都知事: 権力と都政 (中公新書 2090)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020901

感想・レビュー・書評

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  • 内容(「BOOK」データベースより)
    都知事は首相より強い権力者と言われる。首相が頻繁に交代するなか、もう一つの政府とも言える都知事は原則四年間変わらない。一三〇〇万の都民を背景に、GDP世界第一〇位以内の実力を持つ東京都は、日本で突出した力を持ち国政に影響を与え、また公害をはじめとする新たな問題と格闘してきた。本書は、都知事のもと、国家の一歩先を走ろうと試行錯誤した歴史を辿りながら、大都市東京の実態と可能性を明らかにする。

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    都政の優れた入門書。都政の歴史や、その複雑で巨大な組織をハンドリングする都知事という職、都のさまざまな組織や今後の課題、特別区との問題等々、一般の人にはまったく見えてこない世界をここまで丁寧に描いたのは労作。
    ただ、本作は、石原都知事が二選目の末期であった2010年12月に執筆され、翌月出版されている。現時点では、石原都知事は三選し、2011年3月に東日本大震災が発生した。
    こうした点を踏まえて、本書のアップデート版を出してくれるよう切にお願いする。

  • 雑誌の記事レベルの難解さで割りと読みやすい本。
    よく言えば平易。悪く言えば中身は薄い。

    東京都の戦後行政を、
    歴代の都知事とその政策に焦点をあてて解説している。

    議会や官僚との関係、他の府県とは違う特別区制度など
    都政とはなんぞや?に応えてくれます。

    大都市制度のあり方についてもう少し記述が欲しかったので、
    この著者の別の本を探すとします。

  • 題目が「都知事」であるが、「都知事と都政」という題目にした方がよいと感じた。都知事と都政について包括的に扱った本。
    公務員を目指す者として参考になった部分が多い。特に大都市制度に関して日本は立ち遅れているというところは気づかなかった点である。これからグローバル化が進み、さらなる激しい都市間競争が見られることとなろうが、その中で東京がどのようにプレゼンスを発揮すべきか考えないといけない。そう思った。

  • 『都知事』/中公新書/都庁の知事の権力構造や議会、東京都の情勢についてまず解説して、その後に都庁の課題、今の時代の自治体の課題について論じている。勉強にはなるが、構成とか提案が場当たり的(?)な気がした。ま、勉強になりました。

  • 東京都庁出身の学者による書籍
    大阪都構想が注目を浴びている中で参考になる

  •  首相より強い権力者と言われる都知事。そのほか都議会,都庁官僚,都政について。勉強になる。選挙前に読了。都民じゃないんだけどね。
     都知事の権力の源泉は,一千万の有権者に直接選ばれるという正統性。また十二兆円の予算をどう使うか,都知事の裁量権は大きい。身分が安定しており,基本四年の任期が全うできる。国政では全会一致の閣議を要するが都知事は一人で意思決定できる。ただ,都財政は景気の影響をもろに受ける法人二税(法人住民税と法人事業税)に大きく依存しているので,けっこう危ない橋。石原就任前年(98年)から7年間は赤字だったそうだ。
     都知事って,歴代わずか6名しかいないとは知らなかった(戦前は官選の府知事,市長,長官)。安井誠一郎,東龍太郎,美濃部亮吉,鈴木俊一,青島幸男,石原慎太郎。革新都政で有名な美濃部は,天皇機関説で有名な達吉の長男。東以降,都知事が交代する度に政策は左右に振れた。
     都知事の交代は,例外なく前知事の退陣による交代。つまり,前の都知事が立候補しない時に限る。今回の選挙でも,そのジンクスは守られ,歴代都知事は計7名にならなかったわけだ。
     都知事経験者って長生きが多い。東さんは90まで生きたし,美濃部さんは80,鈴木さんは99まで。石原さんは今年79になるが,すごい元気そう。政治家って長生きが多い気がする。中曾根さんなんか今年93歳だし…。
     ていうか,有名人って長生きする人多いよね。レヴィ・ストロース100歳,バートランド・ラッセル97歳,シャガール97歳,白川静96歳,ジョン・ホイーラー96歳,ピカソ91歳,シベリウス91歳…。平均して明らかに庶民より長生きぽい。聖路加病院の日野原さんは今年100歳!

