- Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122036444
作品紹介・あらすじ
うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫の頭のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい、世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる…。猫と競馬と、四人の若者のゆっくりと過ぎる奇妙な共同生活。冬の終わりから初夏、そして真夏の、海へ行く日まで。
感想・レビュー・書評
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高校のころに初めて読んでからなぜか数年おきに繰り返し読んでいるけど、この本を読むたびに小説を読むという体験そのものの不思議さみたいなものをすごく意識させられる気がする。
この本を読んでいると、小説を読むという体験は本質的には小説を読んでいる時間にしかなくて、ストーリーや登場人物やテーマは、ある意味では本を読むという時間を構成するひとつの要素に過ぎないのかもしれないということを、つらつらと考えてしまう。ものごとの本質というものをあえて考えるのであれば、小説の本質は小説を読んでいる最中の読者の中で流れる時間そのもので、そういう意味では小説もある種の時間芸術なのかもしれないとかなんとか。僕はプレーンソングを読むたびに、頭の中ではそんなような小説の欄外の、全く別のことを考えているように思う。
そういうような思いを持ってこの本を読んでいるものだから、僕にとってこの本をひとつの小説というより、ある種の処方箋みたいな認識になっていて、つまりそれは単にとても好きな本ということなんだど、とにかく何度も読んでいるしお風呂で読んだりしたものだからページもくたくたになっているし、折を見て新しいのを買おう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
リアリズムへの深い考察と理解。
何気ない日常をつらつらと綴っているが、相当な工夫が施されている。
分解再構築された会話劇は独特の読みづらさもあるが、新鮮な読書体験だった。 -
『書きあぐねている人の小説入門』の中で、筆者が「悲しいことは起きない話にする」「悲しいことが起きそうな気配すら感じさせないように文章を書く」というルールを設定して書いたということに興味を持ち、読んでみることにした。
本当にその通りで、悲しいことも、悲しいことが起きそうな気配もなく、私はとても好きなタイプの小説だと思った。
何か大きな出来事や物語の起伏があるわけではないけど、一行読み進めるごとに次も読みたくなっていくし、とても惹かれるし好みにあう文章で、テンポもよく考え方やものの見方にも共感する。
飾り気やひねくれがなく、自然で素直で冷静でユーモアもある。こんなに心地よい小説があるのかと、この小説に出会ったことにとてもうれしさを感じた。
きっと他の小説も好きだろうと思うから、この著者の作品をもっと読んでみようと思う。 -
話し言葉に近い文章は非常にリアリズムを感じさせるとともに、通常の書き言葉より圧倒的に読みづらく、新鮮な体験でした。読むと穏やかになります。
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なんてことない日常をそのまま描くというのが難解であるのだが、それを見事にやってのけた作品。
はじめは取っ付きにくく、これが本当に日常であるのかと疑いの目をもちながら読んでしまう。それは、私たちが日々暗く悲しいニュースをみているからなのでは?
本や小説を勝手に物語だと思い込み、壮大な起承転結を求め、かつ読む態度を整えなくてはいけないのは、私たちの日常に悪がへばりついて離れないからなのではないか。 -
登場人物が自分の時間を過ごしていく中で、読んでたら時々秒針が聞こえる感じがして、1分がちゃんと体感60秒で過ぎていく感覚が、何かに追われる日常から引き離してくれて、心地よかった。
そして、主人公の句点が中々決まらない感じも身に覚えがあって、私自身も心の中で思ってることって読点しかないよな、と感じた。 -
ゴンタの話がやや自己言及的すぎる気もしたが、その技法によってなんでもないことをなんでもないこととして描いてみせることでなんでもないことのなんでもなくなさが浮かびあがってくる感じがする、このひとはぼくの何億倍も小説というものについて考えているのだなあと思わされる、すごい、猫がたくさん出てきてうれしい
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猫が出てくるようなのでとりあえず読んでみた。実家の本棚にあった本で、誰が選んだものかも不明です。なんかよくわからないけど、全体を外側から眺めている人が主人公なのかな。いったい何の仕事してる人なのか不思議でした。
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振り向いた子猫はとびきり可愛い。うっかり動作を中断してしまったその瞬間の子猫のカラッポがそのまま顔と何よりも真ん丸の瞳にあらわれてしまい世界もつられてうっかり時間の流れるのを忘れてしまったようになる。
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これといったドラマティックな展開のないほのぼのしたストーリー。ドラマがなくても、なにげない日々の生活が幸せだと感じられる話。なんにも起こらなくても、ダラダラしていても、誰かその瞬間を共有することができる人がいると幸せがより大きくなると思った。
あらすじを読むとよく、4人の〜と書いてるけれど、あんまり4人で一緒にいることないし、いっそのこと5人の〜にした方が良いんじゃないかと思う。