東京23区×格差と階級 (中公新書ラクレ 741)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (334ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121507419

作品紹介・あらすじ

田園調布や六本木ヒルズ、山谷地区やシャッター通り、ホームレスが住む公園まで。東京23区内をほんの数キロ歩くだけで、その格差の宇宙が体感できてしまう。東京は、世界的にみて、もっとも豊かな人々と、もっとも貧しい人々が住む「階級都市」だ。そんな23区の姿を、格差に関するさまざまなデータをもとに詳細に分析。その実態を明らかにするとともに、「階級都市」が潜む危うさを、どう克服すればいいのかについても考えていく。

感想・レビュー・書評

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  • 「格差と階級」というどちらかと言えば、センセーショナルな題名とはうらはらに、実態データを丹念に分析した、どちらかと言えば、学問的な雰囲気を持った本だ。実際に社会学の研究をベースとして本書は書かれている。
    例えば「中央区銀座一丁目」というような単位を、「町丁目」と呼ぶらしいが、その町丁目ごとに色々な統計データを取得し、地図上に、それを色の違いや、白黒のページは印刷の濃さにより一覧性をもったものとして示した地図が多く掲載されている。取得され、本書の中で紹介されているデータとしては、例えば、「世帯年収」「管理職・専門職比率」「大学・大学院卒業者比率」「1世帯あたり人員」「未婚率」「65歳以上比率」など、非常に多様なものがある。
    それらを見て思うことは、東京は東京というひとつの地名ではくくれないほど多様である、ということだ。例えば世帯年収は都心部から西側が高く、東側が低い、といった東京23区全体から言える多様性もあるが、同じ区内でも、例えば同じ港区内でも町丁目によって、世帯年収は大きく異なる。同じ区内にも多様性が内包されているわけで、実際にそれらを統計が示された地図でみると、「モザイク模様」という言葉がぴったりと当てはまる気がする。例えば所得の格差は東京23区に特有の問題ではない。日本中、あるいは、世界中で起こっている問題であるが、東京という世界的な大都会には色々な意味で世界最先端の場所がある一方で、取り残された場所もある。従って、格差が分かりやすい形で先鋭的に出てくるのだな、と感じた。

  • ブルデューの理論を基に格差と階級に言及し、それを東京23区にあてはめているのが面白く感じた。

    下町のジェントリフィケーションが進んでいく結果、経済的に豊かな人たちはますます新自由主義的な考え方を強め、経済的に貧しい人たちが空間的にも政治的にも追いやられてしまうという予測が著者によって提示されている。

    東京を「階級都市」でなく、著者が言う「混淆都市」にするために新中間階級の一員である自分ができることは、なるべく自分の集団から想定しにくい場所(≒らしくない場所?)に住んで、かつなるべく地域コミュニティとの接点を増やしていくことなのでないかと考えた。これにより、微力ながら社会空間の多様性を喚起するのに寄与できればと思った。
    もちろん、多様性そのものが称揚されるべきものではないと思うし、綺麗事で済まされない軋轢が生まれることが容易に想定できる。ただ、それでも、終章で著者が提示している悲観的予測がそのまま当たってしまうのは悲しすぎるので、自分の立場でできることを生活の中で実践しようと考えた。

  • 東京に引っ越してきたので購入。
    実際に歩いて見て感じた東と西の違いをエビデンスを用いて書いてあるのでわかりやすかった。
    親の学歴や地域の学校による学歴によって子供の学歴が決まってしまうこと。
    元々は東の方が栄えていたが東京大空襲と地震で西の方が栄えてきたこと。
    昔は山手の子、下町出身を町っ子と呼んで差別されてたこと。
    など歴史を紐解くこともできてよかった。

  • 街歩きが好きなので東京を歩いて感じる街の雰囲気の変わり目には興味があった。結局のところ歩いて感じる雰囲気の違いも、データから明らかになる実際にそこに住んでいる人々の属性の違いも、豊かさと貧しさの歴史から生まれてくるもので、近年その変化のスピードが変わりやすい場所ではどんどん早くなっているし、変わりにくい場所もあるというのがよくわかる。それを説明していくと結局この地域は所得が低い高いの話になってしまうのが下世話な雰囲気になってしまうのだけど、それが現実。

  • 東京23区内の経済的格差の歴史。下町と山の手がどのように形作られてきたのか。都心3区から今の23区に至る歴史。鉄道の沿線に沿って単身世帯が集中するのは交通の利便性や身軽さがあるから。
    ある程度の年収のある世帯は所得再分配は必要ないと考え、そうでない世帯は必要と考える。
    23区は様々なステータスの人が住むある種、不思議な空間だなと思います。格差はあっても良いと思いますが、人の行動を阻害したり、軽蔑するものであってはいけないと思う。そういう意味だと、所得の再分配は必要かなと思いますし、回り回って、自分の所に戻ってくるかもしれない。理想論かもしれませんが。

  • 東2法経図・6F開架:B1/5A/741/K

  • 最初から最後まで本当に面白かった!馴染みがあるのは,生まれた中央区,終の住処と心の中では定めている渋谷区,勤め先だった港区や新宿区あたりだったけど,その他の地域についても,是非街歩きしてみたくなる情報満載でだった!
    渋谷区笹塚についての記載は,かつて自身のブログで論じた内容ともかなりの範囲でリンクしていて,「もっと,もっと突っ込んでくれー」と思ったのと,中央区東日本橋の『日本橋なのに下町』的な,やや特殊な地域性について触れていなかったのがちょっと残念…と言うかそんなに細かく書いてたら新書一冊では収まらないか,とも.
    ところで,祖父が『さしすせそ』が言えない東京弁話者で,下町要素の色濃い育ち方をしてきたにも関わらず,山の手の代表である渋谷になんで親近感を覚えたのか不思議と言えば不思議だったんだけど,東日本橋と笹塚,と考えると,まぁ都心の下町と山の手の下町,都営新宿線で繋がれた西と東と思えばまぁ納得も出来たりして,自らのルーツの再確認もできて,なんか嬉しくなった一冊だった.

  • タイトルとちょっとイメージが違ってきちっとしたデータや研究に基づいていてとてもおもしろかった。

    品川・大田編の北品川は品川駅の南にあるくだりは「ほんとそれ」という感じ
    ずっと都内に生きてきているが、知らないこともまだまだ多く、これからのことも考えさせられる

  • 階級社会の中では、その階級に合わせた教育が、学校の中でも図らずとも行われる。うむ。

  • 東京における経済格差を示した本

    平均所得が高くなる地理的要因がわかり
    「年収は住むところで決まる」とセット読みすることで価値が最大化する

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著者プロフィール

橋本 健二(はしもと・けんじ):1959年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授。専門、社会学。

「2023年 『階級とは何か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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