- Amazon.co.jp ・本 (340ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122008946
感想・レビュー・書評
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百合子さんの文章はとても簡潔なのに、目の前に描かれた光景がぱっと広がり、そこで繰り広げられる会話の声まで聞こえてくるよう。この旅に同行した気分を味わい、銭高老人の声まねをしたくなった。
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1969年。旅の行き先はロシア(当時はソビエト連邦で社会主義体制。施設はあまり近代的ではないし、素朴)と、スウェーデン(便利で都会的。百合子さんの目から見ると“つまぁらない”ほど文明化されている)と、デンマーク(やはり、というか、当然というか、ヒッピーが多かったらしい。それと、男二人がポルノ雑誌専門店で盛り上がっていたという印象が強い。規制が少なかったんだろうなあ)。
いつか読んだものの本に「他人と共同で何かを始める前に(結婚や事業など)、一緒に旅に出てみるといい。旅には不測の事態が付き物で、その時の対応に本当の性格が表れるから」というようなことが書いてあったが。
ロシアではしおしおと元気がなく、北欧では能動的で、多少気まぐれが出るようになった竹内さんと、あれこれ我儘なくせに一人では何もできない泰淳先生を想像すると、自分だったらこの二人には同行したくないなあ、などと思っちゃうのだった(笑)。
いかにもインテリらしいお二人に比べて、百合子さんの生命力はすごい。言葉もろくに分からないのに、一人で街を歩き、臆せず人々と会話する。異国の民にじっと見つめられると、“美人だなあ、と思っているのかもしれない。そうだと、いい気持だ。”と考える。なんとも前向きで、たくましい。時々面倒くさい竹内さんと泰淳先生の言動すら、百合子さんの筆にかかると可笑しくて、男の可愛げのように思えてくるのだ。
まあ、しかし、この本の中で一番素敵だったのは、銭高老人だったけれども。繰り返される「わしゃ、よう知っとる。前からよう知っとった」がいい。癖になります。 -
周りのものすべてに好奇心あふれる瞳を向ける
武田百合子のロシア旅行記。
一緒に旅をする人や旅で出会う人を
短い言葉でいきいきと描写する才能に舌を巻く。
銭高老人の愛らしさ、関西弁の柔らかさがいい。 -
百合子ちゃん本は必ずご飯を食べながら読む。「むっ!?」とか「うわあ…」とかがないから淡々と読める。今回は日記っていうよりも紀行文。今まで以上に百合子ちゃんの文才が惜しみなく発揮されている。ホントにこの人は物書きになるために生まれてきたようなもんだ。更に尊敬しました。
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何度読んでいても、飽きることがない。
終盤は、旅が終わるのが寂しくて、少しずつ読む。 -
銭高老人という同行者は忘れられそうにありません。
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武田百合子さんは本当に文章がうまいと思う。何気ないようでいて、こんなに読ませる文章はなかなかない。その武田さんに出会った最初の本。別の誰かの本に紹介されていて知ったのだと思うのだが、それが何だったのか、残念ながら思い出せない(もしかしたら色川武大さんの何か、かなぁ・・・?)。この本に惹かれて、その後、『富士日記』も読んだ。こちらもすばらしい。
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旅行記や日記を読むのが好きです。毎日がいろいろで思うこと考えること感じることが違う。自分のでも面白い、他の人のはもっと面白い。
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油断すると兄が持っている本ばかり買っている。
おいしいご飯をむしゃむしゃと食べるがごとく読了。
読んでいるあいだ、嬉しくて、終始にやにやしてしまった。