蕎麦屋のしきたり (生活人新書)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140880012

作品紹介・あらすじ

蕎麦屋で酒を呑み、そして食う。それも蕎麦通の流儀で。男なら誰もが憧れる蕎麦屋での粋な作法を、元「有楽町・更科」の四代目店主が、豊富な蘊蓄とともに伝授。老舗ごとにちがう蕎麦の食べ方、酒とつまみの間合いの取り方など、暖簾の向こう側から教える、「上客」の作法。

感想・レビュー・書評

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  • 2019年11月11日読了。

    ●蕎麦屋という商売は400年前以上からあると言われて
    います。


    ●都々逸(どどいつ)
    →俗曲の一種。最も代表的な座敷歌で,典型的な近世歌
    謡調7・7・7・5型をもつ。18世紀末名古屋の熱田
    で流行した潮来(いたこ)節に由来する。天保年間に都々
    逸坊扇歌が江戸の寄席で,新しい曲風で歌って以来普
    及。〈どどいつどいどい,浮世はさくさく〉という囃
    子詞(はやしことば)が,都々逸の名の起りとする説もあ
    る。

    ●「通りすがりの人をお客にする店」
     →現在の“藪”の形態。
     →「生蕎麦」を売る事ができ、「もり」が中心になる。
      「瑞々しい」「ツルッツルッ」としたお蕎麦で、
    細打ち。
     →汁は濃く、辛くしないと蕎麦に合わない。

    ●「町のヒマな人をお客にする」
     →「簡便料理屋風に、良い酒を置き、つまみにも力を
    入れ、ご近所の応接間、寄り合い所」

    ●「町中のお店に出前をする」
     →現在の“砂場”の形態。“更科”も出前が主体。

    ●「道光庵」は初め浅草にあり、後に世田谷に引っ越しま
    したが、「蕎麦山門入不許」という石碑が掘り出され、
    再度有名になりました。
    なにしろ、蕎麦屋の「庵号」の元祖ですから。

    ●ご近所が引っ越していって、あとに代わりの人が来ると
    「引っ越し蕎麦」が欠かせません。向こう三軒両隣に蕎
    麦を配り「細く、長いお付き合い」をお願いします。
    これが、昭和中期まで普通の習慣でした。

    ●本来「地酒」というのはその土地の酒のはずです。
    そうであれば「東京の地酒」は「澤乃井」くらいでしょ
    う。
    現在の「地酒」は「重宝の酒」という意味で、江戸では
    「本場」ものはやはり「灘」になります。ですから、
    古い蕎麦屋は「灘」しかおいていないのです。

    ●そもそも焼酎は、中世ヨーロッパで流行った
    「錬金術士」が何でも「蒸留、乾留」してみたのが始まり
    でたまたま葡萄酒の搾り粕を「アランビック(蒸留のア
    ラビア語)」したら大変よく酔っ払えるものができ〜。
    焼酎の日本渡来は、琉球が本命です。

    ●神田の「まつや」さんは、この「小判焼き」を店売りし
    て大変な評判になりました。
    「玉子焼きを焼くのに、三人手を取られてしまう」ので、
    現在の「まつや」さんではご予約制の品になっておりま
    す。その他、代表的なつまみは、「板わさ」「わさび
    芋」「焼き海苔」といったところでしょう。

    ●蕎麦は「穀物」ではないことになっています。
    これも僧侶の心願で「木食」になった人は、米、麦、
    粟、豆、稗を食べませんが、蕎麦はこの戒律で禁止され
    ている食物に含まれておらず、それで僧侶と蕎麦とは
    縁が大変深いのです。

    ●蕎麦屋の腕がはっきりわかるもの…「玉子とじ」
    まず、そのお店の「出し汁を引く技術」が問われます。
    肉類ですと、種から出し出るのでわからなくなります。
    ところが、玉子では、汁を沸騰させると出し気は飛ぶだ
    けで補給がありません、最初から、しっかりと出し汁が
    利いていなくてはいけないのです。
    次に、玉子とじの汁は「辛濃い目」の味でないと美味し
    く食べられず水っぽくなります。ところが、玉子とじ用
    の汁を別に作りませんし煮詰めるわけにもいきません。
    どうするかと言うと、「振り物」という、蕎麦を湯通し
    して熱くし汁をかけても冷めないための工程があり、
    その時「振り笊」という目の詰まった笊を使いますので
    やり方次第で湯を残したり、振り切ったりできるので
    す。
    その次には玉子の幕が「糸のようにつまみ上げられる」
    玉子の筋でできていなくてはいけないのです。板のよう
    なものは落第です。
    それには玉子の溶き方が問題で、かき回しすぎて泡がで
    きてはだめですし自身がよく切れていないと、どぼりと
    飛び込むという厄介さがあります。
    玉子とじの玉子を流し込む時には「片口」で溶き、汁が
    煮立ってきたら菜箸でぐるぐるといきおいよく渦巻きに
    かき回し、口にその菜箸をあてがい、その箸の先を伝わ
    ってかき回されて渦を巻いている沸いた汁のふちの方に
    糸を引くように流し込むと汁におちた玉子の糸は一瞬の
    うちに煮え、玉子の糸が中心に集まって幕をこしらえて
    行くのです。

