第三の嘘 (ハヤカワepi文庫 ク 2-3)

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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151200168

感想・レビュー・書評

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    悪童日記 三部作の完結(「悪童日記」→「ふたりの証拠」→「第三の嘘」)

    『ベルリンの壁の崩壊後、双子の一人が何十年ぶりかに、子どもの頃の思い出の小さな町に戻ってきた。彼は少年時代を思い返しながら、町をさまよい、ずっと以前に別れたままの兄弟をさがし求める。双子の兄弟がついに再会を果たしたとき、明かされる真実と嘘とは? 『悪童日記』にはじまる奇跡の三部作の完結篇。 』(「Hayakawa Online」サイトより▽)
    https://www.hayakawa-online.co.jp/product/books/310016.html

    冒頭
    『私は今、子供の頃の思い出の小さな町で、投獄されている。
    投獄されているといっても、ここは本物の刑務所ではない。市警察の建物の中の監房なのだ。そしてこの建物自体も、この町のほかの家々と似たりよったりの一軒の家、二階建ての家でしかない。』


    原書名:『Le troisième mensonge』(英語版:『The Third Lie』)
    著者:アゴタ・クリストフ (Ágota Kristóf)
    訳者:堀 茂樹
    出版社 ‏: ‎早川書房
    文庫 ‏: ‎266ページ
    ISBN : ‎9784151200168

  • ついに悪童シリーズも完結。久々のハイプに注文した本の到着を今か今かと待ちわびた。手にしてからは一気読み。本作の意外な展開に、そうきたか!とまたしても唸ってしまった。
    しかしこのアゴタ・クリストフという小説家は引き出しが広い。語り口も1作、2作目とガラッと変わっている。自分の展開予想もいい意味で裏切られた。
    自分の中では1作目の『悪童日記』は星6だった。それより少しパンチがなかったけれど、一連の作品ということで星5にした。

  • 題名通り。そもそも「物語」で、語る人を信じ切る、というのが、実はなかなか危ないことなのかもしれないなあと思わせた作品です。

    これまで読んできた小説でも異質な作品。
    どれもが「嘘」と思えば、読んでいることそのものがばかばかしく思えても仕方がないのに、なぜかひかれて読み続けてしまう。物語を続ければ続けるほど、過去の作品の存在が揺らぎ、奥行きを増していくという構成はお見事。
    語られることそのものは奇抜でもなんでもなく、戦争という時代背景や、児童虐待、障がい者を扱ったほかの作品と同じくまっとうな人間の苦悩や悲しみを淡々と描写しています。ですが、その体験を語る人がどのように語るのか、という点がこれまで読んできた作品にはないものでした。

    三作目では、二作目で同一人物ではないか?という終着点を引き継ぎ、「クラウス」が自分の過去を語り始めるのですが、「悪童日記」や「ふたりの証拠」が別の視点で語られます。このままリュカとクラウスは一人の人物の空想だったのだろうか?と思わせての第二部です。

    自分自身が見ている世界、語る過去が「真実」といえる証拠はどこにあるのだろうか?
    この本を読んでいて思ったのは、過去は過ぎ去って取り戻せないものだということではなく、人の記憶の中でどのようにも変化しうるということでした。
    また、語る言葉によっても、その在り方は変わってしまう。

    とても面白い作品だった。こんな作品を他にも読みたいものだけれど、おそらく唯一無二の作品なので、また折を見て読み返して新しい発見をしたいものです。

  • 一体何だったんだこの三部作は…
    今まで私は何を読んでいたんだ…というのが正直な感想。

    一応、今までの話の種明かし的なことと、この物語の全体の構造のことは話されていたけど、それすら本当のことかどうか怪しい(確かめる術なんてあるわけないけれど…)

    私自身、結局リュカとクラウスって何者だったの⁈と問い詰めてみたいと思うほど作品に登場する架空の人物達にだいぶのめり込んでいる気がする。もしかすると、どこかの時代にこの二人は本当に存在していて、その時代を生きていたのではないか…という錯覚に陥るほどの存在感とリアリティ。

    フィクションということを忘れてしまうほどついついのめり込んでしまうのも、作者の幼少期の体験や記憶が強く作品に反映されていたからだろうか……。

    ラストはゾッとするような後味を残していて少し寂しい雰囲気。
    もう一度読み返したらまた違う感想が書けそうな気もする。

  • いやあの……前巻までのアレは一体…………

    これはこれでものすごく悲しく、悲しいんだけど、なんというか『悪童日記』を読んだときの胸の高鳴りに対して、(そりゃこんなクールなのはフィクションだよ)と思った自分を後悔するというか…その通り過ぎて…。
    ただ三部作読んで後悔するかというとそれはない。
    リュカとクラウスが私は好きだ。

