フィリピンパブ嬢の社会学 (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106107047

感想・レビュー・書評

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  • 筆者の処女作?なのだから、文体に拙いところはあるけれど、それを気にさせないほどに内容は面白く興味深かった。
    赤裸々に経験したことを語っていて、一気に読めた。
    フィリピン人の金をせびりまくるのには、終わりはあるのだろうか。。フィリピン人の人柄の良さと相反する部分や、そうなってしまった歴史・経済背景にとても興味を持った。

  • ネットでたまたま見かけて購入。

    ネットの感想でも必ず社会学というタイトルにツッコミが入っているが、実際、筆者の身を張った潜入ルポ的な内容で、
    リアリティ満載で下手な小説よりめちゃくちゃ面白い。
    新書なのでサクッと一気に読み切ってしまった。

    お金のない国際政治学専攻の大学院生が、
    調査として出向いた名古屋のフィリピンパブで、
    調査対象のフィリピン人ホステス嬢に恋をし、苦難を経ながら結婚までたどり着くという話。

    身内となった著者の身を張った取材によって、
    ベールに包まれていた日本に住む
    フィリピンパブ女性の生活実態や本音が明かされていくのが興味深い。

    もちろん彼女たちの生活は中々大変で、
    偽装結婚をしてまで来日しても数年間は人身売買ヤクザに搾取されて、
    月収6万円で家も共同生活。休みも殆どない。

    ただ知らなかったのが、
    3年もしてヤクザとの関わりを絶ちフリーのホステス嬢になることができると、月収は40万円近くにもなる例もあるらしい。
    これは彼女からするとめちゃくちゃ美味しい話なのは間違いない。
    金無し大学院生だった著者なんかは、
    フィリピン嬢の彼女に食わせてもらっていた
    ヒモだったというから、すごい話だ。


    娘が日本で水商売して稼いだお金で、
    フィリピンの家族は大豪邸に住んで贅沢三昧。
    彼女は家族、親戚のスーパースターで
    帰省中には親戚が家に列を無し、金を無心に来る。これももはや訳のわからない世界。

    衝撃的な話が沢山あるが、
    全体として明るいトーンで描かれているのも好感度が高い。フィリピン人明るいよね。

    普通に生きてると知ることのない世界を知れる貴重な一冊。

  • 大学院生が知り合ったフィリピンパブ嬢と本気で恋をして結婚に至るという話。フィリピンパブ嬢を取り巻く実態を著者が見てきたありのままで書いてある為、読みやすいし面白く感じる。

  • 研究対象を恋愛対象にしてしまいました…の帯が強烈。ただ、前代未聞ではあるけど、抱腹絶倒とは行かなかった。はまって貢いでお金をいっぱい取られちゃって…みたいなステレオタイプを想像した向きには、きっと期待はずれ。最初は研究対象だったのに、好きになってしまい、ハマってしまい、就職がうまく行かず、結局は養ってもらうような形になり、お店に乗り込んで雇い主の怖い人と対決することになったり、彼女のフィリピンの実家に行って、果てしのない無心に直面し、物心共に憔悴しても、これがフィリピンの家族観、考えかたが違うだけ、と受け入れようとしたり、底抜けにポジティブな考え方に、良い影響を受けたり、と。ビザのためなら他の男と結婚してた、あなた今収入ないから私今頑張ってる、てミカさんにグッときた。

  • 書名を見ると「フィリピンパブ嬢」をテーマとしたルポとその実態分析かのようだが,実は大学院まで進んだ若者がフィリピンホステスと恋愛し結婚するまでの経緯とその周辺の出来事を綴ったラブストーリ的ノンフィクションだ。とはいえ,これらを描く過程で彼女たちの母国や日本での生活を掘り下げた報告にもなっている。彼らの前途に何が待ち受けているのか…。幸あれと願う。

  •  もはや、過去の遺産となりつつある「フィリピンパブ」という世界。バブル期からその数が増えはじめ、ピーク時には年間8万人もの人女性が、フィリピンパブで働くために来日していた。しかし、2017年の今、フィリピンパブは風前の灯となり、もはや過去の遺物となりつつある……。

     そんなフィリピンパブの実態に迫る研究者が『フィリピンパブ嬢の社会学』(新潮新書)を上梓した中島弘象氏。中部大学大学院で、フィリピンについての研究をしていた彼は、ひょんなことからフィリピンパブの世界に足を踏み入れ、「ミカ」というホステスと恋愛関係に発展! ついに、結婚にまで至ってしまったのだ。

     いったい、フィリピンパブ嬢との愛をどのように育んできたのか? そして、ミカさんとの恋愛を通じて見えてきたフィリピンパブの実態とは?