  • 2011年都知事選にあわせて発売され、まんまとその戦略に乗せられ購入、読了。
    色々考えるヒントにはなったが、色々考えた末の個人的な結論は、都知事選に限らない話だが、結局この人になって欲しいと思える人を選ぶことは本当に難しいなと思った。それは、選びたいと思える魅力的な候補者がいないこともあるだろうし、選ぶ側としてもどういう基準で選べばいいかわからなかったりして。
    選ぶ側も選ばれる側も、もっとより良いかたちができていくといいなと。

  • 副題は「権力と都政」~1都知事とは何か:知事の執務室は都庁7階にあり年間2017万円(国会議員には4700万円が税金から支出)が給与,予算編成権を持ち権限は首相より大きいと言われる。2都知事と都政-戦後六○年の軌跡:安井…東→美濃部→鈴木→青島→石原とハード・経済重視とソフト・生活重視に都政は振られている。3都議会-真の立法機関へ:2000年の改革で地方議会は審議権も条例制定権も予算修正権も手に入れたが,まだチェック機関だと考えているようで,議員は与党志向が強い。4都庁官僚-「20万人体制」の現在:3タイプ①国士型官僚②調整型官僚③吏員型官僚があるが,③が多いが②として政策立案をすべきだ。5都知事と政策決定:4類型①稟議制方式②トップダウン方式③諮問委員会方式④側近ブレーン方式があり,知事には内なる闘い(対都議会・都庁官僚)と外なる闘い(対政府)がある。6都財政-常態化する危機:予算規模は一般6.3兆,特別4兆,公営企業2.2兆で合計12兆円,フィンランド・チェコの国家予算に相当。財源は法人事業税・法人都民税に依存しているので景気の影響を受けるため,借金と基金(貯金)は欠かせない。7独自の大都市制度-都と特別区の関係:国と地方の関係に似ている。道州制が導入されるなら都市州となるのがいいだろう。8石原都政の大都市経営-転換を試みた12年:都心回帰と都心再開発。ワンイッシュ・ポリッティクスで財政再建・銀行税創設・ディーゼル車規制・職員削減・羽田空港国際化・外環道凍結解除,公会計改革,東京マラソン,五輪招致運動,築地市場の豊洲移転の決着,温室効果ガス排出量取引を推し進めた。地下鉄の一元化,京浜三港の競争力強化,高齢化に伴う対策は是非。終;大都市東京の行方-三つの焦点:巨大化を積極的に肯定し,副都心育成論(多心化政策)をこれからも推進すべきで,都庁は二十数局体制を七つに再編成し特別職とし一種の内閣制度にし,1都3県で東京圏州とし日本の牽引役になるべきだ~都知事選挙を4月に控えてMXテレビの都政解説者の大学教授が,自分が必要だと言う次期東京都知事は声を掛けてくださいねというアピールに見える。ま,対立候補がいない状態で四選が決まっちゃった

  • 都知事にとどまらず、地方自治に関する内容までを含んだ本。内容はかなり濃い。
    最近、こういう新書が減っている気がしている。

    革新であれ保守であれ、東龍太郎~美濃部亮吉~鈴木俊一~青島幸男~石原慎太郎と、個性の強い政治家が都知事となっている。議会に重きを置かない国政の内閣総理大臣より、公選の都知事の任期は総じて長い4年間、韓国やフィンランドの予算に匹敵する12兆円の予算を左右し、世界の国々と比べても世界第十位のGDPを誇る東京都に君臨する都知事という存在。

    読んでいて思ったのは、美濃部亮吉知事が今の東京の基礎を築いたのではないかと思ったことだ。が政府の許可を必要としていた東京都の地方債を、これは違法であるとして訴訟を起こそうとした。結果は失敗に終わったが、これは自治省が、革新自治体が地方債を発行して福祉政策を行うことを妨害する意図があったとも云われる。結局議会の反対を受けて頓挫するが、地方自治を行おうとしたことは、特筆に値するのではないか。また現在行われている法人二税(法人事業税と法人都民税)の導入を決定したのも、美濃部知事の時代である。
    また鈴木俊一知事になり、行革の結果財政赤字を脱却したと言うが、オイルショック後の景気回復で収入が増加したこと、法人二税のおかげとも云われる。

    また地方分権の一環として、道州制の是非が問われるが、戦時中の遺産として残っているのが東京特別区である。これは戦時中の二重行政を解消するために導入された。これは特別地方公共団体であり、一般的な市町村とは異なる。
    また道州制を導入するに当たっても、今の政令指定都市は諸外国の都市州として別枠にすべきであろうと述べている。これは諸外国にも事例があるし、単純に分割したのでは権力が偏るであろうという配慮である。

    以上のように、都知事の解説にとどまらず、地方自治とはなんぞやという話もできる。

  • 都知事選に合わせて読んだ本。

    今年は各候補の政策・主張の違いが特に見受けられずに、候補の選択に非常に苦労した。震災の影響で軒並み防災面の主張が強くなったイメージだが、それ以前も主要候補間でマニフェストの違いはほぼ見受けられなかったように思う。

    その中で、都政はどのような歴史を経てきたのか、という点を知りたくなり読んでみた。この本は題目が「都知事」だが、都政全般について深く解説しており、歴代知事の評価の他、都庁の官僚システムや財政についても学ぶことができた。
    個人的には、歴代都政がインフラ整備のハード路線か、生活福祉のソフト路線というように、振り子の如く一代ずつ変化しているという仮説が面白く感じた。

    内容は総括的で、かつ深彫りしてあることから、都政を理解するには一番いい本だと思う。

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著者プロフィール

中央大学教授 法学博士

「2013年 『大都市行政とガバナンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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