ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書 2257)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022578

感想・レビュー・書評

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  • 2015・08・03読了

    ハンナ・アーレントの生涯を描いた作品。
    彼女のバックボーンや、思考の形成される過程がわかりやすく理解できる一冊であり、個別の著書を読む前に基礎知識代わりに読んでおくと良いと思う。

    反ユダヤ主義に対するアーレントの考え方、イェルサレムのアイヒマンの箇所等は、現代社会の問題にも非常に通じるものがあり、一文一文が、とても考えさせられるものであった。

    2013年に公開された映画『ハンナ・アーレント』も観ておきたかった。

  • ずっと長い間気になっていたが読めていなかった一冊。
    激動の時代を生きて、その中で考えることをやめなかったとても強い意志を持った女性の伝記的な一冊。
    ユダヤ人の立場が理不尽に弱かった戦時中と戦後のイスラエルによるナチズムへの報復の感情が強かったアイヒマン裁判などで自身で考え抜いて周囲からどのような批判を受けようとその考えを変えることはなかった。
    彼女の大切なものはユダヤ人という人種ではなく周囲の友人などでありナショナリズムなどは関係ないという言葉はやはり力強い。
    彼女の哲学の内容というとしっかりと理解することはできなかったが伝記として読むととても分かりやすく面白い本であると思う。

  • 読みにくかった。
    アイヒマン論争のところは面白かったのだが。

  • 15/02/14。

  • ハンナアーレントは法律や政治に哲学が必要な事を教えてくれる。哲学、それは人間であるという事だ。人間である事をやめなければいけないような法律や政治に従って生きることは出来ない。哲学こそがお金に支配されたこの世界に未来をもたらす鍵なのだ。

  • ユダヤ人でありながら、民族的感情を一切排除してアイヒマン裁判を、後世のためにも、客観的に総括したアーレントの正義感の強さは、いったいどこからきているのだろうか?
    ナチの犯罪は狂人やサディストによる行為として考えたほうが楽だったろうに、ユダヤ評議会の関与にまで踏み込んで言及し、そのために多くの友人・親戚から絶縁され、でも自分の主張は決して最後までゆがめることのなかったアーレント。
    恩師ヤスパースが、ユダヤ人の「生きるための嘘」という一番痛いところを衝いてしまうことに気がつかない彼女の「ナイーブさ」を指摘しつつ、最後まで全面的に彼女を支持したことは心の支えになっただろう。
    先日観た映画では、彼女がなぜアイヒマンを単なる「凡人」と判断したのか理解できず、本書を読んでみたのだが、アイヒマン論争については、この新書(全)200数ページの内でも、15ページ程度しか記述がないため、まだモヤモヤ感は晴れない。
    本書には、彼女の代表作や書簡からの抜粋が適宜掲載されており、それなりにわかりやすい評伝にはなっているが、彼女がどうして、そういう結論にいたったかを理解するためには、やはり「イェルサレムのアイヒマンー悪の陳腐さについての報告」を読まないとだめだろうか。。。

  • 『イェルサレムのアイヒマン』を読む前に読んでみた。公平(公正)な主張。物事を俯瞰で見ることは、ある種の孤独をもたらす。

  • ハンナアーレントの評伝。哲学には馴染みが薄く、
    内容にとらえどころがないように感じたが、
    全体主義に対する論考やアイヒマン論争については
    わかりやすく説明されており、理解しやすい。
    特にアイヒマン論争については
    当時のユダヤ人らが抱いていた深層心理を
    垣間見るようで興味深かった。

  • よみやすい。

  • 2014年88冊目。

    『人間の条件』『全体主義の起源』などで有名な政治哲学者ハンナ・アーレントの一生を描いた一冊。
    ユダヤ人の出自で、ユダヤ人大量虐殺の実行者であるアイヒマンの裁判を傍聴、その内容とそれに対するアーレントの思想を綴った『イェルサレムのアイヒマン』が大論争を巻き起こす。
    それは、この論文がアイヒマンを悪ではなく「思考の欠如した凡庸な男」とし、ユダヤ人側の責任にも言及した点にある。
    おそらく大きな批難を受けることは目に見えていたのではないだろうか。
    それでも自らの信念に基づいて思想を語りアイヒマンの政治哲学者としての、そして人としての実直さに敬意を抱いた。
    思想の欠如の脆弱さと恐ろしさを思い知った。
    自ら考える姿勢をなくさずに持たねばと強く思った。

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著者プロフィール

(やの・くみこ)
1964年に生まれる。東京外国語大学大学院地域文化研究科博士後期課程修了。現在 フェリス女学院大学教授。著書『ハンナ・アーレント——「戦争の世紀」を生きた政治哲学者』(中公新書)、訳書『アーレント政治思想集成』全2巻(共訳)、アーレント『反ユダヤ主義——ユダヤ論集 1』『アイヒマン論争——ユダヤ論集 2』(共訳)、ヤング=ブルーエル『なぜアーレントが重要なのか』『ハンナ・アーレント——〈世界への愛〉の物語』(共訳、以上みすず書房)他。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。

「2023年 『ハンナ・アーレント、あるいは政治的思考の場所 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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