どーなつ (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

著者 :
  • 早川書房
3.28
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本棚登録 : 128
感想 : 21
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784152084101

作品紹介・あらすじ

父の迎えを待ちながらピンボール・マシンで遊んだデパート屋上の夕暮れ、火星に雨を降らせようとした田宮さんに恋していたころ、そして、どことも知れぬ異星で電気熊に乗りこんで戦った日々…そんなの想い出には何かが足りなくて、何かが多すぎる。いったいはどこから来て、そもそも今どこにいるのだろう?-日本SF大賞受賞の著者が描く、どこかなつかしくて、せつなく、そしてむなしい物語たちの曖昧な記憶。

感想・レビュー・書評

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  • ゲーム、熊、アメフラシ、火星、異星人、戦争、田宮麻美、上方語……無軌道なモチーフが入れ替わり立ち替わりして、統一設定のあるようなないようなの記憶をつなぎ合わせていく連作短編。

    この物語には何人もの「おれ」が出てくると考えた方がよい。その一とその十のおれ、その二とその五とその七とその八のおれ、その九のおれ、その四のおれ、その六とその十のぼく……この区分が正しいのかもわからない。そしてこれらが多分同じおれを構成している。記憶が混線しているのだが、そのもつれが紐解かれることはない。一番現実らしい戦争の話が現れるその九でこういうことかと思いきや、その十ではまたまた違う話になる。そこら辺はひょっとしたらもっと読み込めば解けるのかもしれないけれど、多大な労力が必要そうだ。

    もっと頑張って読めばもっと楽しいのだろうが、この抒情的な無軌道さを楽しむのも十分に心地よいと感じた。

  • 不思議な世界のお話だった
    なんとなく圧迫間のある、そしてなんだかふわふわした世界。
    一人称で話が進んでいくが、誰視点かがよく分からず混乱した。
    そのため、最後まで読んでみてもなにがなんだかよく分からなかった。

  •  僕は北野勇作という作家が好きだ。
     とても万人に受けるタイプの作家ではない。独特な世界で独特な文章を書く。それはいわゆる「普通」の小説に慣れている人には受け付けないタイプの小説かもしれない。多少は本を読むほうだと思っている僕でさえ、ちょっと戸惑ってしまう位独特なのだ。

     でも、そこには不思議な、ゆらゆらして、ぐらぐらして、ふらふらして、くらくらするような世界があって、それがとても不安で心地いい。
     ストーリーはあるけど、ない。ないけど、ある。そんな不安定な小説を描く。

     そう、北野勇作の小説は何故か不安定で切ない。読んだ後に何かすがるものを探したくなってしまう。何か大切なものを失くしたような気がするんだけど、それが何なのか思い出せない。そんな時の感覚に似ているかもしれない。
     彼の小説の中で『どーなつ』という小説がいちばん好きだ。ドーナツというのは確かに彼の世界を端的に表していると思うのだ。
     そう、ドーナツの真ん中には穴がある。穴というのは「無」だ。ドーナツの真ん中には「無」が居座っている。周囲を食べる前には確かに「無」が存在していたのに、周囲を食べてしまうと穴はなくなってしまう。「無」など最初から「無かった」かのように。
     そんな不安定な存在感は、どうしてだろう、触れているとちょっと寂しくて、ちょっと哀しくなってしまうのだ。
     そしてそれが文章ではなく感覚として描かれている、という衝撃。文字だけでなく、紙・インク・ページをめくる手・そして僕。それらで世界を作り上げていくメタフィクショナルな小説。

     とか言いつつ、僕はあまり普通の友人にこの作家は薦めない。きっとヘンな奴だと思われるからだ。
     でも僕はやっぱりこの作家の世界が好きだ。

  • 父をデパートの屋上で待つおれ、電気で動く熊に乗って倉庫で作業するおれ、異星で戦うおれ、田宮さんに恋していたおれ。
    おれの思い出には何かが多くて何かが足りない。

    もう一度読んで確認しなきゃ。
    何となく答えをつかみかけたけど、ふわふわってしてるんで。
    そういう感じで、各話が少しづつかすったり重なったりしたお話でした。

  • SFというものは敷居が高いものだとばかり思っていたが、案外そうでもないようだ。

    とはいえ、読書時に頭を使わない私は、半ページずつ重なっていくように展開される短編に若干混乱している。
    もっとゆっくりじっくり読んでいればそうでもないのだろうが、勢い込んで文字を追ってしまうのだから仕方ない。

    ということで、面白そうだが頭がおっつかない、という感想を残す。

  • ほんとにひさしぶりの北野勇作。読んでるうちに何か思い出しちゃいそうなせつない感があいかわらずいいなあ。

  • 不思議な日常を描いた連作、それが徐々につながって世界を映し出す。電気熊やアメフラシなど、奇妙ないきものも出てきます。ひとつひとつのストーリーがややあじけないうえ、はじめはストーリー同士のつながりがつかみにくいのが難点かな。

  • 「おれ」の思い出には何かが足りなくて、何かが多すぎる。いったい「おれ」はどこから来て、そもそも今どこにいるのだろう? どこか懐かしくて、切なく、そしてむなしい物語たちの曖昧な記憶。

  • <A MAN IN THE DONUTS>
      
    Cover Illustration/西島大介
    Cover Direction & Design/岩郷重力+WONDER WORKZ。

  • 不思議な空間が広がる

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著者プロフィール

1962年、兵庫県生まれ。
1992年、デビュー作『昔、火星のあった場所』で第4回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞、『天動説』で第1回桂雀三郎新作落語〈やぐら杯〉最優秀賞を受賞。2001年には『かめくん』で第22回日本SF大賞を受賞。『どーなつ』『北野勇作どうぶつ図鑑』『どろんころんど』『きつねのつき』『カメリ』『レイコちゃんと蒲鉾工場』ほか著書多数。
ライフワークとも言える【ほぼ百字小説】は、Twitterで毎日発表され続けており、その数は4000を超える。

「2023年 『ねこラジオ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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