キミトピア

著者 :
  • 新潮社
3.92
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本棚登録 : 501
感想 : 64
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104580064

感想・レビュー・書評

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  • キミトピア、なんでこんな題名なのかすべてのお話を読んでなんとなく、分かった。あなたといるこの世界は、心地が良い。

  • 七つの短編集。
    やさしナリン……『可哀想』に弱い人
    添木添太郎……いないいないと神様?
    すっとこどっこいしょ。……青春。将来。
    ンポ先輩……キチ女?え、怪談的な?
    あまりぼっち……僕僕タイムスリップ
    真夜中のブラブラ蜂……子育ても一段落してブラブラしたい主婦
    美味しいシャワーヘッド……ちょっとよくわかんないけどトシちゃんのとこめっちゃ笑った

    最近は読みやすいのを立て続けに読ませてもらってるなあと思う。
    舞城の、女性主人公の話は読みやすいので好きだ。だから、この七つの短編の中でもやさしナリンが一番好きだ。
    可哀想に弱い、という発想がおもしろい。突飛に感じるけれど、理解できる感情だし、はっとさせられた。

    作中に、やたらとハートマークが乱舞しているが、これは『w』に置き換えたらわかる。なぜハートマークだったのか……。
    つい吹き出して笑ってしまった箇所が多かったのはすっとこどっこいしょ。ニンニンて。
    ブラブラは最後にこんな展開になると思わず驚いた。
    美味しいシャワーヘッドに放浪息子と町でうわさの天狗の子が出てきたのがすこし嬉しかった。

    夫婦の話が多かった気がするのだが、舞城王太郎最近結婚か離婚かしたのだろうか、と邪推。櫛子の書いてる小説が明らかに舞城王太郎なのでつい安直に考えてしまう。舞城王太郎は主婦なんじゃないか疑惑。

  • 間違いのほうが正しい答えよりも正しい場合があって、これがそうなのである。
    (冒頭より)

    やさしナリン
    添木添太郎
    すっとこどっこいしょ
    ンポ先輩
    あまりぼっち
    真夜中のブラブラ蜂
    美味しいシャワーヘッド


    全てのお話で、誰かが何かしら混乱してて、それに共感したり、笑ってしまったり、なるほど〜と思わされたり。
    始めの4篇が好きでした。
    すっとこどっこいしょの「ニンニン」からの「くせ者ーっ」の流れとか大爆笑です。いやぁ、ますぅヤバイ。ヤバすぎる。


    P116
    神がごめんとひと言謝ってきたなら許さないでもないという気持ちで生きている。

    P260より
    言葉は間違える。
    感情も間違える。
    心も間違える。
    私はこれを憶えておかなくてはならない。

  • 短編集。初、舞城王太郎さん。
    twitterでフォローしている方が呟いていたのが面白そうで読んでみる。

    (ややネタバレ含みます)

    【やさしナリン】
     うわぁ、これすごい!まず、「やさしナリン」という言葉のセンスがすごい。
    あるあるというか、いるいるというか、むしろ自分やさしナリン過多じゃね?というか。
    人の「かわいそう」に耐えられず、妹夫婦(この妹も緑里と同じタイプ)の問題に関わってしまう夫の緑里を見ながら、妻の櫛子が独白していく話。
    やさしい=善意=正義じゃねーだろっていうところをズバズバ、でも淡々と描いてる。櫛子さんと緑里の関係をどうおさめるのかな、と思ったら、最後に関係ない第三者の犯罪を強引に突っ込んできて、緑里がやっと自分のやさしナリンがどういうものか気づくんだけど・・・。
    東日本大震災のあと、会社勤めの友人に聞いたんだけど、就業中、突然立ち上がって「(被災者のために)何かやらなきゃダメだよ!」って言い出した人がいたらしい。自分が無事にいつも通りの生活をしていることで、罪悪感を感じるような気持ちは分からないでもないけれど、それは何かの解決にはならない。
    自分も含めこういう感情のやりとり、あるなあと生々しさを感じるんだけど、
    かといってこの短編を読んで何か解決したり啓示を受けたりということもない、なんだか居心地の悪さを感じる。
    同時に、なんだろうこのセンス?!という感嘆も。舞城さんてこういう作風なのかな?

    【添木添太郎】
    うーん、なんていうかシュール?
    メインは新一と槻子と緋沙子の三角関係(や、小学生なのでこの言い方は誤解を招くけど)と、それぞれの意志の確立、なのかな?
    槻子の特別な体質を巡って保護者、被保護者という共依存関係に持っていくのかと思いきや、登場人物たちはみんな、自己の精神の独立を選択する。
    そんな小学生いねーよ!というか、大人になったって難しいよ!と思いながら、ここでもうまく小説世界に入り込めない違和感を感じる。

