NかMか (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

  • 早川書房
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感想 : 61
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784151300486

感想・レビュー・書評

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  • クリスティーらしいスパイ・スリラー……
    というのは珍しいんです、案外と。

    いつものスパイ・スリラーでは
    大風呂敷を広げすぎる彼女ですが、
    今回は舞台を「閉じられた環」に限定。

    (一見平凡な下宿≪無憂荘≫ に潜む
     大物スパイは誰だ?というもの)

    おしゃべりの裏のサスペンス、
    うまいこと読者の目をそらすスケープゴートたち、
    持ち味をうまく発揮できました。
    なんでほかのスパイ・スリラーでは
    この手を使わなかったのか、不思議でなりません。

    とにかく会話がうまい。
    「まあまあ、主人がこの話を聞いたらなんと申しますやら」
    「ヒルという姓は三ページにわたっていてよ」
    そして「があがあがちょうのお出ましだ!」

    クリスティーの単純な愛国心はよく批判の種になりますが、
    書かれたのは戦争中ですから、割り引いて考えます。
    敵は日本じゃなくドイツなんであまり複雑な感情は湧かないし。
    (本当はそれじゃいけないんだろうけど……)

    「敵国人のスパイには敬意を払うが、
    祖国を売る裏切り者は軽蔑する」
    というのが、作者の基本的な立場。
    グリーンの『ヒューマン・ファクター』のような境地は
    分からなかっただろうな、と思うのですが、
    意外とそうでもなかったかもしれない……と、
    これはまた別の話。

    そして、本書はトミーとタペンスの
    「四十八歳の抵抗」でもあります。
    (トミーは46歳だけど)
    二人を動かすのは、若い者に負けてたまるか、という対抗心。
    アガサ・ミラー嬢も、もう五十代だしね。実感こもってます。
    しかしアイルランド独立運動への無理解はひどいね。

    成人した二人の子供、デリクとデボラも登場。
    (十二年前にはまだお腹の中にいたはずだけど…)
    この時点では若者に信頼を寄せています。

    旧版は(T)さんの匿名解説。
    夫妻探偵の嚆矢は、クイーンによると
    (と、わざわざ断っている)
    マクドネル・ボトキンのポール・ベックとドーラ・マール。
    30年代のアメリカで夫婦探偵が増えたのは
    ハメット原作の映画「影の男」が大ヒットしたから。
    天才的な名探偵には独身が多いが、
    地道な捜査活動には暖かい家庭が必要なのだろう――。
    簡にして要を得た夫婦探偵の説明。
    『ノース夫妻殺人に会う』とか『黄色いスミレ』とか、
    聞いたこともない本が次々に出てきて面白い。

    新版は渡辺武信さんの解説。
    前半は「トリックではなくプロット重視だからいい」というもの。
    つまりクイーンやカーをトリック派とみなしているわけですが、
    でもクイーンも中期からは物語的要素が強くなるし、
    カーの語り口のうまさは、瀬戸川猛資さんが熱弁していたところ。
    この手の比較は、ちょっと単純すぎるんじゃないでしょうか。
    後半はあらすじ。
    旧版の勝ちです。

  • トミー&タンペス・シリーズ

    情報機関員が残したダイイングメッセージ。「NかMか」「サン・スージー」の言葉。『サンスーシー』という名の屋敷に集まる人々。旧友の依頼で『サンスーシー』に潜入したトミー。トミーを出し抜き「サンスーシー」にやってきたタンペス。戦争中スパイの潜入している「サンスーシー」。「密輸団の巣窟」を買ったドイツ人のスパイ容疑。逮捕され売りに出された「密輸団の巣窟」を購入したヘイドック海軍中佐。スパイ容疑のかかるドイツ人青年カール。誘拐されたスロップ夫人の娘・ベティ。犯人の女を射殺したスロップ夫人。トミーとタンペスの娘デリラに好意を寄せる青年トニー登場。スパイの正体をつかんだトミーの監禁。

     2011年1月21日読了

  • トミー&タペンスシリーズ大好き!\(^o^)/
    かっこいいかっこいい!

  • トミーとタペンスが下宿に潜入し、敵国のスパイを探り出す冒険もの。
    この二人の活躍する話では、謎ときは偶然によるものが多く、推理はいまいち。

  • トミー&タペンスの夫婦探偵が活躍する、冒険ミステリー小説。
    わたしはクリスティの冒険小説が大好きで、この作品もしかり。
    終盤が唐突なのがクリスティの常ですが、そんなところもわたしは好きです。
    わたしはどうやらスローな世界の人間らしく、昨今の息もつかせぬミステリーより、ツッコミどころがあってものんびり解決にむかう一昔前のミステリーが好ましいのです。
    列車の旅や船の旅、紅茶を飲みながらのおしゃべりや噂話・・・
    そんなイギリスの雰囲気も大好物です。

  • 「そうですわ。あたしは愛国心が大嫌い。おわかりになって?なんでもかんでも、祖国、祖国、祖国!祖国を裏切るとか――祖国のために死ぬとか――祖国に奉仕するとか。そもそもなぜ人間にとって、祖国がそんなにたいせつなんでしょう!」

    トミー&タペンス、おしどりスパイ夫婦作品。
    第二次世界大戦をバックに、上記のような台詞まで書いてしまうクリスティに脱帽。
    不穏な空気と、ウィットに富んだユーモアとが非常に上手く掛け合わさっていることにも驚き。

    最近はクリスティの本を読んでも、もう全員を疑いたくなっちゃうので、最後にこの人が犯人だって言われても、どこか納得というか、そんなびっくりするほどの驚きはなかったなー。
    それでも、面白かった!

    【11/23読了・初読・大学図書館】

  • 『おしどり探偵』を読んでいなかったので、『秘密機関』からトミーとタペンスがいきなり年をとってしまったのに驚いた。^_^; ラスト、何故絵本がベッドの下にあったのか、よくわからなかった。プリューデンスのニックネームがどうしてタペンスなのか、気になる…『おしどり探偵』を読んだらわかるんだろうか…。(2008-03-15L)

  • トミーとタペンスもの。第二次世界大戦中の話で、スパイものとでもいうのかな。秘密機関よりはドキドキしなかったかなぁ……でも面白い。 ちなみに、ドイツが好きな人は読まないほうがいいと思われる。

  • 情報部からナチの大物スパイ“NとM”の正体を秘密裡に探るという任務を帯びたトミーは、妻のタペンスには内緒で任地へと赴いた。だが、タペンスとて一筋縄でいく女ではない。騙されたふりをして先回り。かくして二人は、大規模なナチ・スパイ網のまっただなかへと飛びこむことに…スリル満点の冒険ミステリ

  • 何となく格好いいからアガサ・クリスティを読む。そう考えていた高校生の頃。ポワロ、マープル婦人などの有名な登場人物がいながら、あえてトミーとタペンスの物語。知名度は低いですがシリーズ5作すべて読みました。

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