SF的な宇宙で安全に暮らすっていうこと (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5015)
- 早川書房 (2014年6月6日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350151
感想・レビュー・書評
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科学は理解することはできないが、心を理解することは可能ではないだろうか。この小説はわたしたちの物語です。円城塔さんの翻訳が柔らかく受けとめやすく、その分突き刺さった。もし過去の過ちや後悔していることやその時にすべきことに気付くことが出来たとして、果たしてそれを行う決断がその時の自分にできるのか...いやできないだろうなあ。わたしはわたしでどこまでも繋がっているのだから、繰り返してしまう気がする。願わくば、これから先のある時点ですべてを失うまで少しでも後悔をなくすようにしよう。今を楽しもう。
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邦題がまず良い。
そして読み進めると「これは本当にユウさんが書いたものをトーさんが訳したのだろうか、トーさんが書いたものではないのか。もしくは『松ノ枝の記』のような書かれ方をしたものではないのか」という疑念が頭をよぎる。
少し物悲しく、しんみりとした空気が漂っているのがまた好みだった。(ある種の)引きこもりからの脱出。過去との決別のお話。 -
SF脳持ってないので、読むのに時間はかかるのですが、後半以降の、あの日を思い出す父と子が苦しくて気に入りました。でも構造的には、理解できてないな…。
円城塔も読んだことないので、気になりました。 -
アメリカの新人作家による第一長編であり、円城塔の初翻訳作品でもある。
解説によると、著者であるチャールズ・ユウは、本国では『一般文芸の世界で活躍する、SF的な小説を書く作家』と見られているようで、確かに作風も所謂『SF』とはかなり異なっている。本作にしても、父と子の相克や己の内面を見つめ直す、という、寧ろ文学的な主題をタイムマシンを始めとするSF的なガジェットを用いて描き出している。
SFジャンルで内的宇宙というと、バラードに代表されるニューウェーブ運動をどうしても思い出すが、時代が異なるせいか、かつてのニューウェーブ的な印象は余りない。逆に強く感じられたのは恩田陸的なノスタルジー、郷愁であるというのも不思議なものだ。
『円城塔の翻訳である』ということで一部で話題になっていたが(作家的なポジションには共通点がある)、そういうものを抜きにして面白かったので、新作が翻訳されるならまた読みたい。円城塔ではなく文芸翻訳家が訳したらどうなるか? というのも気になるところ。