- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120041952
感想・レビュー・書評
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人質の朗読会 /小川洋子 読了
はじめに話のてんまつが話されるのだけど、人質一人一人の話が終わる頃、どうやって終わるのだろうと思ったけれど、なるほどこう終わるのね。という終わり方でした。ここで、奥の細道?を選んだのはなぜかは読んだことの無い私にはわかりませんが、人質それぞれの話は、小川洋子の話の中では現実的で、だけど少し変わっていて面白かったです。どの話が好きかな〜?槍投げかな。
読了20160330
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短編集のように読めるけど、お話の全てがゆっくりと死を予期させるような印象を感じさせるのは、冒頭での衝撃的な事件の設定があってこそ生まれているのだろうなと思いました。
自分がこの状況に置かれたとして、生まれてくる物語は一体何だろう...と思わず思考を巡らされます。
冬眠中のヤマネが好きでした。 -
静かに進んで行く「誰かの人生」を追体験していくうち、読書会に参加しているような気分になった。夜寝る前に一章ずつ読んでいきたい、「噛みしめる」本。
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テロリストに拘束された8人の人質が、1人ずつ自分の話を朗読する、という形式で語られる連作短編集。
何とも特殊でうまい設定だ。
人質は、今すぐにでも殺されることを覚悟した上で、自分の人生の中のひとコマを選ぶ。しかも、いったん文章として書いたものを朗読して聞かせるため、過剰な感情の高ぶりは排除され、客観的で静かな語り口調となる。
さらに、冒頭で人質は全員命を落としたことが明かされている。そのため、どの話もひっそりと死に近づいていることを前提に、遺言として厳かな気持ちで読み進めることになるのだ。
つまり、読み手は8人の話を読む以前に、すでに気持ちを一定の方向へと導かれているというわけ。だからこの設定は、作品になくてはならない、作者の巧みな仕掛けと言えるのでは。
もちろん、それぞれの話もどれも印象深く、作者の魅力がふんだんに盛り込まれている。個人的には、ビスケットとヤマネが好き。
表紙も、これしかないでしょうと言うくらいマッチしている。無垢とはかなさ、さらには思慮深さまで感じられる小鹿は、静謐をたたえ、どこか人質の姿にも重なる。作品の実物も見てみたいな。 -
自分が死んでいくと感じたときに思い出す過去のお話は、どれも特別大きな事ではないんだけど、その人にとっては心の中に小さく残っていた、宝物のような体験なんだろうなと思った。私の場合は何だろう。
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2016/2/16
読みやすい。 -
人質となった人々が自分の人生を語る短編集。
明日をも知れずの極限の状況で振り返る出来事はやはりどれも独特の切り口。
人生半ばで断ち切られた命と
物語がぷつりと切れて終わるところがリンクするのだろうか。 -
やりなげの青年の話が、苦しいくらいに好きだった。
なんて寂しくて、愛おしい話なんだろうと思った。
言葉にできないけど、この話だけ何度も読み返してしまう。 -
人質となった人達が人質の間中暇つぶしとでもいいましょうか、自分の過去の出来事を紙に書き、それを朗読する。それを盗聴していたテープをラジオ番組で毎夜放送する。といった内容です。
アイデア、とても秀逸です。
ただ人質は各々違う人なはずなのに、みんな同じ人が書いているように感じ、小説に入り込めなかったかな・・・と思いました。
あと、人質の朗読会?じゃないような気がしました。
ただの朗読会、みたいな。 -
15/12/20読了
このひとの本、舞台設定がそもそも幸福に満ちたものにはなり得ないことが多い。これも初っ端からがつんと。人質になるも救われずに命を失ったひとびとが朗読した話、という短編連作。
話ひとつひとつは、世の中にありそうでなさそうな、奇異さと明るさの同居する丁寧なエピソード。締めの1行が、各々の短編の深みを増す。
相変わらずのうまさだった。よかった。 -
地球の裏側で起きた反政府ゲリラによる拉致事件。
拘束された日本人の人質が静かに語る8つの物語。
どの話も日常にあるちょっと不思議な出来事だけど、人質救出の特殊作戦の失敗により8人全員が既に亡くなったことが冒頭で分かっているだけに、ひとつひとつの話がじんわり心にしみて、物語が終わるたびに静かな気持ちになる。
小川洋子さんらしい作品。 -
ちょっと不思議な話として素直に読めば面白いけれど、人質が語る話としてどういう心境なのかよくわからない。
雰囲気は美しくて、ひっそりとした哀しみがあります。
極限状態の人の言葉だから、この不思議な他愛のない話の中に、意味を見出そうとするのかな。 -
表示の子鹿が好きです
それぞれの短編も良かった -
最初の数ページに渡るこの短編集の「設定」をとばして読んでしまったのですが、それはそれで面白い読み方だったかなと思います(笑)
静かに語られる八人の人質と一人の兵士の物語。
自身の死について語ったものはいないのに、その香りを感じてしまう。 -
人質に取られた8人が、犯人に見守られながら各々の人生を物語にして朗読するという設定。ただ8つの物語はどれもなるほど小川洋子な文体で、実質は短編集か。設定は後付けのように薄いけど、それがただの短編集でなくちょっとした味付けになっている
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岩田書店さん選書
これは読んでいてフィクションなのかそうではないのか?という疑問を沸かせる本
一つ一つの物語は主人公や登場人物に特徴があり、人質の人生をどこかに投影しているように思った。
生について考えることが多い時期に読み、自分の人生をこのように表現できるようになりたいと思った -
反政府ゲリラに拉致された日本人の人質が夜な夜な開く朗読会。
ただ話すのではなくて、紙に起こしたものを読むことで、物語のようになる。
もしかすると殺されてしまうかもしれないという恐怖の中で、そのような試みをするってどういう心境なんだろう。
朗読される内容は他愛もないことのようだけど、それぞれの人の人生に影響を与えた出来事。
言葉がわからないであろう犯人グループですら、耳を傾けている様子が伺える。
状況も特殊だし、なんだか不思議だけど、引き込まれる小説でした。