- Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122046979
感想・レビュー・書評
-
とっても大切なことを思い出させてくれた。
今、ここに存在していること自体がなんてすばらしいことなんだ、ということ。
男と女は、本質が違うんだということ。
あたりまえに見えることが、本当は一番の奇跡なんだ、ということ。
今読まなかったら、私の心は荒んだままで、大切な実習をやることになっていた。
私の魂が、また救われた。
もう一度、丁寧に読もう。
そして、実習精一杯がんばってこよう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
沖縄で出逢ったかき氷屋さんに憧れ、まりはすっかり寂れてしまった地元の西伊豆で一人かき氷屋を開店する。もう失われた自然や風景の中で、何かを残せるように。やがてそのかき氷屋に、大切なおばあちゃんを亡くし、がめつい親戚たちに何もかもを奪われた火傷を負った少女・はじめがやってくる。まりとはじめ、二人で過ごす夏が、生きる道を探し、意味を見つめる夏が始まった――
結構長い間積読してたんですけどやっと読み。前に読んでたのがつまらなかったのでその分面白かった。と言うか劇的なことがおこるわけではないけどやはり私の中でばななさんは特別なので、どの文章も特別な意味をもって、何らかの啓示をもって私の中に沁み込んでいく。
実は私のまわりではかき氷がすごくブームなのだけど、私自身全然かき氷に興味を抱けてなかった。でもこの作品を読んでかき氷っていいものかもなあ…と思ったので食べに行きたくなった。でもその、すごい有名なお店とか、どこかで紹介されたお店とかじゃなく、この作品のまりちゃんがやってるみたいな、地元に根付いてて、小さくても暖かいお店がいい、そういうお店をやってる人のかき氷が食べたいなあと思った。ばななさんがモデルにした沖縄のかき氷屋さんも食べてみたい。
ばななさんにしてはお金の問題とかつまらない争いとか、人間関係のどろどろした汚いところとか、もちろんうんと薄めた表現だけど、でも結構ストレートに書いてて、なんとなく他の作品よりも説教臭い……というよりは何だろうな、この問題を敵にしてるよ、って感じがすごくした。それだけばななさんが見た、西伊豆が失ったもの、それが大きかったんだろう。でもその中で慎ましく暮らしていく、生活していく、生きていく人が何かを変えるかもしれない。人とか町とかを。そして夢を与えていく、生き続けていく、そういうのが淡々とばななさんらしいスタイルで描かれてて、ああ久々にいいばななさん読んだなあと思った。かなり好きな作品です。ずっと積読しててすいません。今度は一巻読んだきりで積読してる王国シリーズ崩そうかな。 -
何度も読んで大筋は頭に入ってるんだけど、読む度にあ、ここの文章いいなあってはっとさせられる本。
生きてくことは深くて暗いけど、夢に向かう日常を続けていくことには、なんらかの意味があるに違いない。
男は深くて暗いところを探求していくけど、女は日々に喜びを見つけるものらしい。私はちょっと男寄りかなあ。それで帰ってこれなくなって失敗したのかも。
辛い困難な体験をしながら、正面から受け止めて生き続けて行こうとするはじめちゃんの姿に、私も全力で逃げ回るのやめて、そろそろ対決しなきゃいけないなあと勝手に気持ちが前向きになった。自分のありのままの価値を受け入れないと。
それと、なんでもかんでも得しようとはしない人もいるって衝撃だった。なんでもかんでも得しないでも生きてていいのか! -
彼女の小説の真ん中にいる人たちは「ずいぶん純粋だこと」と皮肉られてしまうかもしれないが、別に無垢でおめでたい人たちなのではない。むしろきっぱりとしている。ある種の欲の深さや卑屈さやずる賢さをはっきりと憎み嫌っている。この作品の人たちもそうだ。自分の領分をわきまえない傲慢さに、静かで冷たい眼差しを向けている。ただ、状況の展開で語るのではなく、台詞で言いたいことを言っちゃってる感じ(後半はとくに台詞の分量が多い)。そのせいで小説じゃなくてエッセイ読んでるみたいな気分になった。それって小説としてどうなのだろう?というのが正直な感想。