    ー中島さんは、なぜフィリピンパブを研究することになったのでしょうか?

    中島弘象(以下、中島):学部生の頃から、フィリピンについての研究をし、日本に住んでいるフィリピン人のおばさんたちに対する支援活動も行っていました。その過程で調べていくと、フィリピン人の多くは興業ビザで、エンターテイナーとして来日していたんです。

    ー80年代〜90年代にかけては、興業ビザを使って多くの女性が来日し、フィリピンパブで働いていました。

    中島:当時支援をしていた女性たちのほとんども、そのような経緯で来日しています。けれども、2005年から、興業ビザの適用が厳格化され、フィリピンパブでの就労を目的とした新規の入国が難しくなり、若いフィリピン人女性の供給を断ち切られたフィリピンパブは大打撃を受けてしまいました。当時読んでいた論文にはそう書いてあったし、僕もその認識でした。それなのに、大学院入学当時の2011年、先輩に連れられて初めてフィリピンパブに行ったところ、日本に来て数ヶ月という若い女性が数多く働いていたんです。

    ービザの発給要件が厳しくなり、フィリピンからの出稼ぎは絶望的になっているはずなのに……。

    中島:これは何があるんじゃないかと思って調べたのですが、論文にも本にも書いていません。だったら、フィリピンパブに通って、女の子から直接話を聞こうと思ったんです。けれども、そんな簡単にはビザのことを教えてくれませんでした。そんなときに出会ったのがミカなんです。意気投合し、プライベートでも会話をしていくうちに、彼女たちが日本人ブローカーの仲介のもと、偽装結婚をして配偶者ビザを獲得しているという現実が見えてきました。

    ーはじめ、中島さんは研究を目的としてフィリピンパブを訪れていました。けれども、ミカさんと出会い、デートを重ねるうちに恋愛関係に発展していきます。いったい、何があったのでしょうか?

    中島:ある日のデートで、ミカから「付き合って」と言われました。ただ、向こうはフィリピンパブ嬢だし、偽装結婚もしている。お客さんの延長なのか、本気の恋愛なのかはわかりません……。だから、こちらも、研究のために利用しようという気持ちがあったんです。ただ、付き合いながらいろんな経験をしていくうちに、本当に僕のことを思ってくれていることに気づきます。だんだんと、研究対象としてではなく、彼女の人生に寄り添ってみたいと思うようになりました。

    ー本来、研究者としては、恋愛関係に発展することはNGですよね……。

    中島:研究者としては失格です(笑)。大学の指導教官からも「早く別れなさい」と忠告されました。けれども、眼の前で彼女が大変な状況に置かれているのに、研究なんかしてもしょうがない。研究は社会のためにもなりますが、知的好奇心の満足や論文の執筆など、いわば「自分のため」であることが大部分。そうではなく、お互いに寄り添いながら一緒にいたいと思ってしまったんです。

    ーしかし、そんな「失格」の視点から見えてきたのは、客観的な場所からは知りようのない彼女たちの現実でした。

    中島:フィリピンパブの裏には暴力団関係者がいるし、休みは月に2回しかありません。逃亡しないようにいつも監視されていて、自由に遊びに行くこともできない。ミカも偽装結婚相手と同居していました。ただ、そんな過酷な現実よりも驚いたのが、彼女たちにも「日常」があること。普通の人なら耐えられないような毎日を送っているはずなのに、僕らと変わらずにリラックスしたり、笑ったりしながら過ごしていたんです。

    ー決して、過酷な生活に耐え忍んでいるだけではない、と。

    中島:そう。僕自身も、ミカやその友達と関わって生活を共にしていたのですが、はじめはヤクザの影が怖くて脅えていたのに、だんだんとそれが日常になってしまいました。だから、本書を出版することが決まったときも、こんな普通の経験を誰が読むんだろう……、と不安だったんです(笑)。

    ーミカの契約をめぐるトラブルのためにヤクザに交渉したり、全然、普通の経験じゃありません!