    【すっとこどっこいしょ。】
    主人公の梨木の、中学二年生から大学三年くらいまでを、梨木本人の一人称で語っていく。
    ありそうでなさそうな日常生活を語っていきながら、クライマックスで梨木が大けがをし、そこから結局は特に何も解決されない。それでも梨木は自分の気持ちに折り合いをつけているんだけど…。
    読者としてはなんていうか、すごい突き放され感を感じました。
    独白の部分、分かるなあという個所もここかしこにあって、面白いんだけれど、共感できる小説を読んだ時のカタルシスがない。
    ひたすら人の人生をなぞって終わったような?
    登場人物が皆フルネームで、でも小説の筋にはそんなに関わってこなかったり。現実の世界でもすぐそこを歩いているおじさんにだって、名前があって人生があるんだけど、私の人生には全く関係ないわけで。
    小説に書かれている中の、どの情報が大事なのか、よくわからなくなって、混乱してくる。
    誰かが、カメラをずっと回しながら日常生活を送っていて、ただひたすらそれを再生してみているような。

    途中で、「小説を読む」ってなんだっけ?という気にすらなって来る。
    推理小説なら事件が起きてそれが解決されるカタルシス、
    恋愛小説なら主人公に共感したり、文章の美しさを味わったり。
    そういう読む姿勢が全く通じなくて、でも文章が下手とかつまらないとかいうわけではなくて。何となく、感情の生々しさだけを感じて、読むのが辛くなってきた。

    図書館で借りた本なので、返却期限もあり、以上3編を読んだところでギブアップしました。読んでいない短編は以下4編。
    ・ンポ先輩
    ・あまりぼっち
    ・真夜中のブラブラ蜂
    ・美味しいシャワーヘッド

    ※※※追記※※※
    【ンポ先輩】
    (ネットで返却延長できたので、続きを読む)
    この話、かなり好き。なんだろう、人に対してもやっとしていた部分にそうそう!という共感もあるんだけれど、自分に対しても見たくないところに向き合わなきゃいけない感じ。それが読んでいて辛いのかもしれない。

  • 読書中。”藪の中”的なモチーフを感じる。著者の実力からいえば、傑出したものはないものの、日常の不可解と言葉の不可解がベースになっていると思った。(13.0626)

  • 6月10日読了

  • 改めて舞城好きだーと思った。【やさしナリン】久々の舞城だったせいか主人公が鼻についてしまって内容に集中できなかったので再読したい【添木添太郎】黒い馬の夢の恐怖をきっと忘れてはいけない。そしてその恐怖に負けないことがちゃんとした大人になるということ【すっとこどっこいしょ。】最初はいい感じの青春かなーと思ったけど終盤何が何やらで笑うしかなかった。気楽に読める【ンポ先輩】やっぱ舞城天才か…途中からぶっ飛んだ気がしなくもないけどそれも私の穴あけのせいか(違うか?)間違ってても穴をまた空ければいい話。【あまりぼっち】うーんよくわからんSF。理解力が足りなくて残念…理解できたら超面白そうなのに。【真夜中のブラブラ蜂】何これ優しすぎ。挨拶が素敵とか煙か土かryの作者と同一人物とは思えん…色々さておき夫がかわいそうかも。【美味しいシャワーヘッド】ふんわりとしか理解できなかった。けど何度も何度も読み返したい作品。

  • 読み終わるのもったいなくて、しばらく読み進めるのやめちゃう時がある。
    そんな小説。

    それぞれの短編になんかしら感じるものがある。
    うまく言葉にできないような、気持ちだったり状況だったり。
    表現できないんだけれど、残しておきたかったり大事だと思いたかったり。

    だから、そばに置いておきたいんだ。
    そんな小説。

  • 全7編を収録。そのうち、好きだと思ったお話は、まず「やさしナリン」!可哀想な人に弱く、自分を傷付け、身近な人に迷惑をかけてでも、冷静な判断ができなくなり、可哀想な人に親身になってしまう兄妹。優しさっていうのは決して間違いではないからこそ、優しさの振る舞い方でとんでもない醜悪な展開となってしまう。そして「ンポ先輩」!これは全体を理解できているわけではないけれど、空気読んでよ、という圧力に、私は空気の奴隷じゃない・・っていう主人公の主張に痺れた!!最後の「真夜中のブラブラ蜂」もカッコ良くて興奮した。子供を大学まで育て上げた若い奥さんが、「散歩」を極める話。この3点に共通するのは、主人公がある主張について討論するシーンがあること。「やさしナリン」では、ヒステリックになってしまった旦那と、「ンポ先輩」では、空気を読めと詰め寄ってきた友人と、「真夜中のブラブラ蜂」では、散歩することを楽しんでいる主人公に対して、暇ならもう1人子供を作ろうと提案してきた旦那と・・・。意見が合わなくなる、論点が少しずつズレテていくときの、イライラする感じ。悲しくなって、諦めちゃう感じ・・・。面白いな。

  • ズバズバ自分に当てはまるんでごめん!って思った。この人の短編読んだのはこれが初めてだったけどはまるわー。

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著者プロフィール

1973年福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』など著書多数。2012年『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳、短編映画『BREAK』や短編アニメ『龍の歯医者』『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などを手掛けている。

「2015年 『深夜百太郎 入口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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