紙の動物園 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

制作 : 古沢嘉通 
  • 早川書房
3.92
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本棚登録 : 1304
感想 : 153
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  • Amazon.co.jp ・本 (413ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784153350205

感想・レビュー・書評

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  • 中国、アジアの香りがする。切ない話が多い。多彩。

    1.紙の動物園
    泣ける、せつない。折り紙の動物たちが可愛いだろうなあ、きっと。

    2.もののあはれ
    最後のシーンですごく宇宙がイメージされた。挿入される詩歌が叙情豊か。一番好き。

    4.結縄
    トム、ひどい!アミノ酸配列の設計のアイディアは面白い。

    8.心智五行
    これも面白かった。ストーリーも良いが、個人用AIがとても気に入りました。これまた欲しい。
    バクテリアが気分や脳内化学に影響を与えてるというアイディアが面白い。

    9.どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
    これもなかなか面白かった。データとして不老不死で生きる時、親子関係や愛情はどのようなものになるのだろうか。

    10.円弧(アーク)
    こちらの中での不老不死は、あまり幸せそうでない。

    11.波
    永遠に子どもなら、身体は大人でも頭(脳の処理)的には大人並なのか?

    12.1ビットのエラー
    テッド・チャン「地獄とは神の不在なり」にインスピレーションを受けた作らしい。

    13.愛のアルゴリズム …(紙の動物園)
    テッド・チャン 「ゼロで割る」から、トーンと葛藤の部分のインスピレーションを受けたとのこと。

    14.文字占い師 …(紙の動物園)
    結末がきつい。ある程度予想はしていたけれど。

    15.良い狩りを
    歴史改変モノ ファンタジー+SF。これも好き。
    予想を裏切る展開で意外だったが、想像すると妖狐が非常に魅力的だった。アニメ化してほしい。

  • 短編集はあまり趣味ではないがあまりに評価が高かったので読んでみた。評価の高さにちょっと身構えて読んでしまったがどの作品も短い中にそれぞれの世界観があり楽しめた。著者のバックグラウンドであるアジアの文化が意外にストレートに描かれてるなと感じた。

  • 目次
    ・紙の動物園
    ・もののあはれ
    ・月へ
    ・結縄
    ・太平洋横断海底トンネル小史
    ・潮汐
    ・選抜宇宙種族の本づくり習性
    ・心智五行
    ・どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
    ・円弧(アーク)
    ・波
    ・1ビットのエラー
    ・愛のアルゴリズム
    ・文字占い師
    ・良い狩りを

    この短編集は、よい。

    昨日寝る前に表題作の「紙の動物園」を読んだ。
    主人公の母の気持ちに胸がふさがれるような思いがし、主人公のいらだちや悔いは身につまされるほどリアルに自分のものだった。(私の母は健在ですが)

    今朝、通勤の電車の中で「もののあはれ」を読んで、涙をこらえるのに苦労した。
    トム・ゴドウィンの名作「冷たい方程式」の大人版だと思った。

    愛する者を切り捨てる痛み。切り捨てられる切なさ。
    それは研ぎ澄まされた刀でスパッと切られるのではなく、無理やりはがしたかさぶたのように、いつまでもじくじくと痛みを見せつけられる。
    この短編集にはそんな痛みや哀しみがつまっている。
    だけど、どんなに文明がすすんでも、身体が進化しても、人の心は変わらなくて。
    人の心ってどこにあるのか、何でできているのかはわからないけど、それが人を人たらしめているものなのだろう。
    2足歩行だとか、道具を使えるなんていうのは、ほんの表面上のことなのだ。

    先日牧野修の「月世界小説」で、ニホン語についてさんざん読んだと思ったら、こんな記述
    “日本語が陰影と雅趣に満ちた言語であり、一文一文が詩であることを父さんに教わった。日本語は、重層的な言語であり、語られぬことばが語られることばとおなじように深い意味を持ち、文脈のなかに文脈が潜み、まるで日本刀の鋼のように層が重なりあう言語である、と。”(「もののあはれ」より)