    ●「南蛮」という言葉で論争が起こっています。
    一つの説は、「福翁自伝」にも出てくる「難波煮」から
    きたものだというのですが「難波煮」の記事以前から
    「鴨南蛮」はあります。
    「葱が入ったものを南蛮という」という説、
    「葱の油で炒めて煮付けたものを南蛮という」
    という説、「葱を焼かなくては南蛮ではない」という説
    などあり、あまりやかましいので、昔の「藪」の旦那は
    「鴨蕎麦」とメニューに書いたそうです。

    ●「天婦羅蕎麦」は蕎麦屋の代表的な「種物」ですが
    鴨南蛮や玉子とじが発売以来150年間ほとんど変わら
    ぬ形であるのに対し、このくらい格好や売り方が変わっ
    たものはありません。
    〜江戸で魚のひらきに小麦粉の衣をつけて揚げた「天婦
    羅」ができたのは、1750年以降のことだそうで、
    その名前の由来はポルトガルで揚げ物のことを
    「テンポラ」というからだとか、「天竺からぶらっと来た
    から」だとか色々言われておりますが、江戸では屋台の
    天婦羅屋もあったそうで、庶民の食べ物からだんだん高
    級化しました。

    ●職人のいましめに「煮え前は恥、蕎麦の煮すぎは恥じゃ
    あない」というのがあります。
    「生煮え」の蕎麦を出すのは恥なのです。

    ●一番多いのが「やぶ」の付く暖簾で約300軒。
    次が「更科」で160軒。
    3位が「長寿」、4位が「大むら」、5位が「満留賀」
    6位が「朝日」と「松月」、8位が「増田屋」
    9位が「淺野屋」、10位が「尾張屋」で、
    「藪」「更科」と並び称される「砂場」は65軒で11位。

    →砂場の暖簾が早くから「登録商標」にされていたから
    で、誰でも付けられる暖簾名ではないから。

  • こんな風に楽しみたい

  • ちょっと専門用語にフォローが付いていなかったりと
    問題のある本となっています。
    なので、落語とか知らない人にはつらいかも。

    本編も用語が結構頻発するので
    読み進めるのには手こずります。
    ですが、なるほど、と思える項目も
    多いことは確かです。

    蕎麦屋って大変なものですね。

  • 「煮え前は恥、蕎麦の煮すぎは恥じゃあない」

    蕎麦屋の歴史、店の構造、酒、つまみ、上客のふるまいから、蕎麦の製粉からゆで、つけ汁に至るまで、まさしく伝統を伝承している著者(有楽町更科四代目)が簡潔明瞭に講釈してくれる。

    そして伝統を守る大切さ。
    「幸いに『更科』の汁を合わせる秘伝は一人に伝えられました。そして、『後で、お前さんより20歳若い、しっかりした者に伝えておいておくれ』と頼みました。技術というものは、20年に1度復習しておけば伝わります。だから、伊勢神宮でも20年ごとにお建て替えをするのでしょう。」

    蕎麦屋にますます関心が深まった。

  • 蕎麦屋の旦那が語る、そばの話、あれこれ。「うんちく」と言ってしまえばそれまでだけれど、つゆの作り方や天ぷらの衣の種類とその衣にする合理的な理由、業界の専門用語から「天もり」の由来など、身近な食材のさまざまなことが分かって面白い。残業するたびにお世話になる「駅そば」も良し悪しを分かって食べると一味違う(
    かも?!)。

  • [ 内容 ]
    蕎麦屋で酒を呑み、そして食う。
    それも蕎麦通の流儀で。
    男なら誰もが憧れる蕎麦屋での粋な作法を、元「有楽町・更科」の四代目店主が、豊富な蘊蓄とともに伝授。
    老舗ごとにちがう蕎麦の食べ方、酒とつまみの間合いの取り方など、暖簾の向こう側から教える、「上客」の作法。

    [ 目次 ]
    なぜ駅前に蕎麦屋があるか
    蕎麦屋にも浮世の風が身にしみる
    出前とおやどで暖簾の棲み分け
    旦那の一日
    おかみさんのお小遣い
    通し言葉
    時代で変わる店造り
    調理場の配置
    繁盛の歳時と催事
    客のトイチ、ハイチ〔ほか〕

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    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 12月9日読了。元「有楽町・更科」の四代目店主という著者が自身の知識に加え先代や上客の老人などに聞いて回った、蕎麦と蕎麦屋と店主とその客に関する様々な薀蓄集。「てやんでえ、これが通の食べ方ってもんでえ」と知ったかぶりをして威張るための知識ではなく、「何故蕎麦屋では酒を出すのか?」「蕎麦屋の屋号にはどんな種類があり、どんな歴史があるのか?」というシンプルだけど意外と知らない、素朴な疑問に多く答えてくれる本と感じる。「お客様がメシャガる」といった江戸弁風の言葉遣いのリズムも読んでいて心地よい。蕎麦は客が好きなように食べるものであり、客の好みに合わせてベストな蕎麦を出すのが蕎麦屋のテクニック、ということなのだな。蕎麦アレルギーじゃなくて良かった!

  • 蕎麦屋はめんどくさい。が、そのめんどくささが良い

  • 4/19

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著者プロフィール

日本大学法学部教授

「2020年 『不法行為法』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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