ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書 290)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121902900

感想・レビュー・書評

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  • 自分自身で情報を掴みに行って、事実を確認する。
    理論値にこだわらない。現状からのなだらかな移行を考慮することも忘れてはいけない。
    経済のテクニカルな部分ははっきり理解できないところが多い。
    ただ、おおまかでも、何のためにどんなことをやろうとしているのか、それが理解できれば読み進めることができる。

    当時、1965年当時、宗主国ベルギーから独立したばかりのルワンダの財政は混乱していた。国際通貨基金からルワンダの中央銀行総裁をやってくれと依頼される。
    服部氏は日銀に長く勤め、パリにも3年ほどいて各地在留経験がある、語学堪能。

    中央銀行総裁といっても、日本銀行のそれとは違い見なければならないところ、改善しなければならないところが多い。
    通貨為替が二重になっていた。自由相場と固定相場の2つがあったのを固定相場1本にする。この通貨改革はいつやるのか、相場はいくらで実行するのか。


    税制を見直す。関税やら人頭税やら。
    貿易もルワンダの発展が進むようにしなければならない。主な農産業はコーヒー。
    錫の掘削も主な輸出品だが、これは技術的に外国資本の力が必要。そこは融通をきかせる。
    国際通貨基金以外にも外国各国に資金援助を頼まないといけない。真摯に助力を請わねばならない。
    国内の市場の活性化も必要だ。市場銀行は1つでいいのか。金利はどうするのか。国債の発行はどうするのか。
    国内の商売で不当な利益を得ている外国人、それにも対処しなければならない。外国人だけが得られる優遇を廃止する。そして、ルワンダ人がもっと商売できるようにしなければならない。
    国内の公共交通インフラ、バスももっと走らせた方がいい。

    とにかく、やることがたくさんで、実行した詳細はいろんなサイトで見られるでそこを見れば良い。
    服部氏は自分で現場を見ることを重視し、それをもとに自分自身で判断した。
    そして、理論から改善策を出すが、盲目的にはそれを実効しなかった。どこかで現場の人達が・現状がそれになじむように融通を利かせることを忘れなかった。
    無理に外国資本をいきなり全部排斥することはできないのだ。
    結局、公平な制度にすれば、特権待遇に甘んじた高慢怠惰な外国人を退席し、懸命な人々がそれにとって代わる。その健全な競争はルワンダ人にチャンスを与えることになる。

    ルワンダの人達をバカにする、他の外国人とは一線を画し、実際のルワンダ人がどのような人達なのか、常に対等につきあった。これは服部氏が帰国する際に外国人が語った「服部氏は、ノーと言ってもルワンダ人と友人になれることを外国人に教えてくれた」という言葉にもある。これは媚びず蔑まずということだろう。

    なんでも独立させればいいという考えはよく聞かれるが、
    なんでも早く独立させればいいというわけではないのではないか、ともある。
    独立というと聞こえはいいが、独立前は宗主国の責任下にある。
    未成熟なままの独立では、結局宗主国をはじめ外国人にカモられる。しかし、独立しているので責任は対応出来ない独立国そのものにある。こういうことを言いたいのだろうか。


    服部氏は海軍の情報部出身で、阿川弘之氏の上官だったという。
    あらためて軍部情報部のインテリジェンスのすごさを思い知った。

  • ルワンダで中央銀行総裁となった服部氏がルワンダそのものを立て直していく自叙伝。中央銀行職員の仕事が世の中にどう繋がるのか勉強になった。またルワンダで起こる服部氏目線の諸問題は、今自分の住むインドネシアの役人から見ても同じ気持ちになるんだろうなと想像する。

  • 前書きと末尾の文で述べられている「人を見る」という、近年失われつつあるように感じていた観点について改めて見直したくなった。
    専門的な金融用語や、登場人物が多岐に渡ることもあり、読み進める間隔が空くと内容の理解を取り戻すのに少し時間がかかるが、内容自体はとても興味深い。
    本題からは逸れるかもしれないが、著者が述べている途上国支援について、現在中国がかなりの投資をアフリカで進めていることや、日本国内でのデジタル産業への移行が90年代に技術力を誇っていたにもかかわらず遅れていることなどを考えると、分野に限らず日本社会における先行投資を行っていくことの難しさを改めて感じさせられた。
    個人的に日本は世界各国から仲裁や支援をする役割を期待あるいは要求されているように感じるが、なかなか著者のようにはっきりと意見を主張したうえで、物事に臨んでいくということが見えづらい(だからこそそのような役割を求められているのかもしれないが)。水面下で実際には行われていることも多分にあるだろうが、本当の「中立」とはどのようなものなのか改めて考えさせられた。
    増補部分において記載されている「世界はいまだ力が支配している」という記述が、現在の世界情勢とリンクして重く響いた。

