の結晶の雪の幻想的風景。博物館の女性スタッフが割烹着姿で描く鯨のスケッチと鯨たちの歌(国立科学博物館の「世界の鯨」ポスター)。地磁気を見、一度飛べば陸標を記憶し、臭覚や音の地図まで使って帰巣する伝書鳩の能力。1㎜にも満たぬ珪藻のガラスの殻を顕微鏡で並べて作る珪藻アートの美しさ(奥 修[著, 写真]『珪藻美術館』)。第2次大戦中に作られた風船爆弾の元になった気象観測の話など。東大大学院を卒業し地球惑星科学の博士である伊与原新さん、そんな話をとても判り易く、しかも本線である「優しく温かい話」の邪魔をすることなく物語の中に織り込んで行きます。
    ただただ「優しく温かい話」を書く人は沢山いますが、理系出身の私にとっては(そして多分そうでない人にとっても)良い作家さんだと思います。

  • 科学にまつわる短編集。
    人の温かさというか優しさが感じられる。
    好きなのは表題と海へ還る日

    自分の人生について考える時生命や自然の知識に感化される。

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著者プロフィール

1972年、大阪府生まれ。神戸大学理学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科で地球惑星科学を専攻し、博士課程修了。2010年、『お台場アイランドベイビー』で第30回横溝正史ミステリ大賞を受賞し、デビュー。19年、『月まで三キロ』で第38回新田次郎文学賞を受賞。20年刊の『八月の銀の雪』が第164回直木三十五賞候補、第34回山本周五郎賞候補となり、2021年本屋大賞で6位に入賞する。近著に『オオルリ流星群』がある。

「2023年 『東大に名探偵はいない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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