    そして、日本人についても
    “「日本人は、火山と地震と颱風と津波の国に暮らしているんだ、大翔。地下の炎と上空の凍える真空とのあいだにはさまれた、この惑星表面の細長い土地に縛られ、いつなんどき生命の危機に襲われるかもしれない暮らしをずっと送ってきた(中略)もののあはれは、いいか、耐え忍ぶことを可能にしているんだ。それが日本という国の魂なんだ。それが絶望することなくヒロシマを堪え忍び、占領を堪え忍び、都市の崩壊を堪え忍び、全滅を堪え忍ばせたんだ」”
    耐え忍ぶことはあきらめることではない、と。

    漢字の国の人、台湾の国民党と共産党、そして国民党の後ろにいるアメリカのパワーゲームに踏みにじられたアメリカ人の少女と台湾人の老人と少年の交流を描いた「文字占い師」も多分ずっと心に残る作品になるだろう。

    多作の作家らしいので、もっと日本に紹介されればいいと思う。
    〈氷と炎の歌〉シリーズに比されるような長編小説も発表されているようなので、日本語に訳されたらぜひ読みたい。
    あまり長くなり過ぎないことを望むけれどね。

  • 2016Twitter文学賞 海外編

  • 紙の動物園だ

  • 読後、満足感でいっぱいの短編集。いろんな人におすすめできると思う。宣伝は何度となく見ていて、真面目っぽい読み物かと敬遠してたけど、もっと早く読めばよかった!!
     予想通り、表題作他はしっとり純文学テイストだが、収録15編の内訳は、ガチSFもあればアホSFもあり、ファンタジーもあり、歴史の重さを背負う作品も。ケン・リュウは中国生まれのアメリカ人なのだが、日本人に響く感性を持っていて、読み心地は不思議に良い。
     多作な中からバラエティに富むラインナップを選んだが、まだ何冊も編めそうだと訳者は書いている。また読むのが楽しみ。
     この著者は、アイデア勝負の作品もあるけど、人間を描いているのは共通だと思う。地べたで生活する人間と、未来で変貌した人間の有り様と。いずれも面白いし、遠くへ連れてってくれる作品たちであった。

  • 紙の動物園は一読の価値あり

  • 短編。SFファンタジー。ファンタジー要素の強いものが好き。
    紙の動物園と、良い狩りを この2つが一番好きでした。
    元素がふわふわしてるような空気感。ラストは寂寥感。もののあはれ。折り紙の虎や水牛も、妖狐の娘も、寂しくてとても美しい。

  • 「THE SF」という内容であり、文体なので久し振りにSFを読んだなって気分になれました。
    しかも想像力を掻き立てられたり、切なくさせられたりと秀逸な短編集なので、SFを読み始めるにはちょうどいい一冊としてお薦めできます。

  • 図書館で。これはそのうち買う。
    短編集なのだけれども全編どこか哀切な印象を与えるのは取りあげられている題材が基本的に社会的弱者やマイノリティを扱っている所為なのか。

    紙の動物園を読むと何で男性って後悔するとわかっているのに母親に優しくする事が出来ないんだろう…と思う。同じことは東京タワーとか男性が書かれた本を読んで感じたことがあります。それができないから男性は母なる存在に執着するのかもしれないけど。お母さんは娘を産んだら良かったんじゃないのか。まあそう簡単な話でもないんだろうけど。愛しているがゆえに反発したり傷つけたりする事がわからない訳でもないし。そして私も老虎が欲しい。

    不老不死を扱った題材も面白かったし結縄も辛いけれども面白かった。こういうアイディアもあるのかぁ、と。知られてないだけで世の中には結構古くから伝わるスゴイ技術とかあるんだろうな、なんてことを思ったりもする。
    でも個人的に一番好きなのは最後に収録された「良い狩りを」かな。妖怪とスチームパンクが混ざったようなラストが好き。カッコイイ。世界が変わって絶えてしまったり変わってしまったものも多いけれども本質を変えずにしたたかに生き延びているものもある、という感じが好きでした。

    もののあはれ
    月へ
    結縄(けつじょう)
    太平洋横断海底トンネル小史
    潮汐
    選抜宇宙種族の本づくり習性
    心智五行
    どこかまったく別な場所でトナカイの大群が
    円弧(アーク)

    1ビットのエラー
    愛のアルゴリズム
    文字占い師
    良い狩りを

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