- Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
- / ISBN・EAN: 9784103534112
感想・レビュー・書評
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阪神淡路大震災の後の生活を描いた短編集。蜜蜂パイが印象的だった。
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おもしろい
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<閲覧スタッフより>
大手前大学 交流文化研究所主催 文芸講演会
村上春樹と『阪神間文化』の周辺-私がめぐりあった作家たち-
講師:ノンフィクション作家 小玉武 先生
文芸講演会記念 特集展示本
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所在記号:913.6||ムハ
資料番号:10139326
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UFOが釧路に降りる
「小村さんの中身が、あの箱の中に入っていたからよ。小村さんはそのことを知らずに、ここまで運んできて、自分の手で佐々木さんに渡しちゃったのよ。だからもう小村さんの中身は戻ってこない」
アイロンのある風景
「気色の悪い関西弁使うな。イバラギの人間にけったいな関西弁使われたくないんや。お前らは農閑期にむしろ旗たてて暴走族やとったらええんや」
町に落ち着いてほどなく啓介と知り合った。両親は水戸市内で老舗の菓子屋を経営していたので、いざとなれば家業を継ぐことはできたが、本人は菓子屋の主人におさまるつもりはまったくなかった。いつまでも仲間とダットサン・トラックを乗り回し、サーフィンをやりながらアマチュア・バンドでギターを弾いていられればいいと考えていたが、誰がどう考えてもそんな気楽な生活が永久に続くわけはない。
神の子どもたちはみな踊る
母親と二人で暮らしている阿佐ヶ谷の賃貸マンションを出て、中央線で四谷まで行き、そこで丸ノ内線に乗り換え、霞ヶ関まで行って日比谷線に再び乗り換え、神保町駅で降りた。たよりない足で多くの階段を上り、多くの階段を下りた。神保町の駅の近くに彼の勤めている出版社はあった。海外旅行関係の本を専門とする小さな出版社だった。
タイランド
三年前にやっと離婚の調停が成立したのだが、その数カ月後に、病院の駐車場に停められていた彼女のホンダアコードの窓ガラスとヘッドライトが誰かにたたき割られ、ボンネットに白ペンキで「JAP CAR」と書かれるという事件が起きた。
「ドクター、ここはデトロイトだ。今度はフォード・トーラスを買うことですね」
かえるくん、東京を救う
今ここで殺されたところで、誰も困らない。というか、片桐自身、特に困りもしない。
「私はとても平凡な人間です。いや、平凡以下です。頭もはげかけているし、おなかも出ているし、先月40歳になりました。偏平足で、健康診断では糖尿病の傾向もあると言われました。この前女と寝たのは三カ月も前です。それもプロが相手です。借金の取り立てに関しては部内でも少しは認められていますが、だからといって誰にも尊敬されない。職場でも私生活でも、私のことを好いてくれる人間は一人もいません。口べただし、人見知りもするので、友達を作ることもできません。運動神経はゼロで、音痴で、ちびで、包茎で、近眼です。乱視だって入ってます。ひどい人生です。ただ寝て起きて飯を食って糞をしているだけです。何のために生きているのか、その理由も分からない。そんな人間がどうして東京を救わなくてはならないのでしょう?」
蜂蜜パイ
しかしなぜか高槻は、最初のクラスで淳平を一目見たときから、こいつを友人にしようと決めたようだった。彼は淳平に声をかけて、肩を軽く叩き、よかったら飯でも食いに行こうよと誘った。そして二人はその日のうちに、心を許しあえるほどの親友になっていた。一口でいえば、うまがあったのだ。
しかし淳平にも高槻の気持ちは分かった。小夜子が母親になってしまったのだ。それは淳平にとっても衝撃的な事実だった。人生の歯車がかちりという乾いた音を立ててひとつ前に進み、もう元には戻らないことが確認されたのだ。それについてどのような感慨を抱けばいいのか、淳平にはまだよくわからなかった。
大学に入った当時のことを彼は思い出した。クラスで最初に顔を合わせたときの高槻の声が耳元で聞こえた。「なお、一緒に飯を食いに行こうよ」、温かい声がそう言った。
「どうして僕を食事に誘ったの?」と淳平はそのとき質問した。高槻は微笑み、自分のこめかみを人差し指の先で自信たっぷりにつついた。「俺にはいつでもどこでも、正しい友達を見つける才能が備わっているんだよ」 -
かえるくんが彼女に「結婚して」って言われるところがとても好き。「あなたと結婚したいのよ、かえるくん。あなたと一緒に暮らして、あなたの子どもを産みたいの。あなたと同じくらい大きなおちんちんを持った男の子を。」っていう彼女に、「僕は神のこどもなのでそれは出来ない」と返したかえるくん。私だったら"仕方のないことね"って思い出にできちゃうほど美しくは生きてないので食い下がるけど、文学の世界にはこういうやりきれない出来事が光るよね。
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踊る
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NHK のラジオ講座「英語で読む村上春樹(世界の中の日本文学)」で現在の題材になっている「かえるくん、東京を救う」はこの短編集に収録されているものだ。そこで他の村上春樹の短編も読んでみることにした。
この短編集「神の子どもたちはみな踊る」には「かえるくん、東京を救う」の他5作品の短編が収録されている。私自身あまり短編に触れることがなかったので、味わい方が今ひとつピンと来ないが、サラリと読めたように思う。文学作品というより、もっとカジュアルなエッセイなどのように思えた。性的描写が割と頻繁に出てくることからも軽さというか現代性を感じさせるのかもしれない。最近のノーベル文学賞候補の作品はこういうものなのか。ちょっと軽過ぎるのではないかと感じられるところさえあった。しかし物語の展開の意外性などは、さすがは村上春樹と思わせ、楽しむことができた。
今後は「1Q84」や「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」などの長編も読んでみようと思う。先ずは村上春樹の代表作といえる「ノルウェイの森」から入ってみたい。 -
不思議なエピソードが集まった短編集だった。
長編小説と違い、気軽に読めるが、世界観にのめり込めない分、物足りない感じがした。