  • 「悪童日記」にはじまる連作の最後である「第三の嘘」を読み終わる。

    一体この作品の中の何が真実で、何が嘘だったのか。
    長い作品を通して、真実はひとつもなかったようにも感じられる。
    双子が存在していたことさえ疑わしい。

    描かれているひとのうち、自分の人生を振り返って、ああ、幸せな人生だったと思えるひとはいたのだろうか。
    誰もが自分の人生を、自分のために自分の思うようには生きられなかった。
    そんなこと当たり前だと言われるかもしれないが、それを受け入れて生きていくことと受け入れられずに流されてしまうこととは大きな違いがある。

    連作であって時間はきちんと流れているのに、時系列では描かれていない。
    日記として幼少期を描いた「悪童日記」、リュカ側から描かれた「ふたりの証拠」、クラウス側から描かれた「第三の嘘」、とこう書くとスッキリしている感じがするが、本作はこんな簡単な話ではなかった。
    同じ話が、関わるひとの立場が異なって全く違って見えるという話でもない。
    どこまでが本当なのか、確かなものが掴めない。

    でも、とても魅力のある作品であることは間違いない。
    とても長い作品であるのに、読みやすい。
    読みやすい作品であるのに、読み進めることが辛い。
    辛い作品であるのに、先が気になってしまう。
    不思議な思いに捉われる作品だった。

    きっと読者は何度も読み返すに違いない。
    勿論、わたしもそのひとりだ。

  • まちがえちゃった。こちらはまだ読んでいない。どうやって消すんだろう。

    以前間違えて登録したが、ちゃんと本当に読んだ。

    あぁ、私の思い描いていた世界が、人物が、綻んでいく剥がれていく…そんな失望を感じた。そこに残った真実を見つめてみると、なんて悲壮。戦争の苦労は確かにあるが、彼らを壊したものはそれ以前の問題だったということが惨めで虚しかった。

    一作目二作目で語られていた人物、やり取りは壮絶なほど不幸だが、確かに完璧すぎたのだ。不具は他人に押し付けて、うっとりするような不幸だったのだ。

    拠り所になりそうなところが不幸の源でもある。その愛を頼りたいのに頼るわけにはいかない。どんどん物語は人間らしくなっていって、でもその方が惨めだなんて。

    三作目まで読んで良かった。

  • 二人の証拠のラストで、エエェ!
    てなった後の本作。
    悪童日記や二人の証拠であった若々しさ等はなく、
    老いたリュカとクラウスの話。
    全体を通じ、悲哀に満ちていて、なんとも言えない気分に。
    内容が悲哀に満ちているのもそうだが、一人称の私が、リュカとクラウスどっちがどっち?てなることもあったのでもう一度読みたいと思う。
    間違いなく名作。

  • 「悪童日記」「ふたりの証拠」と3冊一気読みして、読後ゾワッとした。時系列、人物描写、思い出して辻褄合わせようとしてもグルグル合いそうで合わない、繋がらない。再読しても完全に理解できるかどうか…。作者の闇を感じたのは私だけかな。


  • 1.おすすめする人
    →過去の戦争に興味がある、前2作を読んだ

    2.感想
    →前2作を読んで、途中でやめようと思ったが、
     この3作目も読んでよかった。
     やっと全ての辻褄と意味が分かる。
     伏線の回収の仕方が素晴らしい。
     好みのレベルで★をつけているため★3だが、
     作品的にはとっても意味深いものだと思う。

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著者プロフィール

1935年オーストリアとの国境に近い、ハンガリーの村に生まれる。1956年ハンガリー動乱の折、乳飲み子を抱いて夫と共に祖国を脱出、難民としてスイスに亡命する。スイスのヌーシャテル州(フランス語圏)に定住し、時計工場で働きながらフランス語を習得する。みずから持ち込んだ原稿がパリの大手出版社スイユで歓迎され、1986年『悪童日記』でデビュー。意外性のある独創的な傑作だと一躍脚光を浴び、40以上の言語に訳されて世界的大ベストセラーとなった。つづく『ふたりの証拠』『第三の嘘』で三部作を完結させる。作品は他に『昨日』、戯曲集『怪物』『伝染病』『どちらでもいい』など。2011年没。

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