残像に口紅を (中公文庫 つ 6-14)

著者 :
  • 中央公論新社
3.19
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本棚登録 : 11440
感想 : 723
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122022874

感想・レビュー・書評

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  • 私には全く合わなかった。
    しんどくて早く読み終わりたいとなってしまった。
    途中の性描写が気持ち悪かった。
    最後まで頑張って読んだって感じ。

    帯に「最高に切ない恋愛小説」って書いてたけど
    絶対読んでない人が書いたやん。

  • 語尾に「じゃが」が、出てきた時は笑えた。せっかくふざけた世界なのだから、もう少し漫才やコントのようなどたばた劇であってもよかったとは思うが、この発想を用いた真意は、消え行く言葉の中で制限をつけなければ語れなかった自身の物語の苦しさ、その吐露にあるのではないかと思われた。

  • 世の中から少しずつ文字が消えて行く中で小説を書いていくとどうなるのか、というお話。

    楽しかった。ストーリーがどうとかよりも、やっていることが変わっているのでワクワクした。少しずつ文字が消えると使える文字も減って、周りの様子や主人公の心持ちも変わってゆく。

    主人公がその小説を書いているけれど主人公自身もその世界を体感していて、文字が消えればその影響を受けていくし、余計な記述が飛べば主人公的には現実と思っている部分も飛ぶのが面白かった。

    ある程度までは意外と普通に読める文章が続いていて、でもこれはちゃんと、消えた文字を使わないで表現されているんだなと思うと何だか感動した。

    中盤から後半にかけては、少し飽きてしまった。第三部は怒涛の文字減少。文章もそれに合わせて読みづらくはなったけれど、何となく意味は伝わった。

    消えた文字は脳裏からもなくなるから、主人公はそれを使わないで執筆すればいいだろうけれど、筒井さんの頭の中では消えた文字が消えていないわけだから、使わないようにして執筆するのは大変だっただろうなと思った。
    でも解説(というか分析)を読んだら、消えたあとなのに使われてしまった文字がいくつかあったみたい。でもこの試みがすごいなあと思ったし楽しめたし、それは別に気にならないかな(笑)。

  • 言葉がなければ、名前がつけられていなければそのモノは存在し続けるといった文章が印象的だった。認識の外にあればモノは存在し、消えない。モノに名前を付け、意味を持たせ、ラベリングすることは世界を自分の手中におさめるような手段で心底安心するけれど、逆にいえば狭い枠に押し込めてしまうことでもある。そうした視点はいつの間にかモノを言葉でしか捉えなくなり、モノの本質は無視されていく。言葉をなくすことで自分とモノの関係性がここまで揺らぎ、モノを認識できなくなるとは。その不自由さに新たな世界を期待してしまう自分がいるとは。実験的小説を通して言語表現の可能性を感じた。自分とモノとの関係は各人で育むべきであり、見直すべきであり、モノを表す言葉を自身で作り出すべきものだ。良き小説でした。さすがの文章力で読むのが楽しかった。

  • 世界から一つずつ音が消えていきながら、主人公たちが物語を続けていく、というこのプロットは作者の力量が如実に反映していて、筒井康隆という巨匠の底力を圧倒的に感じる、まさに伝説の書であろう、と。

  • アメトークでの紹介に釣られて読んだ口である。

    世界から文字を1つづつ消して行く、という発想は面白いと思うし、どの様な話の展開になるのか想像もつかなかったので期待感が大きすぎた気がする。

    要するにオチを期待しすぎたのだが、その様な自分にとっては後半は惰性で読み続けた感じであった。

    世界から文字が消えて行くことで、それにより名付けられたモノも世界から消える。
    全てはメタファー、という表現が村上春樹の小説にあった気がするが、モノに名前があるからその名前を構成する音が使えなくなった時にそれが消滅する。
    恐らくは、思想的には昔からかなり掘り下げられた話題なのだろうが、それを思考実験的に行うところに本書の面白さがあるのではないか。読みながら、その様な思考の脇道にそれて行くのも楽しいものであった。
    ソシュールとか、自分は読んだことはないが、そういう予備知識があればさらに楽しめるのではないか。

    特に、妻の粂子の名前を構成する、め、が消えた時が面白かった(そもそも、私は粂子の読み方が冒頭から分からず、しかもそれを調べもしない程度の不真面目な読者です)。粂子は消えても妻としての存在は残るから、半分存在している様な状態になる。しかも、人格としての粂子は消えて、理想化された妻として存在するから、夫たる勝夫にとっては理想的な、妻、となったところである。
    人というのは、相対する人に応じてその役割を変えるもので、これは平野啓一郎氏の分人の思想から学んだものだが、それを思考実験的に表現した様な印象を受けた。
    実際の世界ではその様なことは起こりえないということはわかっているので、シュレディンガーの猫の様な感覚である。つまり、伴侶の存在の50%である粂子が消えて残りの50%の妻だけが存在する状態である。

    そういった、前半の思想的なおもしろさに比べて、後半の官能シーン以降は、表現を主体にした内容に偏ってきている気がして、流して読む程度の自分にはあまり魅力はなかった。

    この作品の前提で、現在のエンターテイメント作家が話を書いたらより面白いものもあるのではないかという気はする。

  • 世界から文字が一つずつ消えていったら、それに関わるモノやコトも忘れられていく。
    家族や家までも忘れていくと喪失感が募っていくが、いよいよ使える文字が1〜2割となると、読解もかなり難解。
    内容云々というより著者の語彙力に注目の作品。

  • 「アメトーーク」読書芸人でカズレーザーが紹介していて気になったので、つい購入。
    この設定はすごい。驚いたのは、一番最初に消えた音が「あ」だったこと。「あ」が消えても、小説が一作成り立つという衝撃。
    しかしこれ、どうやって書いたんだろう。消えた音を出さないようにって、気をつけていても難しくないか?制作過程を知りたくなる小説は初めてだわ。

  • 設定は面白いのに中身が面白くない。。

  • 他には無い斬新な設定を持ったこの小説は、私にはまだ早かったと思いました。むしろ、早いとかではなく私には一生この小説の魅力を全て理解し受け止められないのではと思いました。
    佐治は作家であるからこそ、次々に文字が消えていく中でも巧みに表現していますが、だんだん難解になって行くのがひとつの魅力だと思います。
    普段触れることの無い言葉が沢山あるからこそ、この小説を読んで感じることは他の小説では絶対に味わえないと思います。
    唯一無二の傑作です。ストーリーの面白さでいうとそこまで高くないように感じるので、小説好きの方が最終的に行き着くのはこの小説な気がします。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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