人質の朗読会

著者 :
  • 中央公論新社
3.65
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感想 : 660
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041952

感想・レビュー・書評

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  • 森田さんお薦め本

  • 人質として亡くなった方々が自分の過去を物語仕立てにして語った短編集。
    極限状態で淡々と語る姿に違和感。
    ちょっと私には合いませんでした。

  • 静かで綺麗な音楽を聴いているようだった。
    ことばが美しいので耳をすますようにして頁をめくる。
    ほんのりと奏でられる死の旋律が静寂を要する。

    無感動で無頓着になりつつあった心に
    優しい刺激を与えてもらいました。


    繋がりと佇まいと物語を大切にして過ごしたい。

  • 読みやすく、静寂で物を語り継げる話だった。8人の人質が語った物語に引き込まれ、大切なものとは何かを問いかけ、心にすっと入り込んだ。生とその隣にある死のことを考えさせる。命には限りがあること、普段自分でも気づかずに生活を送っているのだなと感じさせる。彼らもそれぞれの人生があり、語り手の職業、年齢、性別、語った時の状態がよりいっそう強く感じ取れる。人生はどう転がるのか未知数であり、こんなハズでは…と思う人生もあると感じられる。どの話もしんみりと感動するものだが、ビスケットと槍投げの青年の話が印象に残った。

  • 小川さんの本は久しぶりに読んだ。日本語が美しくて、いいなと改めて思った。
    人質が語る物語を1章ごとにまとめてある本。個人的には前半の物語が面白かった。人質になっている間の状況も描写されるのだと思っていたが、詳しくは語られず、「人質の語る物語」にフォーカスされている。
    最後は、「これで終わり?」という感じだった。
    好き嫌いが分かれるかもしれないが、美しい日本語が好きな人にはおススメします。

  • 外国で人質に取られた日本人達が、一人一人自分の物語を語るという形式の短編集。
    どの話も底流に時にはっきりと時にうっすらと死の匂いが漂う。
    しかしながら、とても品があり深遠で心の深いところに響くような物語となっている。
    このような形で死を扱うことのできる作者の力量は流石である。

  • 私にはあまり良さがわかりませんでした。
    人質が話したという設定がどう生かされているのかも理解できず。

    人間が単純にできているので、複雑な心情を理解しつつ読むのは無理だったのかもしれません。

  • 2015.04.10.読了

  • テロ事件で遺された盗聴テープ。そこには人質たちの朗読が刻まれていた。いま、隔絶された場所から彼らの声が届く…。それは、祈りだったのでしょうか。閉鎖され、命の保証もない極限状態の中、静かに過去を物語る。人質同士のささやかな慰めだったろう。平凡な誰れにでも「物語」があって、静かに静かに語ることは、自分との対話でもあり、聞いてもらうことで確かに生きた証。真剣で素朴に、物語を朗読すること。これも、人にとっての「物語の役割」だろうと思いました。

  • とある国の山岳地方で起こった反政府ゲリラの拉致事件。巻き込まれたのは、8人の日本人だった。
    彼らは人質解放の日まで、様々なことをしてすごしていたが、ある日、人質解放の政府軍兵士の盗聴器から聞こえてきたものは、8人それぞれの物語だった。
    様々な経歴と、過去と、思いとを抱えて誰しもが生きている。有名人でもなく、ただの平凡な、時が経てば人質事件など忘れ去られ、消え去ってしまいそうな人たちは、だが、確かに自分の人生においては唯一の主人公であり、彼らに関わった人々や物事はかけがえのないものである。
    8人はそれぞれの話を語ることで、これ迄の人生と、自分が今ここにあることを実感する。意志的で、前向きである。彼らの生きてきた人生が全て尊いものであると感動できる。
    久々に面白いものを読んだという感じがした。

  • 設定がなんともいえない独特の世界観を一瞬で作り上げていて、一気に引き込まれる。ろうそくの灯りの中声に出して読んでみたくなった。

    人は誰しも生涯に一冊かける本があって、それが自伝だというのはどこかで聞いたことがあるような気がする。この本はまさに自分が経験した人生の一部を、物語として朗読する。

    小説を読むというのは、他人の人生を追体験するような面もある気がするけれど、目の前にいる人が、自分の体験を元に書いた小説があり、しかも本人が朗読するというのは、追体験を超える生々しさがあるような気がする。

    人質になりながら物語を紡ぐ彼らは、なにを考えてたのだろうか。人質事件の時間が経ち、世間が事件に無関心になったころに届く、人質全員死亡の情報。世間の人たちはそれに少なからず衝撃をうけながらも、また彼らは人質として記号化され、意識の底に沈んでいく。

    そんな世間に届いたのは、既にこの世にいない彼らの肉声で行われる朗読会の音声。大半の人が、遠い異国で囚われた人々、自分に関係ない人としてし無意識に思っていた所に、あなたと同じように人生を過ごし、喜んだり悲しんだりした人が殺されたんですということが目の前に突き出される衝撃。

