この世の春 下

著者 :
  • 新潮社
3.85
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784103750147

作品紹介・あらすじ

小説史に類を見ない、息を呑む大仕掛け。そこまでやるか、ミヤベ魔術! それは亡者たちの声? それとも心の扉が軋む音? 正体不明の悪意が怪しい囁きと化して、かけがえのない人々を蝕み始めていた。目鼻を持たぬ仮面に怯え続ける青年は、恐怖の果てにひとりの少年をつくった。悪が幾重にも憑依した一族の救世主に、この少年はなりうるのか――。21世紀最強のサイコ&ミステリー、ここに降臨!

感想・レビュー・書評

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  • 何だったのか?

    徳政を敷いた父を死なせ、その子重輿に主君押込(しゅくんおしこめ)をもたらしたものは。

    秘事、神隠し、陰廻、狭間、面・・・。

    ???・・・

    読み進めていくうちに、事情が分かって、また、妙なものがクローズアップされてきて・・・ゆっくりゆっくり、本作の全体像が頭の中に形成されていく。

    30年ぶりの宮部みゆきワールド、10日間かけて楽しみました。

    「押込」という慣習も初めて知ったし、主君に対する「忠義」、「献身」の価値観もこんな感じだったんだろうなと想像できました。

  • 宮部みゆきさんの時代物。上巻はゆっくり。下巻に入ってからのスピード感が宮部さんらしくて、惹き込まれる。面白かったです。

  • 相変わらず読みやすい。初めて「レベル7」を読んだときのことを思い出しながら、中断して再開するたびに楽しく読み進めた。
    恋愛要素のようなものが織り込まれてはいるが、最終章でその決着後、男三人が真相を語らう場面を見て、こちらの方が筆が乗っているように感じたのは気のせいだろうか。それにしても白田医師の現代精神科医ばりの開明さには参った。好き。

    惜しむらくは自分の時代劇経験の浅さ。そのせいで、「犯人」の動機であった狭間と陰廻の統合がどうしてあそこまでの憎悪をたぎらせることになったのか、その点がつかめずじまいだった。

  • 徳川六代将軍の頃。
    北見藩では、青年藩主・重興が、突然隠居を強いられ、主君押込にあい、座敷牢に閉じ込められた。

    時に、重興は、違う人格になると言う。

    元江戸家老・石部織部
    各務多紀
    多紀の従兄弟田島半十郎
    らが、その謎を解き明かすために、奔走するが、
    16年前の凶事の封印は解けるのか?

    最終章まで読んで、題名の意味がわかった。

    面白くて、ページを捲る手が止まらなかった。

  • 2023.10.19 読了


    ほとんど 何書いてもネタバレになりそうなので
    書けませんが、
    とりあえず ハッピーエンドで 良かった!

  • 下野北見藩の北見重興は、主君押し込みにあい隠居させられる。各務多紀は、とある事情から重興に仕えることになる。主君押し込みの背景にあるものとは。

    上下巻2冊もテンポよく謎が解き明かされていき、どんどん読み進められた。

    とある事情から、人が変わったような態度になる重興。話を聞き関係を深めていくことで、解決していこうとする五香院の人々の描写がよい。それぞれの心情が伝わってくる。

    好きなのは、次のように会話の間などにサッと情景を入れるところだ。美しい情景描写が、緊張感や静粛さを表している。

    「大殿は、我らが名君であらせられた」
    城南の一番筋にある石野家の屋敷の奥、坪庭に面した一間。雪見障子には秋の陽がさしかけているが、物音ひとつしない。

    言ってしまえば現代の問題を時代を変えて取り上げているのだが、時代小説としてのおもしろさの中で書き込まれていくのはどうやはりすごいと思う。

  • 読み応えたっぷり、続きが気になって気になって、一気読みした。

    現代にも通ずる多重人格、幼児虐待、殺人を何とも思わないサイコパス。
    設定を江戸時代に置くことでより謎や不思議が深まり、久しぶりの宮部ワールドを堪能した。
    主従関係も温かく、イヤミスじゃないところがすごくいい。

    ボロボロに傷ついた繁興が医師と付き添う人々によって少しずつ自分を取り戻し、明るくなっていく様子は清々しい。
    ハッピーエンドなのも良かった。

  • 面白い、読みやすい、美しい、温かい、と言ったところか。残酷なストーリーではあるけれど、それだけにならないのは全ての人が誰かを常に想っているから。
    最後の最後、由衣と多紀のシーンでは涙を拭いながら読んだほど、ストーリーに入り込んでいた。
    素晴らしい。
    五香苑チーム解散は惜しいけど、みんなに幸あれ。

  • (借.新宿区立図書館)
    宮部みゆきの時代小説であまり地方の藩を舞台にしたものはなかったようだが、考えてみれば『三島屋』シリーズでいくつかの短篇があった。そういう意味では三島屋シリーズの系統の大作化したものといってもいいのだろう。多重人格など精神的な問題も描かれている。最終的に精神的なものなどうまく着地しているのだが、肝心の「狭間」を使った”ラスボス”はどうなったのだろう?

  • これが現代だと、心を病んだ御曹司と、心優しき部下の娘が最後くっついちゃって「はいはい、美男美女~<(`^´)>」なのに、時代が違うだけで、忍びは出てくる、登場人物の所作がとにかく美しい、健気な子どもしかいない、忠義が社畜に堕ちない、台詞に品がある…
    現代人の無い物ねだりか、宮部さんの表現力か。
    上巻でも思ったのだけど、下巻の帯にも「リベンジ」とか書くし。帯作った人センスないわ。世界観壊れる。上巻の帯の「ヒーローの誕生」にも違和感。誰を指してヒーロー?
    時代小説あんまり、な人(わたしもです)にもお薦め。量ありますが、ぎっしり詰まっているのではなく、丁寧に描かれての量なので、するするいけちゃいますよ。

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著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

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