樹木たちの知られざる生活: 森林管理官が聴いた森の声 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 早川書房 (2018年11月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784150505318
作品紹介・あらすじ
樹木は子供を教育し、会話し、ときに助け合う。ドイツの森林管理官が長年の経験と科学的知見をもとに語る、まったく新しい森の姿
感想・レビュー・書評
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科学的な正確性のほどはわからないが、多くの引用を明示する姿勢は好感が持てるし、何より木々への愛情が感じられる
たまたま花見の前に読んだために花よりも桜の枝ぶりに目が行くようになった
木々への見方が格段に深くなるそんな素晴らしい本であった詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
植物が会話したり、友情があったり。本書を読むと、身近な木々の言葉を聞いてみたくなる。
「謎めいた水輸送」、木が根からどうやって葉まで吸い上げているかは、わかってないなんて!たしかに、維管束を習ったときに、どういう力って運んでいるかは、説明なかったなぁと、思い返してみたり。 -
自分の森林についての知識の浅さに驚くくらい初めて知ることが沢山あった
木々が会話をしたり同種の木と助け合ったりしているなんて思いもしなかった。
また現在多くの国で行われている植林や街中の緑化運動は一見とても良いことに見えるけど実際は本物の原生林とは環境が違いすぎて、それらの木々は原生林の木々と比べて成長にかなりの差が出ることも驚いた。
人間は歴史の中で最も簡単に木々を伐採し農地や街を拡げてきたけど、それを元に戻すのは単に木を植えればいいだけでなくて、とてつもない時間がかかるものなんだなと実感……。
日常でよく使う木製のものといえば私の中では紙とか割り箸とかなんだけど、なるべく再生紙などのリサイクル品を使ったり、無駄遣いを無くそうと思えた。
日本はドイツとかなり紀行が異なるから森に足を踏み入れるハードルが高いけど、この本でよく出てきた木たちを実際に見に行ってみたくなった。 -
木同士が香りで会話をするなんて知らなかった。虫や菌の侵略により身の危険を感じると葉の成分を変化させて身を守り、さらに香りや根のネットワークを使って周りの仲間に危険を知らせることまで出来るなんて想像もしなかった。木は本当に生きているし、人間が思っている以上に仲間と繋がっている。そんな仲間からはぐれた街路樹をストリートチルドレンと名付ける著者のセンスには脱帽である。木に関する様々な知識を、著者の木への愛を持って科学的に教えてくれる良書。
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森林エコロジーの知見とともに、森林を少し擬人化し分かりやすく伝えてくれる。原生林は考えられているより奥深い、植物も道徳的に扱うべきだと訴える。
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【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/566568 -
まず表紙が素敵。
内容にぴったりだ。
普段見掛けることの多い木々達の話なので想像しやすく、美しい緑色の葉や、力強い幹の茶色、シダーウッドのような香りを思い浮かべながら、気持ちよく読んだ。
想像の中ではミツバチも飛び、キノコや苔が生え、枝を揺らす風も吹いていた。
ノンフィクションではあるけれど、著者が見せてくれる世界に癒された。
なんて理に叶った生き方なんだろう。
ブナもナラも、その他の樹木も、みな長所短所を併せ持ち、工夫しながら、自然界の公平な間引きを受けて生きている。
人類も、少しは彼ら樹木の生き方を見倣ったら良いのに。。。
本書が世界的ベストセラーとなっているのが分かる。
全人類が本書を読むべきとさえ思う。
読み初めて直ぐに、"社会の真の価値は、そのなかのもっとも弱いメンバーをいかに守るかによって決まる"との職人たちの言葉に心打たれた。
生態系のルールは残酷で厳しいこともあるけれど、彼ら樹木同士の関係性は基本公平であり、成長もゆっくりだ。
地球上の生命の新参者である人類は、傍若無人で急ぎすぎているように思えた。
けれど木々たちは、ただゆったりのんびりなわけではない。
公平に助け合い、工夫をし、他の生き物を上手く使い、バランスよく、"過ぎないように"している。
そのルールを守れなかった木々、縄張り争いに破れた木々、それらは傷を負い朽ちてゆく。
それらはまるで、啓発本を読んでいるかのような印象だった。
著者の森への愛情が、木々を擬人化させ、読者である私にも伝わってきたのかもしれない。
森は生きている。
「『森は自分の居場所を自分で理想に近づける』。私たち林業専門家がよく口にする言葉だ。」
木々たちは根や菌糸を通じて情報を伝達し、水分や栄養までも補い合いながら生きている。
それも数百年の単位で。
木々は経験から学習もするのだという。
「これは子どもたちのためを思った教育なのだ。たとえとして"教育"と言っているのではない。林業を営むものは、昔からこの"教育"という言葉を使っている。」
時間をかけて繁殖し、数百年かけて育ち、ゆっくり朽ちてゆく。
私は大きな森に足を踏み入れたことが無い分、その時の刻みに、とてつもなく壮大なものを感じた。
そしてとても愛おしい。
「時間がかかるからといって、生き物として価値が低いということにはならないはずだ。植物と動物にたくさんの共通点があることが証明されれば、私たち人間の植物に対する態度がより思いやりのあるものになるのではないかと、私は期待している。」
読み終えたときに思ったのは、改めて、この地球上の生命体は種別ごとに独立して生きているわけではないということ。
人類だけが心地よく暮らせることばかりを優先していると、回り回って皺寄せが返ってくる。
そんなこと分かっていると思われるかもしれない。
でも手に取りやすい厚みの文庫に、こんなに驚きと共感が詰まっている。
少なくとも私には、知らないことばかりだった。
本書は森林浴をしているかのような心地よさも味合わせてくれた。
著者には森への愛と敬意が溢れていたし、長谷川圭さんの訳も読みやすい。
一冊を通して気持ちよく、森の声を聴くことが出来たように思う。
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山歩きをする度に、樹木がまるで意思があるかの様に見えて『夜になると動いているのではないか』と想像を膨らませている私にとって、スーッと入ってくる納得の内容で、ワクワクしながら読んでいます。ただ文の表現が分かりにくくて疲れてしまうので、他の本と同時進行で少しづつ読み進めているところです。