犬が星見た: ロシア旅行 (中公文庫 た 15-4)

著者 :
  • 中央公論新社
4.01
  • (108)
  • (73)
  • (97)
  • (4)
  • (0)
本棚登録 : 882
感想 : 91
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122008946

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 百合子さんの文章はとても簡潔なのに、目の前に描かれた光景がぱっと広がり、そこで繰り広げられる会話の声まで聞こえてくるよう。この旅に同行した気分を味わい、銭高老人の声まねをしたくなった。

  • 最初の方はシルクロード紀行のような感じ。
    一時、大シルクロードブームがあった。懐かしい。
    トイレにドアは無いし、浴曹に栓は無いし、ドアのあるトイレでも、体当たりをしないとドアが開かない。
    非常に暑い。
    でも、百合子さんは元気だ。
    不便を楽しんでいるよう。
    ロシア語はどのくらい話せたのかは不明だが、語学力よりもコミュニケーション力で不可能を可能にしてしまうような人。
    あちこちでベトナム人に間違えられる。
    ハバロフスクへ船で着いて、あとは、列車、バス、飛行機など様々な交通機関で、西へ西へ。

    ロシア圏内(?)を抜けて北欧へ入ると、とたんに、トイレは香りつきの水が流れる水洗になり、ふかふかのトイレットペーパーには花柄のプリント。
    ドアの立てつけは良いし、バスタブにちゃんと栓もあって、全てはスムーズに進む。
    物は豊富。
    しかし、百合子さんは少しつまらなそうだ。

    更に、帰国の途に就く、例の日輪に鶴のマークの機内の人となると、読んでいるこちらも、夢の国から下界に戻っていく心地がする。

    とても面白かった。

    中公文庫はお高いので、ブックオフで買いました。
    売った人はきれいに読まれていて嬉しい。
    でも、私は再読したいので(出来るかどうかわからないけど)売らないと思う。

  • 1969年。旅の行き先はロシア(当時はソビエト連邦で社会主義体制。施設はあまり近代的ではないし、素朴)と、スウェーデン(便利で都会的。百合子さんの目から見ると“つまぁらない”ほど文明化されている)と、デンマーク(やはり、というか、当然というか、ヒッピーが多かったらしい。それと、男二人がポルノ雑誌専門店で盛り上がっていたという印象が強い。規制が少なかったんだろうなあ)。
    いつか読んだものの本に「他人と共同で何かを始める前に(結婚や事業など)、一緒に旅に出てみるといい。旅には不測の事態が付き物で、その時の対応に本当の性格が表れるから」というようなことが書いてあったが。
    ロシアではしおしおと元気がなく、北欧では能動的で、多少気まぐれが出るようになった竹内さんと、あれこれ我儘なくせに一人では何もできない泰淳先生を想像すると、自分だったらこの二人には同行したくないなあ、などと思っちゃうのだった(笑)。
    いかにもインテリらしいお二人に比べて、百合子さんの生命力はすごい。言葉もろくに分からないのに、一人で街を歩き、臆せず人々と会話する。異国の民にじっと見つめられると、“美人だなあ、と思っているのかもしれない。そうだと、いい気持だ。”と考える。なんとも前向きで、たくましい。時々面倒くさい竹内さんと泰淳先生の言動すら、百合子さんの筆にかかると可笑しくて、男の可愛げのように思えてくるのだ。
    まあ、しかし、この本の中で一番素敵だったのは、銭高老人だったけれども。繰り返される「わしゃ、よう知っとる。前からよう知っとった」がいい。癖になります。

  • 周りのものすべてに好奇心あふれる瞳を向ける
    武田百合子のロシア旅行記。
    一緒に旅をする人や旅で出会う人を
    短い言葉でいきいきと描写する才能に舌を巻く。
    銭高老人の愛らしさ、関西弁の柔らかさがいい。

  • 百合子ちゃん本は必ずご飯を食べながら読む。「むっ!?」とか「うわあ…」とかがないから淡々と読める。今回は日記っていうよりも紀行文。今まで以上に百合子ちゃんの文才が惜しみなく発揮されている。ホントにこの人は物書きになるために生まれてきたようなもんだ。更に尊敬しました。

  • 何度読んでいても、飽きることがない。
    終盤は、旅が終わるのが寂しくて、少しずつ読む。

  • 銭高老人という同行者は忘れられそうにありません。

  • 武田百合子さんは本当に文章がうまいと思う。何気ないようでいて、こんなに読ませる文章はなかなかない。その武田さんに出会った最初の本。別の誰かの本に紹介されていて知ったのだと思うのだが、それが何だったのか、残念ながら思い出せない(もしかしたら色川武大さんの何か、かなぁ・・・?)。この本に惹かれて、その後、『富士日記』も読んだ。こちらもすばらしい。

  • 旅行記や日記を読むのが好きです。毎日がいろいろで思うこと考えること感じることが違う。自分のでも面白い、他の人のはもっと面白い。

  • 油断すると兄が持っている本ばかり買っている。
    おいしいご飯をむしゃむしゃと食べるがごとく読了。
    読んでいるあいだ、嬉しくて、終始にやにやしてしまった。

全91件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

武田百合子
一九二五(大正一四)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。五一年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。七七年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、七九年、『犬が星見た――ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。他の作品に、『ことばの食卓』『遊覧日記』『日日雑記』『あの頃――単行本未収録エッセイ集』がある。九三(平成五)年死去。

「2023年 『日日雑記 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

武田百合子の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
リュドミラ ウリ...
梨木 香歩
村上 春樹
桐野 夏生
ボリス ヴィアン
村上 春樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×