キミトピア

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 501
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784104580064

作品紹介・あらすじ

夫の「優しさ」を耐えられない私(「やさしナリン」)、進路とBITCHで悩む俺(「すっとこどっこいしょ」。)、卑猥な渾名に抗う私(「ンポ先輩」)、"作日の僕"と対峙する僕-(「あまりぼっち」)。出会いと別離のディストピアで個を貫こうともがく七人の「私」たちが真実のYOUTOPIAを求めて歩く小説集。第148回芥川賞候補作「美味しいシャワーヘッド」収録。

感想・レビュー・書評

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  • キミトピア、というタイトルはなんかぞくっとくるものがあってどうかと思いますが。7編の中・長編入りの作品集。
    初めて舞城王太郎読んだの阿修羅ガールが文庫化した直後で阿修羅ガールで初めて読んだんだけど、舞城王太郎は女の人のような気がする。どうなんでしょ。

    舞城作品は比較的メタファーががっつりしているんだけど、結構後半までそれがうまいこと隠されたりしていて、それが解けたときの快感が強い。
    主題もはっきりしている。
    「やさしナリン」ではかわいそうな人を見るとなんとかしなきゃ!というスイッチが入って冷静なときにはできる判断がどうにもうまくいかずに暴走してしまう兄妹を兄の嫁視点で描いている。
    そのかわいそうな人をみたときに出てくるドーパミンみたいのに主人公は「やさしナリン」という名前をつけてわかりやすくする。言葉ってほんとうにすごくて、そうなると読んでる側(私)もやさしナリンに思い当たるフシが続々と湧き出てきたりする。

    「やさしナリン」だけじゃないけど、この作品集は言葉の繊細さといものがひとつの大きなテーマだったのかな、とも思う。
    「美味しいシャワーヘッド」は、「好き好き~」の柿生がやったことと同じようなことを樽歩がやり、もっと大きな枠で主人公が読者に対してやる。
    「あまりぼっち」読んでちょっと働かねばと思った。ヴェイユを読んでても思ったことだけど。

  • 短篇というより中篇といったボリュームの作品を7つ所収。

    疾走感のある饒舌な文体は、綿矢りさを男にしたかんじか。

    細部はリアルなのに、いつのまにかファンタジーに飛んでってる浮遊感がよかった。登場人物が自分の気持ちをとことん突き詰めて相手に説明しようとするところは、ありえない気がしたけど、面白いからまあ許せた。

    高校生の男の子が主人公の『すっとこどっこいしょ』が個人的にはベスト。
    とてもチャーミングで、こういう系では朝井リョウを超えてる気も。
    あと『真夜中のブラブラ蜂』の主人公の中年女性の、ひとりでどこかに走っていきたくなる気持ちなんかも、わかるなあ。

    著者はとても頭のいい人なんだろう。頭のいい人独特の余裕っぽさと世間とのズレ的孤独と、文学的才能(陳腐な言葉だが)がいいかんじに混ざり合ってた。

  • あらゆる矛盾の溢れた世界で、
    言葉を信じて自分の個を貫くことで世界と戦う。
    気持ちと感情で動かされた言葉でできたこの世界。
    しかし、言葉も感情も心も間違える。
    だからこの世界は矛盾に満ちている。
    そして言葉を尽くしても心が動かさないものは報われない。
    絶望であり、慰めになる世界。
    間違いのほうが正しい答より正しい場合もある。
    ユートピアではなくキミトピア。

  • 全体的に温い優しさがただよう短編集。「やさしナリン」「あまりぼっち」は漠然と思っていたことを形にされた感じで、心地よかった。

  • 短編集

  • もうなんか、どうしていいかわかんないくらいにおもしろかった。
    どの作品もほんとうに凄みがあって、はっとすることだらけだった。
    ずっと読んでいたい作品集だった。

  • 分厚さなんてなんのその。「考えることに馴れて考えてないように感じられても、それは考え終わってるだけで、そこでもう考えることがなくなった訳じゃない。次へ行くのだ。次へ。」がすごく心に残った。

  • 短編集。優しすぎる夫とその妹が引き起こすあれこれを描いた「やさしナリン」と日々のあれこれを描いた「おいしいシャワーヘッド」が良かった。

  • 今回は背中に毛がはえた人は出てこなかった。

  • 芥川賞候補作wを含む7編の短編からなる今作。
    書き下ろしも3編含まれなかなか読み応えある
    ボリュームですが、あまり疲れる事なく、
    かといってサラリと読む...でもない割と
    充実した読書時間でした。単純に...面白いんですよね。

    人同士の繋がりや関係の中での自分...。人によっては
    甘くもあり厳しくもあるんでしょうが、自分というものと
    他人との関係を書かれた内容が多かった...気がします。
    家族、友人との関係の中で口論めいたやりとりが
    妙に印象に残り、自分のイヤな部分と各主人公の
    自分のこそが正論という主張が重なり...凹んでしまう。
    でも...言葉に出来ないんですが...「でも」と
    思ってしまう自分がさらにいる訳で...。いつまでも
    こうやってもがいていく事しか方法がないんだなぁ...と。

    単純にどのストーリーも何かしらの爪痕を残す
    面白い作品で、スピード感やカオス感はないですが
    温度と奥行きを感じる...アナログちっくな作品集
    というイメージです。

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著者プロフィール

1973年福井県生まれ。2001年『煙か土か食い物』でメフィスト賞を受賞しデビュー。2003年『阿修羅ガール』で第16回三島由紀夫賞を受賞。『熊の場所』『九十九十九』『好き好き大好き超愛してる。』『ディスコ探偵水曜日』『短篇五芒星』『キミトピア』『淵の王』など著書多数。2012年『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦著)の25周年に際して『JORGE JOESTAR』を刊行。近年は小説に留まらず、『バイオーグ・トリニティ』(漫画・大暮維人)の原作、トム・ジョーンズ『コールド・スナップ』の翻訳、短編映画『BREAK』や短編アニメ『龍の歯医者』『ハンマーヘッド』の原案、脚本、監督などを手掛けている。

「2015年 『深夜百太郎 入口』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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