- Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120055010
作品紹介・あらすじ
こんな人生に、使命は宿るのか。片足の祖父、不登校の甥、大切な人を失ったみのり。絶望に慣れた毎日が、一通の手紙から動き出す。慟哭と感動の傑作長篇。
感想・レビュー・書評
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「再生」の物語。心を震わす傑作。
読み終えて装画をじっくりと味わう。嗚呼この色しかない。どこまでも澄んだ青さ。雲一つない青空。
胸に抱いた夢、向こう見ずな青い情熱を、いつか何処かに捨ててしまった経験は誰にもあると思う。
その理由は様々で、その度に勇気も失われてしまったのではないだろうか。
それが歳を取り大人になることだと諦めてしまうのは簡単でも、そうじゃないんだよと語りかける。
後半は涙腺がほぼ崩壊していたが、じいちゃんの独白の正体(?)が分かったときは驚きと嬉しさで…。
長編でエピソードは多岐に渡り登場人物も多いのですが、是非!読んでいただきたいです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
同じ時の中で私たちは
全く別世界を生きてる
─
私は春コートと木漏日
に包まれて、
静かな林道のベンチに
腰かけ、
足もとで落葉が春風に
カサコソ捲られてく中
これを書いてます。
こうしてる今も戦火で
少年兵が手足を失い、
僅かな生活費のために
少女が児童婚させられ、
もっと身近なとこでも
今まさに現在進行形で
不幸が在るのでしょう。
ボーーーっと生きてる
私でもこういう作品を
読むと、
だれかの役にたちたい
とか、
何か意義のあることを
したいと浮足立つけど、
まずは私自身の暮らし
をしっかり送るのだと
自分に言い聞かせます。
ちゃんと生きてる人に
その機会が巡ってくる
と思うのです。
けっしてファンタジー
ではなく、
この本のじいちゃんの
ような人たちを見てて
そう思うのです。 -
久しぶりの角田さん。やっと読み終わった、長かったという印象。
各章は戦中戦後の祖父の話しと主人公の学生時代からの話しと現在の話しの3つの時代が交錯する複雑な形態。それと主人公のみのりの性格が、読んでいて自分に合わない。目的を持っていそうで持っていない。友人達に常に僻んだり反発したり、落ち込んでは連絡を絶ったり。仕事も責任を持たないように社員を目指さなかったり。祖父も足を失い、人生を達観したのか、働きもせずに日を暮す。周囲がそれを受け入れている。
タラントというタイトルも使命や才能、聖書の賜物でもあるようだが、この本のどこに結びついているか悩んでしまう。
ボランティアへの葛藤、偽善感、非難中傷が一気に押し寄せて来る。最後の方のパラリンピックや義足提供のボランティアへのチャレンジが結論だったのだろうか? -
初読みの角田光代作品。
ボランティア論、ジャーナリズム論、障がい者やパラスポーツ、戦争と平和、貧困問題、教育問題、地方と都会、震災復興、コロナ、高齢者の生き甲斐、友情とは、人生の目的とはそしてタラントとは、などなどテーマがてんこ盛りでお腹いっぱいだ。
いい意味でも悪い意味でもストーリーは、しっちゃかめっちゃか感がある。ただ読み応えはある!
僕は主人公よりも数年上の世代だけど生きてきた時代はほぼかぶっている。
しかも僕も香川で生まれて地方の高校を卒業後に東京に出た。主人公が田舎から東京へ向かうときに感じた高揚感や開放感はとても共感出来たし、当時の気持ちを思い出し懐かしく感じた。
作中の方言なんかに触れていると、香川にいた戦争帰りの今は亡き僕の祖父のことも思い出した。五体満足で帰還したようだが、臀部に弾痕の傷跡が残っていたことは子供心には強烈に印象に残っている。本書のおかげでそんなことまで思い出すことが出来た。
コロナ禍の2020年夏に一人で讃岐うどん巡りしたことも懐かしい。
なぜだか自分の人生の来し方を考えさせられる作品で、こんな感覚を味わえる小説ははじめてかもしれない。
主人公含めで登場人物がやたらと酒飲んでいることも非常に印象に残る。人生の大事な節目に酒があるのは僕も同じだ(笑
僕も精一杯人生を歩み、私のタラント(才能や使命)を探そうと思う。 -
「人生の才能」とは果たして…角田光代さん「タラント」終盤へ : エンタメ・文化 : ニュース : 読売新聞オンライン(2021/06/01)
https://www.yomiuri.co.jp/culture/20210520-OYT1T50195/
角田光代が描く“命を使うということ” 5年ぶりの新作小説『タラント』 | ananニュース – マガジンハウス
https://ananweb.jp/news/405765/
タラント|特設ページ|中央公論新社
https://www.chuko.co.jp/special/talant/
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おじいさんの手紙がめちゃくちゃ感動。
もどかしくもある途中のさまざまな経過もこの手紙と表紙の絵で何もかも解消。 -
読み終わったら何か新しいこと始めようかな、と思うような話だった。
道ゆく人みんな物語があり、義務感を持つことがあり、自分にもそれがあると感じさせられた。
余韻が長すぎず程よく励まされた。 -
さすがの角田光代さん作品、終始おじさんの涙腺を随所で弛めてくれましたよ♪
香川県高松市の旧い人気讃岐うどん店で高校生まで育った娘みのりは見飽きた景色と空のこの地を絶対に出たくて出たくて東京の大学に夢と希望を抱いて旅立った!
ただもう戸惑うばかりの新生活だったがふと入会したボランティアサークルで、自分が変われる活動を見つけた気になる。
ここでかけがえのない仲間たちに出会うのだが何事にも確たる自信が無く、くよくようじうじしてしまい、そんな自分に嫌悪を感じもする。
仲間達がそれぞれ、才能や使命を見つけたごとくに歩んでいくのと距離が開くばかりと自己嫌悪感を持ちつつも自分なりの道を模索する。
寡黙で表情に乏しい祖父の清美がみのりが上京以来、時折東京に謎の上京をしてくる件りもずっとずっと興味深い。
みのりの1999〜2020まで20年間あまりの物語、素材が敗戦 東京オリパラ 東北大震災 コロナ禍と盛り沢山なのですが全く飽きない作品になっております♪
戦争で片脚を失くした祖父とパラとの関わりが強引な感はあるけれど方言の緩い温かさもあり、わたしにはとても響く作品でした。 -
主人公のみのりは、学生時代はボランティアサークルに入り、途上国を訪れ現地を視察するなどの活動をしている。
疎遠になってしまった学生時代の仲間とのことや、ボランティア活動、戦争、途上国の貧困などと、様々なテーマが膨らみすぎて、途中はやや冗漫にも感じながら読み進んだ。結論は、長い間、それらに縛られ続けていたみのりが、身近な祖父の清美を通して、ついに見つけた自分の目指したかったこと。みのり、たどりつけて本当に良かったね! 若い頃にあれこれ模索していた頃を思い出した。