    物語自体は淡々としてるけど、なんだか殺人事件など、様々なニュースを、日々受け流して、他人に無関心な自分に鋭く突き刺さった気がする。

  • 「人質の朗読会」という前説(設定)がなかったら、普通の(もちろん十分良質だが)短編集だったのだろうと思う。
    1週間後には思い出すこともほぼなくなっているような。
    けど、前提の設定が、これほど個々の物語に影響を与えるとは、、、新鮮な驚きだった。
    スパイスというのは、こうして使うのだなと勉強になった。

  • やっぱり小川さんの書く文章は美しい。
    他愛ないはずのものが美しく描かれていて、なんだか俳句や短歌のようだなあと思った。

  • 人質の朗読会って、なにかの比喩だと思ってたけど そのままの意味だった 確かに存在した過去の出来事を朗読する そのひとつひとつが信じられないくらい澄んでいて夢のように美しい ああ、こんな出来事がぼくの人生に1度でもあれば と思わされた

  • ゲリラに拉致され死亡した8人の日本人。犯人の動きを探るために盗聴されていたテープに残されていた人質達の朗読会。いつ解放されるか分からない状態で一人一人心にしまわれていた過去を静かに取り出し澄み渡るような静かな声で囁かれる。

  • 最初の第一夜に入る前の数ページのあらすじを読んで、この物語の構成の上手さに鳥肌がたちました。
    人質として拘束された7人が、一人一人自分の物語を朗読したテープが、事件後に見つかり、それを公開したという形。
    あまりにもリアルで、まるで本当にこの事件が起こったように感じました。

    ただドラマチックな冒頭と違い、人質達が語る本編は平凡で静かな日常に起こった、ほんの少し風変わりな出来事だったのが、読んでて少し中弛みを感じました。
    死ぬかもしれないという場面で、こんな風な小さな繊細な出来事を語らせるあたりが、小川さんぽいし、そこがまた魅力なんだろうとは思います。まあ、ただ単に私には合わないお話が多かっただけだと思いますが。

    第八夜のスーツ会社に務めていた男性が、唯一のお得意様から貰った花束のお話と、第九夜の朗読会を発表される前から聞いていた捜査官の初めてみた、外国人(日本人)のお話は凄く好きでした。
    第八夜は登場人物が自分に近い大学生の頃の話で、第九夜は端から見てる側の話だったからだろうなあ……!

    第一夜 杖
    第二夜 やまびこビスケット
    第三夜 B談話室
    第四夜 冬眠中のやまね
    第五夜 コンソメスープ名人
    第六夜 槍投げの青年
    第七夜 死んだおばあさん
    第八夜 花束
    第九夜 ハキリアリ

  • 8人の人質たちが語るそれぞれの思い出話の短編集。
    これといって印象に残る話はなかった。

  • ★★☆☆☆
    壮大な釣りタイトルの短篇集
    【内容】
    短篇集

    【感想】
    とある国で誘拐された日本人達が、自らの経験を自分で書いて監禁されている時に朗読し合ったって感じで始まります。

    このプロットの時点で、朗読によって犯人の狙いとか、揺らぎがわかるのかなーって思うのですが、
    全然違います。

    単に短篇集です。
    文体も全部同じです。(各々が書いたって設定はどっかに飛んでいきました。)

    よって、やり投げ男の話が永遠と続いたりかなり退屈です。

  • テーマは面白いけど、それを生かしきれない惜しい本。

    まず、タイトルと表紙が秀逸ですね。
    情景が想像できて、何が起きるのか?と期待させる素晴らしい題名になってます。

    ただし、タイトル以上の何かがありません。
    本当に体験談を語るだけ、しかも現実味の薄い、ファンタジーっぽい内容。

    一つひとつの話は良いんです、設定も良いんです、でも捻りがないのでただの短編集なんですよね。

    犯人と人質の顔、拘束されている状況、バックボーンが見えこないので、どうしても絵空事のような感じになり、真に迫るって感覚にならない。

    異国でいつ殺されるか分からず、ガタガタ震えながら、異常な精神状態のなか、救いを求めて朗読会を開く、というディティールが書かれていたら、多分★4つは堅いと思います。

    フワッとしたお話が好きな人にはいいと思いますが、緊迫したドラマを求める人には向きません。

    駄作とは思いませんが、それほどオススメはしないかな。

  • 日本から遠く離れた国で、旅行中の日本人ツアー客とその添乗員8名が反政府ゲリラに拉致される事件が起きる。

    拉致された8名は、長い監禁中に自分たちの身の上や思い出を文章に起こして朗読会を行っていた。
    それぞれの人生の一場面を切り取った短篇集のような作品。

    小川さんの描写は繊細で美しく静かで温かい。
    それでいて少し物悲しい。
    読み始めた途端に、優しいような切ないような感情にふわっと包み込まれる。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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