- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784152094605
感想・レビュー・書評
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震災当時、小さな出版社に勤めてました。シリーズの新刊を出すとき、いつもの紙が東北の製紙工場で作られていて、被災したため使えないと言われて初めてその時に東北に大きな製紙工場があることを知りました。
結局、震災直後の4月だったため、いつもと違う紙で新刊を出しましたが…
東北の製紙工場で起こっていたことには思いを寄せることもできず、この本を読むまで全く知りませんでした。
出会えてよかった一冊。本好きにはたまらない、ぜひ手に取って欲しい一冊です!詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読まずにはいられない事実がここにある
記憶に残さねばならない事実がここにある
3.11に関する「美談」はほうっておいても、聞きたくなくてもこれでもかというほど入ってきた。
それでも、なにか どこか微妙に何かが違う そんな感じがずっとしていた。
それが 何であるのかわからないまま でも自分の中では3.11のことはずっと気になっている課題の一つでした。
そして ようやく 手にしたこの一冊。
美談では言いきれない 想像を絶する その時の話が克明に描かれていく。全て 壮絶な現場を 目の当たりにした人たちの 圧倒される話が 次から次へと語られていく。
(筆者)「市民たちが直面したことを、口当たりのいいことだけではなく、悪いことも、今だからこそ、話してくれる」その話が語られていく。
間違いなく、3.11関連の一冊としてはむろんのこと、日本の災害史の中に残されるべき名著の一冊だ -
今年の話題作。製紙工場復興のドキュメンタリーではあるが、それよりも東日本大震災の惨状を具体的に綴った作品と言える。製紙業界のことも、出版業界のことも、そして震災のことも、よく分かっていなかったが、この作品でグッとリアルに感じることができた。もっと緻密に書いてくれてもいいかとも思うが、人を中心にサラッと描くのは筆者の特徴か。作品中に出てくる製紙マシンで実際に作った紙を使っているところも良し!つい何度も触ってしまった。
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借りたもの。
東日本大震災の被害、その時何が起こったか、そして復興の軌跡を書いたノンフィクション。
復興を成し遂げた事への賞賛よりも、人の生き方をまざまざと見せつけられた本だった。
日本製紙の工場が石巻にあり、津波で壊滅的な被害にあった――
半年での復興という目標は、希望を持つ事、勝算があること、そしてそれに見合う技術と思考によって成されていた。
勝算無く提示したものではなく、我武者羅に働く精神論ではなく(ここが社畜との大きな違い)。
また、意外と知らなかった紙の知識をも深められるものだった。読んでいてその拘り、匠の技に感嘆する。
頁をめくる時、紙を強く意識する。
東日本大震災ではコンビニからパンが消えたり、化粧品の生産がストップした事で、あらゆる日用品の製造拠点が東北にあった事を私も経験として知った。
震災から1周間、「その人達はどうしているのだろう?今後どうなってしまうのだろう?」と漠然とした不安や疑問があった。ニュースを観ていても被害状況や復興に実感が伴わなかったが、これを読んで納得するものもあった。
赤裸々な被災状況が語られる。
助かった命と、助けられなかった命。報道では写されることが無い直ぐ側にある「死」。
読んでいて胸が痛くなり、涙が出てきた。
被災したショックや死の恐怖、傷ついた人々は、ストレスと被害者意識から品位を失っていた。
支援物資不足からの妬みや強要される自粛ムード……
今日明日の食料だけでなく、家族で嗜好品を根こそぎ持っていくコンビニ略奪や、自動販売機がこじ開けられたりしていたという。
そこには盛んに報道された、支援の美談や節度を守りお互いに助けあう人々だけではない人間の汚い部分も明確にされていた。 -
一気読みである。
読み終えたら、譲ろうと思っていた本なのだが、これは手元に置いておいて、再読する機会がある本のように思っている。というか、手放してはいけない本だと思うのだ。ノンフィクションとしては珍しい本になりそうだ。 -
装丁家が最近注目を集めているが、紙そのものに目を向けたことはなかった。『あって当たり前』と思ってしまっていたからだ。
震災直後から復興までの製紙工場の日々を追ったノンフィクション。災害の様子が生々しく、悲しく、読んでいて辛い。けれどそれを乗り越えたからこそ今私たちの手元に本がある。そのことに感謝しつつ、頑張って最後まで読みたい。 -
2011年3月11日、宮城県石巻市の日本製紙石巻工場は津波に呑みこまれ、完全に機能停止。状況は絶望的だった。だが従業員はみな、工場のため、石巻のため、そして、出版社と本を待つ読者のために力を尽くした。震災の絶望から、工場の復興までを徹底取材した傑作ノンフィクション。
河北新報の話も胸打たれましたが、日本製紙にもこんな(悲しいだけじゃなく嬉しくて)泣きたくなるようなエピソードがあったとは・・・。決して美談ばかりではない中で、確かにあがいて結果を出したことが素晴らしい。語られる人物がみな彼らなりに芯があって温かさを感じました。
著者と同じく日本の紙の多くを作っているのが東北ということすら知らなかった私。いつも本に恩恵を受けて著者や出版社までは考えが及ぶものの、紙のことはすっかり抜け落ちていました。あまりにも当たり前すぎて。読了後1ページが愛おしくなった。今まで、ありがとう。これからもよろしく。 -
日本製紙石巻工場が東日本大震災で被災してから工場が復興するまでを徹底取材したドキュメンタリー。
当時の報道では知り得なかった壮絶でリアルな状況、従業員の方々の工場の再生に立ち向かう姿勢など。また従業員の方々の紙の本への矜持やこだわり、執念。何度も心を揺さぶられ、目頭を熱くさせられた。
この本を作っていく過程では、思い出したくないこと、語りたくないこともあったのではないかと思う。それを活字化して残る形にして送り出した聞き手と、話し手の方々に敬意を表したい。
改めて紙の本を愛おしく感じさせてくれる作品。