ハンナ・アーレント - 「戦争の世紀」を生きた政治哲学者 (中公新書 2257)
- 中央公論新社 (2014年3月24日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121022578
感想・レビュー・書評
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アーレントの人生をざっと知るによいテキスト。20世紀前半の困難な時代を生たベンヤミンたちとの交流に強く共感した。
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全体主義と対決し、「悪の陳腐さ」を問い、公共性を追求した政治哲学者ハンナ・アーレント。ユダヤ人としての出自をはじめ、幾多のドラマに彩られた生涯と、強靱でラディカルな思考の軌跡を、繊細な筆致で克明に描き出す。【「TRC MARC」の商品解説】
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人物伝がメインなので人生を辿るには有益だが、思想・哲学に関しては多少触れる程度なので物足りなさはある。人物研究と思想研究の関係をどのように考えるのかによってこの種の本の評価も変わるのかと。
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ハンナアーレント の生涯、思想、著作をまとめた本。「全体主義の起原」の論述は わかりやすい。印象に残ったアレントの言葉は「思考し、自由を求め、判断を行使する人々が生み出す力こそが世界の存続を支える」
「全体主義の起原」に対するアーレントのスタンス
*ガス室、全体主義など人間の無用性をつきつけた出来事に対して出来事の諸要素を分析→因果性を排除→諸要素の結晶=出来事
*起こるべくして起こったのではなく、人間の行為の結果としての出来事
*反ユダヤ主義、帝国主義の諸要素は 必然的に 全体主義に直結したのではない
*人間の選択を描いた→他の選択肢もありえたのになぜ それを選択したのか
*官僚制という誰でもない支配が 個人の判断と責任に与えた影響を検証
*全体主義は 政治の消滅である
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2021年12月
その人の生涯を知ると、哲学の本棚にずらりと並ぶ著作の背景やテーマがわかる。
ユダヤ人として第二次世界大戦を生き抜いた強さ、その後多くの人から批判され古い友人から絶縁されても思考し発信し続けた強さ。
読みやすくてよかった。この本を手がかりにハンナ・アーレントの著作を読み始めている。 -
ハンナ・アーレントの本は、何がきっかけだったかはっきりと覚えていないけれども、読んでみたいと思っていた。難解であるということは聞き知っていたので、最初に「100分de名著」で読んだ記憶がある。
そこで思想の全体像はなんとなくわかった気になり、図書館に出向いたところ、アーレントの著作がずらっと並んでいるのを見つけた。嬉しくなって『活動的生』『全体主義の起源1』『エルサレムのアイヒマン』を調子に乗ってまとめて借りた。
題名からして、『活動的生』が今の興味に一番近いように思って手に取ってみたところ、わかるようなわからないような…とにかく聞いていた通り、気軽に読み通せるものではないことがよくわかった。
そんなことをつぶやいてみたら、知人にこの本を教えてもらい、手にとった。経験が思考を促し、思想、そして著作として生み出されていったということが、アーレントの生涯と共に語られることで伝わってくる内容。
アーレントの言葉というよりも、この本の著者の矢野久美子自身の解釈による言葉が、今の私にはしっくりくることが多かった。本書を片手に、あるいはまた別の本も携えながら、アーレント自身の思考の跡を辿るというのは、とても面白い経験となりそう。
今の私にとって最も共感する言葉を以下に引用する。
p.222
「アーレントは、『思考の営み』はけっして職業的思想家のものではなく、すべての人びとが日々必要とするものだと断言している。それは、抽象的に思考したり、神や不死や自由といった究極的な問いに答えたりすることではない。『半時間前に自分に起こったことについてストーリーを語る者はみな、このストーリーを形にしなければなりません。このストーリーを形にすることは思考の一つの形態です』とアーレントは言った。 」 -
ユダヤ人彼女がユダヤ人虐殺アイヒマン裁判を傍聴し思い描いていた悪の人物像とあまりにかけ離れていた凡人だったことにショックを受け。邪悪な行為は個人の問題ではなくシステム的に行動し考えることをやめた人間の愚かなさが原因悪の陳腐さとホロコーストにはユダヤコミュニティも加担していたと雑誌し発表するとユダヤ人総反発を受け孤立それでも信念を貫く彼女は凄い。
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アーレントの生い立ちから始まる生涯と代表作の内容の平易な説明を通して彼女の難解な思想を読み解く入門となる素晴らしい本だった。さらに深く知る上でアーレントの著作をこれから読む必要はもちろんあるが、友人との交流を大切にし、多くの影響を受けた彼女の思想を知るには著作のみでは限界があるのでそういう意味でも伝記色の強い本書はそこまでカバーできているので読む意義があったと思う。
彼女の政治哲学には難しい部分ももちろん多いが、根底にあるのは''現実を理解し事実を語ること''ということだった。また彼女の人柄としては友人思いで、とても誠実な人物なのだと感じた。そんな彼女がアイヒマン論争で友人たちと絶縁することになってしまったのはとても残念に感じた。 -
ドイツにユダヤ人として性を受けたハンナ・アーレントの生涯を綴った書籍です。
ナチス台頭の時代、同時代の軍国日本との対比でアーレントの生き方を考える。