    中島:もう二度としたくないですけどね(笑)。

    ーその時は、ミカが急に偽装結婚の解消を迫られました。離婚すれば、配偶者ビザを失い、不法滞在となってしまうという切羽詰まった状況です。

    中島:その時、彼女を助けられる人は誰もいなかったんです。正直行きたくなかったんですが、彼女と付き合いながらフィリピンパブを研究しようと考えているのだから、責任を持とうと肚を決めたんです。数発殴られるくらいですめば……と。

    ーイケメンすぎっ! ところで、純愛ノンフィクションのようにも読める本書ですが、フィリピンパブを巡っては、入国制度や構造的な問題も指摘することができます。

    中島:さまざまな問題がありますが、不法入国で来日するフィリピンパブ嬢や、背後に暗躍するヤクザだけを糾弾すればいいという単純な話ではありません。そもそも、フィリピンパブという業態は、80年代に興行ビザが開放され、大量の女性が日本に送り込まれたことから生まれました。国でも、彼女たちが資格外活動をしていることを事実上黙認してきたんです。しかし、00年代に入って、アメリカから「人性的搾取による人身売買」と指摘され態度を一変させます。ビザが厳格化され、フィリピンパブ嬢の入国は厳しくなった。国では、この政策の変化を「効果的だった」と評価していますが、実態は偽装結婚や偽装パスポートでの入国など、地下に潜っているだけ。突然「受け入れません」と言われても、一度開放した流れは止まらないんです。

    ーそもそも、このような実態を生み出したのは、過去の日本の政策なんですね。

    中島:また、違法化されたために、ブローカーとの契約を終えても偽装結婚の相手とちゃんと離婚できない、離婚したらビザを失ってしまうといった問題が起こっています。彼女たちは、ヤクザに苦しめられているだけでなく、法律の間でいちばん弱い立場に追い込まれてしまった。しかも、誰もケアをする人がいないんです。

    ーフィリピンと日本との経済格差もまた、フィリピンパブ嬢を送り出す原因となっています。ミカの稼いだ金で、ミカの家族は貧困から抜け出し、フィリピンで豪華な暮らしを送っていますね。

    中島:しかし、金を受け取っている家族は、フィリピンパブ嬢がどういう思いで日本で働いているかを理解していないことも多いんです。日本で働いているんだから無尽蔵に金を持っていて、いくらでも金をもらえると思っているし、お金がなくなると、急に家族が冷たくなってしまうという話も耳にします。それで関係がギクシャクし、本国の家族と疎遠になってしまうケースもあるんです。

    ー本書にも、里帰りをして数十万円を振る舞うミカにたかる家族の姿や、金がなくなると急に冷たくなる様子が描かれています。

    中島:もちろん、それは、日本人である僕の目線から見た姿です。ミカは、「自分が稼ぐお金で家族を助けたい」と納得しているんです。

    ー日本の入国制度、フィリピンの貧困、ヤクザとの関係など、フィリピンパブを巡っては、単純な善悪の問題には割り切れない複雑な様相が横たわっているんですね。

    中島:フィリピンパブには「売春」や「犯罪」というイメージが根強く、色眼鏡で見られてしまうことはしばしば。けど、フィリピンパブ嬢たちも、それぞれの立場で普通に生活し、彼女たちの日常を生きています。僕らだって、少し状況が変わったら、そのような立場に置かれてしまうかもしれませんよね。短絡的に、彼女たちを非難したり排除しようとするのではなく、寛容な心を持ちながら「なぜ、このような状況が生まれているのか」と、考えてほしいですね。

  • かなり面白い。

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