残像に口紅を (中公文庫 つ 6-14)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 11441
感想 : 723
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122022874

感想・レビュー・書評

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  • 『物語を超越した最早研究の一種のよう』

    まさに上記の通り
    読み進めるにつれその思いが強まる
    感嘆というかなんというか、圧巻

    また本の内容と題名がマッチしすぎている

  • 実験小説なのだ。そういう認識で読まなくてはいけない。純粋にストーリーのおもしろさを期待する人には向かない。あと、子供にも(中盤に濃厚なエロスがある)。

    どんなことができるかを作者が模索し、楽しんでいるから、
    『日常の場面でことばとそのことばを使う物事が消えていく困惑と不便』のストーリーだけではなく、
    『文字不足縛りで情事を書くならどう表現するか』
    『さらに言葉を絞った上で短編小説への私観を述べるならどう言葉を使うか』
    『自伝を書くなら〜』
    とさまざまな試みのために場面が度々飛んでしまう。
    内容も、とっ散らかったり、気分が良くない機能不全家族の過去だったりとそんなにはおもしろくないし、爽快感もない。
    これは、文字がなくなっていく中で、「残された文字でこの物事をこんな言い回しにするとは…」とか「本当は何を表現したかったんだ?」と、ひとつひとつを楽しむものなのだと感じた。

    50音表を用意して、文字が消えるたびに消していくと楽しめると思う。
    そうでないと、作者の語彙力が素晴らしすぎて、わりと終盤まで不足なく(何がなくなったかをあまり意識することなく)読めてしまうので、ことさらに内容がつまらなく思えてしまう。

    それにしても、最終盤の最後はさすがの回収ぶりで、少ない文字数で無理やり気味にでも話を進め、見事に畳んだ感動がある。最後、2文字や3文字になったらどうするんだろうという不安を、見事に収めて見せてくれる。
    さすがだった。

    あと、文字がなくなるごとに、その文字を使う動物の絵が切り取られていくのだけれど、切り取られた身体の部分がいちいちその文字のカタカナの形になっている遊び心が気が利いていた。

  • 挑戦としては面白い

  • 筒井先生らしい、超前衛的な作品でした。
    だんだん「言葉が失われていく」と言うテーマで小説を書くという、とんでもない内容に惹かれて読みました。
    自身の仕事に置き換えると、グラフィックデザイン関係の仕事なので、だんだん「使える色が減っていくデザインを創る」みたいなものかと思います。

    最初の数文字はまったく「とある文字が使えない縛り」を感じさせない内容で、実はこっそり使っているのではないかと思えるほど自然な文章です。
    それが段々と使える言葉が減っていき、その中で官能的なシーンの描写もあり、作者自身が挑戦している感が伝わってきました。

    ただ、全体の総括で「小説としての完成度」はそんなに高くなく、一個の読み物としては「うーん、、、」って感じでした。

  • 使える「音」が少なくなるにつれて、人の印象も変わってしまう。
    ことばって不思議だ。

  • 次の展開を知りたくならない程度に面白くなく、好みでもなく、ただ音を消しながら書き上げた技術はすごいな…と思った
    おもしろそうな箇所は短く、興味ないところの描写は長々続くのがつらい

    漢検一級に属する漢字にルビなくて私でも読める漢字にはルビあって基準がよくわからない
    OCR技術がなかったらたぶん序盤で投げてた

  • 凄い……凄い凄いとは紹介されていました。文字が1つずつ消えていく世界でも語彙力があれば物語にはなる。音が使えなくなると、言葉や存在も失われるので言い換える事ができるかどうかです。「言い表せないけど、どことなく窮屈」みたいな感覚だけがあるのが薄っすらこわい。
    カズレーザーさんが紹介されてて知った作品ですが、「幽遊白書」で蔵馬が戦ったバトルの元ネタなのですね。懐かしいな。
    使える音が減って文章に制約がかかって初めて、自分の両親や育ちと向き合って文章に出来るようになるのが皮肉に思えました。好きなように自由に書けるときはかえってこういうの難しい。
    残り20文字くらいになるまでは普通の小説みたいに書けるのほんとすごい。終盤に、固有名詞を「なんとかランド」「大『なんとか』なる戦い」「夏なんとか」「国なんとかという学科」で済ませ始めるのも笑いました。「何かかんか」も。なんかかんかは使う!
    だけどこれは仕方ないなぁ、言い換えられないから。人名やものの名前など、名前を意識してるものは消滅する。
    ラストも、使える文字が無くなったから創造主である作家もビルから転落して消えるのか、創造主が転落するから世界も消えるのか。

    これ単行本で読んでいるのですが、帯封?という袋とじがあったようです。筒井康隆さんのお名前と印が押してある紙がある…単行本全てこうなってたのかな?凝ってます。図書館本は切り取られたお名前の紙を後ろに移動させて貼り付けてありました。単行本はこういうことが出来るので良い、文庫本も勿論良いしそもそも本は良いです。

  • つまらなかった。

    TikTokで評判とかで娘が買ってきたんだけど、難しくて読めないってんで貰って読んだが、何を感じれば良いか分かんない。
    一応読了したから星二つ。

  • すごい。文字がひとつひとつ消えていくって言うのも面白いけど、佐治とか津田が虚構の世界と理解して物語が進んでいく設定も好き。

  • 少しずつ言葉が消えていく世界。
    そんな前評判を聞いて興味を持っていたところカズレーザーや少年ジャンプ連載の西尾維新のマンガなどで本書の話を聞いて尚のこと本書に興味を持った。

    そんな折、偶然本書を読む機会に恵まれたので読んでみた次第。

    さて、肝心の内容をば。
    「実験的小説」とは至る所から聞こえた本書の評価だがまさしくその通りであり…8割くらいまでは「案外なんとかなるものだな」などと感想を抱いた。試みとしては面白いし、文章は読んでいて楽しかった。語彙の豊富さに喜べる人は本書を好きになれるんじゃないかな。

    中盤の情事の場面は面白かった。
    言葉が制限された中での情事の描写は最早そういった要素を取り入れる作品に対するアンチテーゼなのではないかと感じた。その真偽は不明だが、そう思わせるだけのシュールさがあった。

    終盤は韻を踏みまくりでラップみたいだと感じた。尤も、使える音が限られている以上、通常の会話よりも似た音が繰り返される確率は上がる訳だから当然と言えば当然だが…ジョイマンを思い出して個人的にクスリとした。

    主人公がタクシーに追いかけられたあたりから、何のために行動しているかは正直分からなかった。どんどん主人公の言動が過激になったのも音が制限されて思考まで制限されたかのようで、言葉の制限が人を狂気に誘うかのようで、その狂った世界観を好ましく思った。

    「言葉が少しずつ消えるという実験的小説」以上の意味は正直見出せず、シンプルに語彙の好き嫌いで評価が分かれる作品だと思った。主人公の妻と3人の娘がかなり早い段階で消えるなど作為的過ぎると感じたし、結局は作中で言及されるように実験的な要素が強い作品なんだと思った。

    読んでいて楽しかったけど、展開や構成というよりは著者の技量に感心したという面が強かった。この感想も一文字ずつ音が消えていくような構成にしようかと思ったが圧倒的に技量不足だった。やはり本書を実現するのは圧倒的な文才が必要なのだと感じた。

    筒井康隆、恐るべし…

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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