  • 日銀マンの奮闘記。植民地残滓の経済(外国商人支配)を通貨改革と農業中心経済再建でルワンダ経済成長の先鞭をつけた。外貨不足と財政赤字に伴う平価切下げ&二重為替制度一本化の話は経済音痴には難しかった。マクロな統計分析とルワンダ現地の農民・商人・政治家との交流の2つを組み合わせてルワンダのグランドデザインを描いていたのは正直すごい。
    通貨改革についてはルワンダに銀行が一行しかなかったことが逆にやりやすかったんだろうなと思った。
    農業開発を通じて農民を貨幣市場に戻す試みは流通機構の整備や関税の調整で成功に終わった。紙数の多くを外国人商人と現地のいざこざが占めていて、先進国から見たアフリカ像が実はかなりバイアスがかかっているのではないかという疑念にかられた。地理学的なアプローチも含めて現地事情を把握した対策が大事だと思った。

  • 開発政策などに関わる人は読んだ方がよい。自分ができるか?と思うと無理だけど、他の国で仕事をする時、それくらいの気持ちで取り組まないといけないと気が引き締まる。欧米に負けない日本ならではのやり方、銀行だけでなく、コーヒー産業やバスについてまで気がつき改革していく。本にしてくれてよかった。そしてそんなに昔の話であることに驚く。

  • 経済改革については難しくて読み飛ばしてしまったが、途上国支援において、現地の人とのコミュニケーションの重要性がよく分かった。

    途上国は、先進国と比べて伸びしろが多いのに、なぜいつまでたってもなかなか追いつかないのかについて、結局先進国の成長の搾取というのが原因として大きいというのには、納得させられた。

  • 難しかった。
    商学部出身の自分が、そうそう、経済とか勉強してた時こんな感じでわけわからなくてつまんなかったなーというのを思い出した。大変大事なこととは認識しているが。
    でも、実際に現地の人との生の対話をベースに仕事されてるところが素敵だと思った。
    日本人が全然いない海外で仕事されたのもかっこいいな。
    今のルワンダの大統領もクーデターの時の人なのね。知らなかった。

  • 日本銀行の人がルワンダ中央銀行で働くお話。
    金融的?経済的?知識が欠如している自分には、金融政策の内容がわからず。
    とりあえず現場主義は素晴らしいってのはわかった。
    タイトルは日記だけど、エッセイみたいに読みやすくはない。
    あと、書き物やさんの文章って読みやすいんだなと感じた。

  • 経済に疎いので難しい部分もあったが、著者が金融に関わらず幅広い分野でサポートし、ルワンダの発展に大いに貢献されたことはとても良く理解でき、その過程も興味深く、どんどん読み進めることができた。

    特に印象に残ったのは、著者が徹底した現場主義だったということ。そして現地の人の声を大事にしていたということ。偏見の入った第三者の評価を鵜呑みにせず、直接自分で話を聞いて、見て、確かめるということは、時代関係なく大切なことだと思う。

    決して自分の私利私欲のためではなく、ルワンダ国民のために、真面目にそして熱意を持ちながらも常に冷静に取り組み、その姿勢を徹底して貫いたからこそ、現地ルワンダ人からも、他国の大使などからも信用が厚かったのだと思う。

    また、増補部分で解説されたルワンダ動乱については、これまでは一般論の理解しかなかったので大変勉強になった。緒方貞子さんやルワンダ関連の本は昔読んだことがあるが、これを機に再読したい。

  • 60年以上前の話と思えない位なんだか共感してしまった。現地の人とも対等に接して信頼するというのはとても日本らしいやり方だと思う。
    欧米系でも中国系でも一緒に仕事をしていると、階級社会ってこういうことかと思うことしばしば。たまたま立場に上下があっても人間としては一緒という考え方がないのです。
    まあ最近は日本人でもそういう人が増えてきた気がするけど。

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