-
読みたい理由:
尊敬する心のメンターのおすすめだから気になった。物語はシンプルで想定も出来ているが、小説から味わ宇野はなんだか良さそうだ。 -
すーーーーごく好きだった。
見たことも行ったこともない海沿いの町が目の前に現れたような感覚。あとがきにあった作者が訪れつづけている町がモデルなのかな、いつかこんなふうに好きな場所についての話を書けるようになりたいと思った。
それから、読みながらずっと穂村弘と東直子の本にあった文章が浮かんでいた。〈好きな人ができると一緒に海へ行きたくなってしまうのは、なぜなんだろう。お互いの身体の中に眠っている遠い記憶を、一緒に確かめたくなるからではないかと思ったりします。〉
海にも行きたいし、この本も読んでもらいたい。 -
感覚的なものの表現が上手でどの場面も情景が鮮明に浮かんできた 何か忘れていたものを取り戻したような気持ちになった 丁寧に自分を大切にするということを書かれていてそのように生きたいと思った
-
「実はいろんなことってそんなに確かなものじゃない、っていうことに気づいたら苦しすぎるから、あんまり考えないでいられるように、神様は私たちをぼうっとさせる程度の年月はもつような体に作ってくれたのだろうか。
この世の慈悲と無慈悲のバランスは、私たちが想像するには大きすぎる。ただその中で泳いだりびっくりしたり受け入れるしか、できることがないくらいにでっかいみたいだ。」
「お掃除っていうのは、きっとその人がその空間をうんと愛しているという気持ちで清めることなんだなあ、と私はしみじみ思った。形だけやって
とわかってしまうし、木でも人でも動物でも空間でもものでも、大事にされてるものは、すぐにわかる」
「どんないやな人にも平等に夕焼けとか、台風の後の空とかがふんだんにきれいなものを降り注いでくれたの。考えられないくらいきれいな日っていうのが 年に数回あって、光や海や空の色の変化があまりにもすばらしいので誰もが何をもらっているような気持ちになったものよ。」
「男の人はゆるされるかぎり、どこまでも淋しくて暗くて深すぎるところに行くよね。わざわざ探求心なのか、人類のしくみなのかな。」
「しくみって思ったことはある。男の人はどんどん暗くて淋しいほうへ行って、女の人は毎日の中で小さい光を作るものなのかなあって。どっちもあってはじめて人類の車輪が回っていくのかも。」
「倒れるまで仕事するとかいうのは女もあるかもしれないけど、体力の限界まで何かを突き詰めるとかって、そこまで深くならないところでストッパーがかかるよね。ああ、暗くてくだらない、おいしいものでも食べて寝るか、ってすぐ明日になっちゃうよね、女の人はね。根本的に役割がちょっと違うところって、きっとあるんだろうね。 体が違うっていうことは、何か役割が違うということだからなあ。きっと男の人は帰るところがあるからそんな思い切ったことができるのかな。 お母さんとか奥さんとか・・・・・・そういう命綱があるから、どこまでも探求できるんじゃないのかな? 宇宙とか、そういうことを。」
「宇宙は、深く暗く果てがなさそうだし、それが真実っていう感じがするもんね。どっちかが実際に調べにいくとなると、やっぱり男が行くんだろうねえ。」
「だから、命綱は、なるべくしっかりしていて暗すぎず、大地に根をはっているほうがいいんだろうね。それに子供を生むとかっていうのも、よく考えたらものすごく深くて暗いことだから、女の人はその勉強で充分なのかも」
「私たちみたいな、そういう速さそのものについていけない人たちって、この世にけっこうたくさん、いるんです。ただ、ゆっくりとして暮らしていたいだけで」
「人を傷つけて得たものって、きっと小さなしみみたいに人生につきまとうよ。どうせはじめちゃんの家族のように誇り高い人生にはならないから。」
「どれほどのことを彼女の心と体が処理しようとしているかはよくわかった。絶対に受け止めたくないことをふんばって受け止めようとしている」 -
何度も読み返したい