- Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
- / ISBN・EAN: 9784153350205
感想・レビュー・書評
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SF短編集。でも、ファンタジー色強め。
読み始めたらググッと引き込まれる話が多い。
表題作の「紙の動物園」はなんとなくノスタルジックな雰囲気が漂い、しんみり。
でも、次の「もののあわれ」はしんみりするはずのストーリーなのに、なんだかサラサラ乾いたような読後感。不思議。
「心智五行」「良い狩りを」は夢中でグイグイ読めた。
図書館の返却期限が来たから、読めなかった短編もあり残念。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まず、気合いの入った装丁からして出版社の意気込みが伝わってきた。そして、その気合いも当然だなあといった内容。結構情緒的なものが多いし、著者が中国系(というか中国で育って幼少期に米国平民)なので伝奇SFっぽいものも数点。なかなか良い。ただ、これは中国じゃ出版できないだろうなあ?と思ったモノはやはり翻訳されていないそうな(訳者後書きより)そして、最後に一言。
『読んだ。悪くない。』言ってやった!言ってやった! -
SF小説を読むのは久しぶり。短編集なので読みやすかった。
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12:ついったでの評判通り! どの作品にも静かな(東洋的な?)生死観や情緒があって、素晴らしかったです。生命としての流転や別ステージ(形態)、言語についての話が多くてほくほく。私には難しい科学要素もあったけど、読んでよかった。他の作品も訳されてほしいなあ。
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SF短編集。登場人物や舞台がアジアに関連しているものが多く、今まで欧米のSFばかり読んでいたので斬新だった。短編でも1話1話の話や設定の濃さがすごい!
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紙の動物園、もののあはれ、月へ、結縄、太平洋横断海底トンネル小史、潮汐、選抜宇宙種族の本づくり習性、心智五行、どこかまったく別な場所でトナカイの大群が、円弧、波、1ビットのエラー、愛のアルゴリズム、文字占い師、良い狩りを。
あり得たかもしれない日本の歴史は、日本人ではないから書けたのかもと思いました。 -
しまった…これも人生後半に取っておくべき一冊でした!
テッド・チャン信奉者であるという点でもうハズレじゃないのは解っていた・・そして先生に勧められたので、これはもう読んでおこうかなと。昨年出版された文庫版は、こちらの短編集からの再収録なので、こちらのトールサイズを読んだ方がお得です。
以下気に入ったものを抜粋して。
「紙の動物園」からもうね…霞んで読めない一作でした。これは少し不思議の方のSF。
「もののあはれ」正統派SF。そして染み入る様な語り口と、美しく悲しいラスト。でも悲しまなくても良いんだよと云う、優しさ。
「心智五行」若干乙女ゲ―的な楽しみを覚えました(笑)
「円弧(アーク)」生死とか愛情とか何それと思わせる話。もし人に永遠があったなら、リーナのような生き方をするだろうか、いやそれが悪いとか良いとかなど、誰かに断ずることは出来ず、本人が何もかもを(それこそいつ死ぬのかも)決めて生きねばならないのね、嗚呼。
「波」円弧に対を為すような話でありながら設定はガチSF。円弧では人の肉体を、こちらの波では意識を物理に用いています。またその上で前者は個を、後者は集団を描いた作品です。是非セットで。
「1ビットのエラー」まんまテッド・チャンの「地獄とは神の不在なり」展開で、ラストが違う感じかな…この作品でケンリュウ自身も作家として天国と地獄を見極めたのだという機縁な一作。読み比べ推奨。
「文字占い師」一番辛い・・・。小説には著者の生まれや育ち、思想が根ざす物とはいえ、彼が中国出身者であるという事を一番感じさせる一作。でも目を逸らしてはいけない事なのですね。
「良い狩りを」ボーイミーツガールな話かと思いきや!胸ワクドキ冒険活劇の始まりかと思いきや!いや、そういう部分が無いかと云われたらそうでもないけど!巻末解説の「きつねうどんだと思ったら蒸しパンだった」が云い得て妙。蒸パンク喰ぅSF!(笑) -
表題作はとても良くて、泣けた。
表題作だけなら星四つ。
自分の好きな「移民の抱えるジレンマと哀しみ」系の話と、やさしいファンタジーとが淡々と混ざりあっていて、ちょっと、こんなSF小説っていうのもあるんだ!って発見。
それ以外の話は面白かったり面白くなかったりだったので、星三つ。 -
明敏かつセンチメントな文章というか。
「円弧」「文字占い師」はセンチって言葉じゃ温いか。この2作は本当にシビれた。前者は不死の社会、後者は二・二八事件に纏わる話。
よく訓練されたSFファンなら「トランス脂肪酸たっぷりのクッキー」と読んだ瞬間によだれが出るはず。舞台の時代背景とそれが禁断の誘惑に溢れた食べものであることを直感して。