どこの家にも怖いものはいる

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046377

感想・レビュー・書評

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  • 新居に越してきた専業主婦の日記、昭和初期の少年の恐怖体験、インターネットに投稿された学生の実録怪談。
    それぞれが全く関係ない独立した話でありながら何故か既視感を覚える三編の怪談の共通項を、若き編集者とホラー作家とが推理する安楽椅子探偵もの。ノンフィクション仕立てのフィクションとして出版する試みも実験的で面白い。
    結論から言えば、ホラーとして読めば十分怖い。
    主婦の日記と少年の速記録とインターネットの投稿、それぞれ記録された媒体も文体も異なりながら、擬音を織り込んでの雰囲気の盛り上げ方が秀逸。それぞれ時代も背景も違うため、どの話に一番恐怖を感じるかは読者の感性によるところが大きい。
    最愛の我が子が柵の中の得体の知れぬ存在ー「あれ」によって脅威に曝される主婦の怯え、不気味な森で「割れ女」に追いかけられ逃げ込んだ先の邸でも次々と怪異に襲われ追い詰められていく少年の焦燥、初めての一人暮らしで入居したアパートで隣人の不可解な行動に悩まされる学生……

    「あれ」の正体とは何か。
    何故似た感じを覚えるのか。

    そこに編集者と作家が後日発見した、解答編ともいえる二編が追加され、ミステリーとして構成される仕組み。
    小野不由美の「残穢」が面白かった人にはおすすめ。
    というのも怪奇現象がミッシングリンクを介して伝播する経緯を、議論と考察を重ねてロジックで解き明かしていく構造が似ている以上に、下敷きにされた資料が同一。「残穢」で重要な手がかりとなった参考文献が本書でも怪異の起源に至るヒントとして登場した時は、共通項に興奮を覚えた。

    また序盤で博識の作者が語る、タイタニック号や大統領暗殺における歴史の符号の一致も興味深く、知的好奇心が満たされる。著作の裏話や執筆時の状況も折に触れ言及されているのもファンには嬉しいサービス。
    背筋が寒くなる良質なホラーだったのだが、専業主婦の日記にしるされた二人目の消えた子供、狂い女の落とし子の消息など消化不良な部分も多くもやもやが残る。
    もっとも本質がホラーに傾いてるのなら、いくつかの謎を残して後味の悪さを長引かせるのは正しい判断といえよう。

  • 怖い話や怪が好きなものにはわかるのか、一見全然違うように見えるが、どこか共通しているものがあるーと感じる。全然私にはわからなかったけどオカルト的ニュータイプにはテキーンてくるんだろうな。

    参考文献にそれぞれ作中ででてくる話が載ってて、どこまでが本当やらすごく悩む。全てフィクションならそうとう細かいところにまで、凝ってるな。実際にそういう三頭会があるのか、そういう編集者が話を持ち込んだのか。
    作者が現実の執筆進捗を書いたりしていて、現実との境をごまかすのうまい。

  • 思ってたよりは、怖くなかったです。思ってたよりはですけど・・・。似た話として、他の方もあげられてるように「残穢」を思い出してしまいますが、ノンフィクションっぽさは、「残穢」のほうがあったかな。こっちはフィクションだなと思えたので(違うんだろうか?)、怖さが和らいだのかもしれないです。でも、ホラーとしては、十分楽しませてもらいましたし、表紙(単行本)の気持ち悪さはこっちのほうが勝ちです。必ず上には違う本を置いて、目につかないようにしてました。

  • 怖い話の中に、たまに自分の小説の宣伝が入ってて、和みました。最後の前の宗教に取り込まれて行く話が渡しの中の怖さの最高でしたが、解決編もちゃんとやってくれたので、読み終わった後も、安心して眠れました。理由がわからないほーが、恐怖としては上なのかな?それは読み物としてはどうかと思うけど。

  • 実話系ホラーです。多少ネタバレです。
    みなさんの言われる、小野不由美さんの「残穢」と似てる。ただ、小野不由美さんのがホントにフィクションかノンフィクションかわからない感じで最後までしっかり読めなかった。(個人的に近しい人に聞いた話にあまりにも酷似してたため(--;))また、それをねらったせいか。途中で間延びした感じを私は覚えたのですが、こちらはうまく読ませるストーリー展開です。そのため、あっ、これはおはなしなんだ、と思って、安心して怖さを楽しむことができました。
    まさしく、静かなとこで読むと、物音に反応してしまう。奇しくも今季初雪が、降った日だから、いきなりバラバラと音がして、初めて本ん読んで悲鳴をあげました。
    個人的には、しっかり怖さは堪能しながら、後にはひかない、良くできた実話風味のお話でした。

  • 【目次】序章/一つ目の話 向こうから来る 母親の日記/二つ目の話 異次元屋敷 少年の語り/幕間(一)/三つ目の話 幽霊物件 学生の体験/幕間(二)/四つ目の話 光子の家を訪れて 三女の原稿/五つ目の話 或る狂女のこと 老人の記録/終章

  • 怖いのよ 割れ女
    どこの家にもいたら家帰れませんよ。
    雨の日屋上に目を向けられなくなります。
    もし、そこに……

  • 久しぶりに怖かった。家の怪異、ひとつひとつの事象を辿っていく、という要素がなんとなく小野不由美を思い出した。
    正体不明の変な音が聞こえる、というのが怖いなあ…。あとは割れ女に追いかけられるシーン、屋根で踊る老婆のシーンがくっきり想像できて怖かった。
    初めて読んだ作者なので、他の本も読みたいです。

  • あまり読まないホラー。
    姉からのおすすめで読みました。

    姉は4つめの話で、
    わたしは3つめの話で恐怖を感じました。
    人によってそれぞれですが、
    多分近場でないのはよかった、と思うほど。

  • 怖かった
    謎解き部分はあっさりめだけど、怖さを損ねないために、あえてわからないものにしてるんだろうな

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著者プロフィール

三津田信三
奈良県出身。編集者をへて、二〇〇一年『ホラー作家の棲む家』でデビュー。ホラーとミステリを融合させた独特の作風で人気を得る。『水魑の如き沈むもの』で第十回本格ミステリ大賞を受賞。主な作品に『厭魅の如き憑くもの』にはじまる「刀城言耶」シリーズ、『十三の呪』にはじまる「死相学探偵」シリーズ、映画化された『のぞきめ』、戦後まもない北九州の炭鉱を舞台にした『黒面の狐』、これまでにない幽霊屋敷怪談を描く『どこの家にも怖いものはいる』『わざと忌み家を建てて棲む』がある。

「2023年 『そこに無い家に呼ばれる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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