陽だまりの時間

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 29
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041532

作品紹介・あらすじ

ダウン症の娘、夫とともに移り住んだ山間の地。丁寧に料理し、庭仕事に励み、自然の息吹に耳を澄ませる…。「一日一日を感謝して生きる」豊かさが、ここにある。

感想・レビュー・書評

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  • 「だから、あなたも生き抜いて」以来の大平さんの著書。
    極道の妻、司法試験合格、大阪市の助役などを経て、40歳で再婚、ダウン症の娘を授かる、と色濃い人生。
    本書はもう10年近く前のものになりますが、田舎で季節を感じながら、丁寧に穏やかに暮らす様子が綴られていました。

    庭仕事に精を出し、手作りのパンやハーブティ、季節の行事を楽しみ…と素敵な暮らしぶりが書かれているんですが、どれもこれも本格的というか、大平さん自身は大したことがないことのように書かれていて、できることから楽しめばよいですよ、くらいのスタンスでいるんですが、どれ程時間があってもこんな風に私はできないな・・・と思う程、やっぱりエネルギーに満ち溢れている気がします。
    勉強や仕事と家事や育児って違う適正な気がするのに、全方位にパワーを発揮されてて、本当にすごい。

    自然の中で、子どもと向き合いながら丁寧に暮らす…という、本当に素敵な暮らしに触れ、一部でも取り入れられるものは取り入れていきたいなぁと思わずにはいられませんでした。
    児童虐待についての記載もあり、今は「Think kids」という子どもの虐待・性犯罪をなくす会の顧問もされている大平さんですが、子育てをする保護者や子ども自身に対する温かい目線が本書にも溢れていて、それを実際の活動に繋げられる力が素晴らしいと感じました。
    旦那さんとの関係性もとても素敵。また新たに最近の様子など本書出版してくれるといいな、なんて思いました。

  • 『だから、あなたも生きぬいて 』から10年くらい後の大平さんの手記。その10年の間に大阪市の助役(副市長的ポジションらしい)になったり辞めたり、再婚したり、出産したりしていたらしい。
    現在は山のなかに建てたスウェーデンハウスで暮らしているらしく、ハーブティーやステンドグラス作りに精を出しながら、家族三人の暮らしを楽しんでいた。

    やけに健康志向が強くてオーガニック第一主義な序盤部分は読むのが結構しんどかった。食事に家族が揃わないなんて信じられないと嘆く中盤で読むのをやめようかと思った。いろんな家庭事情があるんだし、食事が別でも仕方ないだろうとちょっと苛ついた。
    後半の悠ちゃんとの暮らしについて書かれた章に、ダウン症で身体の弱い悠ちゃんが独り立ちできるまで自分は死ぬわけにいかない、だから健康作りに精を出している、という文章があって、なるほどなあと思った。
    悠ちゃんのためなのだと思えばすべてが理解できる。苛立ってしまった自分を恥ずかしく思う。

    何度も繰り返される、「××と思う人もいるかもしれませんが、私は⚪︎なんですよ」という言い回しは最初から最後までずっと気にかかってしまった。単純に大平さんの文体と自分の貧弱な感性の相性がわるかったのかもしれない。

  • 極道の妻から弁護士に。そして大阪市助役になって
    結婚、出産。ダウン症の一人娘と向き合い、キャリアを中断して穏やかに暮らす毎日が綴られている。

    美味しそうなハーブティーやお料理のレシピをはじめ、役に立つお料理のレシピもたくさん。

    丁寧に穏やかにオーガニックに暮らす毎日が羨ましい

  • いじめ、非行、極道の妻、離婚、司法試験合格、弁護士、大阪市助役、再婚、ダウン症の娘……。

    大平光代さんを物語るキーワードを順番に並べていくだけで、その希有な人生の厳しさが偲ばれます。
    「波乱万丈」という四字熟語で片づけるにはあまりにも目まぐるしく半生を送ってきた大平さんが、現在の暮らしを物静かに語るエッセイ集です。
    気負ってページを開いた読者が腰砕けになるような、平穏すぎる日常が淡々と書き記されています。
    カリスマ主婦のおしゃれなスタイルブックかと思うようなタイトルに出会い、ちょっと拍子抜けしてしまうこともありました。

    でも、こんな文章に出会うと、なるほど、大平さんなんだなと思います。

     私は一四歳のとき、河原で自殺しようとしました。
     運良く助けられて未遂に終わりましたが、それもまた、「死ぬのはまだ早い。今がおまえの天命ではない」ということだったのでしょう。
     ただ、私はほんとうに死ぬつもりでしたから、助けられたあとは、いつも心のどこかで、「自分はあのとき死んだんだ」と思い続けてきました。
     それは弁護士になってからも変わりませんでした。心から信頼できるパートナーを得て、結婚し、悠(はるか)という子どもに恵まれて毎日が幸せだと実感している今でさえも、その思いが払拭できたわけではありません。


    これまでのすべての経験が、大平さんの人生観と死生観を形づくっているのでしょう。
    いま、彼女がもっとも気にかけているのは、長女はるかちゃんの成長であり、彼女に寄り添い、細やかなコミュニケーションを大切にすること。

    四季折々の自然が美しい山あいの小さな町から、現在も大平さんは、貧困や虐待や教育について、ストレートに発言します。
    必ずしも社会の一線から退いて、隠遁者のような暮らしを続けていくわけではないのでしょう。
    こういう生き方もあるのかと共感できました。

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