残像に口紅を (中公文庫 つ 6-14)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 11441
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122022874

感想・レビュー・書評

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  • この世から少しずつ文字が減っていく実験的小説。
    「あ」が消えれば「あなた」と呼べなくなり、「ねえ」なんて声を掛けることになる。
    言葉を制限されても物語を紡いでいける、作家の技量に感嘆する。
    「XXが使えないからこの表現なのかな?」と推測するのも楽しかった。

  • TikTokで話題になり今年重版した本書。
    私は3、4年前にTVアメトークで注目された時に購入。ずっと積読してました。

    30年以上前に書かれた実験的SF小説。
    主人公の小説家:佐治勝夫は、筒井先生ご本人でしょう。
    代表作が『夜走り少女』と、自虐してる記述には笑ってしまった…筒井先生は『時をかける少女』が代表作と言われるのはお嫌い⁈

    文字が消えていく…「あ」が消えると妻から「あなた」と呼ばれず「もしもし」と呼びかけられたり。奇想天外で語彙が豊富。ほぼ文字が消えても書き続けられていて驚愕でした。挿絵も楽しい。

  • 難しい内容だった。
    第二部までは、本当に言葉が失われているのか疑うほど、自然な文章だと感じた。言葉が失われていく中で、登場人物たちの言葉が荒々しくなっていく過程が面白い。第三部からは音が失われているのを実感出来た。また、メタ的発言をしている場面があり、面白かった。

  • 実験的小説とはよく言ったもので、よくこんな条件で書き上げたものだと思う。
    作家さんってやはり言葉のプロなのだなぁ。

  • 何より語彙の引き出しが豊富。
    音の制限を加えていく中、「ああ、そんな言い回しがあった」と納得する場面が後半につれ多くなっていった。

    物語の視点としてメタフィクションを取り入れているのも面白い。
    虚構内に存在する主人公が現実である読者の視点を持ち物語を展開していく。読者の空気を読んでプロセスを省いたり、方向転換してくれる。

    粂子としてのパーソナリティは消え去り、妻という概念だけが残りそれを形容していた点で、粂子が消える描写は面白かった。

  • だいぶ昔の本だったので、読み切れるか不安だったけど、そこまで古さを感じず読めた。
    ただやっぱりわからない言葉とか、難しいと感じたのも事実。

    話の内容はすごい面白い!というわけではないけど、文字が消えていって回りくどい表現になったりしてもちゃんと文章になって話として成り立ってちゃんと完結していて、本当にすごいと思う。

  • 徐々に使える文字が消え、それと共にその文字を使った概念まで消えていく世界。
    ストーリーが進むほどに書きにくくなるはずが、使える文字が少ない後半の方が筆者の豊富な語彙力、表現力に関心することが多かった。

    ストーリー重視で本作品を読むと肩透かしを食うかも知れないが知的遊戯小説、実験小説としては秀逸な作品だと思う。

  • 高校時代に読んで、おとなになってからも再読しています。今回で3度目だと記憶しています。
    作家としてのチャレンジとは、このことですよね。
    筒井康隆さんはやっぱりすごい人だー!と何度読んでも思います。最初に読んだ時からは30年程度経過しているのですが、「大人として、作家として成功している人が、自分の扱う文字・文章という世界で文字をどんどん失っていく」というシチュエーションにチャレンジした、ということは本当に衝撃なことでした。
    おとなになった今、読んだ方が、その凄さがわかると思います。
    私も今やっている仕事に、人生に、、、ずっとずっとチャレンジしていきたいなと思います。

  • 以前から読みたいと思っていた。五十音が少しずつ消えていくという斬新で実験的な作品。
    とにかく作者の筒井さんのボキャブラリーの多さに脱帽した。妻も三人の娘のことも名前に含まれる音が消えることで存在は消えてしまうのだが、妻や母、父、娘という単語が消えていない限り主人公はそれらを認識出来るという仕組みで残酷とさえいっても過言ではない。
    音が消えていく中で主人公は作家として官能シーンや檀上で限られた音を駆使してスピーチにチャレンジをする挑戦も。流石に後半には大半の音がなくなったために支離滅裂な感じがしたがそれでも文章になっていてすごいと感服した。

    ※本文も一音を意図的に消失させて記述

  • 現実は虚構であるというという理論のもと、佐治勝治と津田得治が対話する場面から小説ははじまる。
    もしひとつの言語が消滅したとき、惜しまれるのは言語かイメージか。
    佐治の理論においては現実がフィクションであり、小説はメタフィクションである。
    私がこの小説を読んでいる間、ひとつの言語が消滅するごとに私の世界からもひとつずつ言語が消え落ちていく感覚を覚えた。
    ただ私と彼らとの異なる点は、消えた言語やその言語が織り成すイメージを思い出すことができるか否か、ということ。
    何かを失ってしまったという事実はどうしようもなく寂しい。

    次々と言葉が消えていき、表現に制約がある中でここまで物語を紡ぐことが出来るということに感動。
    言語の可能性を感じた。

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著者プロフィール

小説家

「2017年 『現代作家アーカイヴ2』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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