乳と卵

著者 :
  • 文藝春秋
3.08
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本棚登録 : 3604
感想 : 741
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  • Amazon.co.jp ・本 (138ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163270104

感想・レビュー・書評

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  • 高校生くらいの時に読んだという記憶だけはあるものの、全く内容を覚えていなかったので再読。
    「乳と卵」も、その後ろの短い「あなたたちの恋愛は瀕死」も文体がすごく読み辛く、とりとめのない感じもなかなかに苦手な感じだった。芥川賞ってとりとめのないものばかり、、、という勝手な印象。うーむ。

  • テンポの良い、でも冗長な大阪弁で語られ、どこか漫才師による漫談を聞いているよう。滑稽でもあり物悲しくもあり。
    もちろん乳は豊胸したい巻子、卵は生理が始まり思春期で殻に閉じこもる緑子を表してるんだろう。

    あったかいお話だった。
    母と娘のつながりを感じた。
    緑子はまだまだ巻子に甘えたい。
    自分が吸いあげてしぼんだ胸を大きくしようとする母に、言い知れぬ寂しさをぶつける。それでいて夜の仕事をして痩せゆく母を心配している。
    こんな母と娘は助け合いながらこれからを歩んでいくんだろう。

  • 芥川賞受賞で興味を持ったけど、ちょっと難しかった。
    表現は上手と思うけど、のめり込むまではないかなw
    うまく感想をかけないかも

  • 語り部「私」の姉にあたる巻子は豊胸手術に異常に執着している。巻子の娘である反抗期の緑子は言葉を発さず、コミュニケーションは筆談で行う。豊胸手術をするために、ある日巻子は緑子とともに私の住む東京にやってくる。

    句読点を多用したりほぼ改行が無かったり話言葉に「」があったり無かったりといった独特の文体裁が、取りとめのない滞った感情を表しているようで印象的。
    緑子が自身の「女」への体の変化や胸を“何か”で膨らませようと躍起になっている母の行動に対し、嫌悪にも似た感情を示す。「母」が「女」に戻ろうとする姿は子供にとっては恐怖だ。母も一人の女性であり一人の人生には違いないのだけど、「母」が「女」になってしまったら、もう「子」では居られない。もっと言えば「子」として誕生させしなければ、「母」は「女」のままでいられたのにとさえ感じる。
    母としての役割と反対側に置かれる女としてのアイデンティティ。生きていく以上女はやめられないのだから、女を疎んだとしても煩わしいと感じても、その入れ物で勝負をしていくしかない。

  • 芥川賞受賞時の書評を読んで、惹かれる引力があった作品です。でも、妙にセクシャルな印象を受けるタイトルに暫くは遠慮していました。ストーリー、文体、装飾の無い全てドライな作品が唐突に読みたい、と思ったときに、ふとこの作品が思い浮かんで、手に取ることになりました。緑子の言葉は、「これを男性も読むのか」と思うと、何だか気恥ずかしくなってしまう程、女性として理解せずにはいられない箇所が多いです。そして大阪弁の効果が、関西人の読者にはかなり効いています。「厭やなあ」という心の声が、すとん、と響きます。「嫌やなあ」じゃないんだよね、「厭やなあ」なんだよね、とくだらない違いのように思えるところも、何だか愛おしくて、理解出来てしまいます。それから、非常に気に入ったのは、たらたらと続く文体です。一歩間違えたら、作文として崩壊しかねない、感情の垂れ流しのような文章構成のはずが、不思議と読みやすいのです。ケータイ小説の「等身大」等と言われる表現よりもずっと「等身大」で、不思議な風格があります。でも、とにかく緑子の「厭やなあ」がとっても好き。彼女のこの、たった一言に惚れてしまったような気がします。古本ではありますが、単行本で買ってよかった、ずっと手元に置いておきたい作品になりました。

  • とにかく面白かった。文章も展開も好みで、ラストまでのテンポのよさがいい。
    三人の女性たち。タイトルにある、卵、乳、つながりがすごい。あっという間に読み終えた。

  •  全体を通して句点が少なく、一つ一つの文章が長い。自分を含めて女性同士の会話でありがちな、結論が纏っていないのに感情の赴くままに話をしているのをそのまま文章化したような感じ。
     緑子が自分の意思とは関係なく成長していく女性性に戸惑っているそもそもの原因は、自分が産まれたせいで巻子が苦労していると考えている母を心配する心であるのが切ない。
     巻子は豊胸に拘ったり、風邪をひいてもいないのに咳止めシロップを飲むほど心が病んでいる状態だったが、緑子と感情を剥き出しでぶつかったことでいい方向に向かっていけると思いたい。
     一度読んだだけではなかなか理解が追いつかなかった。

  • 面白いと思ったけれど短編なのにとてもつかれた。不安定そうな巻子がとても不気味で限界を感じる。花火のシーンがラストかと思わせてしてなくて次回にという展開とても好き。英語訳はどんなふうに描かれてるんだろう。ぜひ読んでみたい。

  • 自分の読書傾向と好みは芥川賞より直木賞寄りである自覚があるので、芥川賞受賞作品は気になりながら遠巻きにしつつ、時々読んでみる、感じでおります。この作品については、英訳した方のweb上の記事を読んで俄然興味がわいてきて手に取りました。芥川賞なのでストーリーで読ませるというよりもあるテーマについていろんな見方を提示したり掘り下げたりする作品。英語に訳した方は男性でしたが、扱われているテーマは女性性であったり、意志と関係なく成熟していく身体と心の解離性であったり、母と娘の愛憎や葛藤であったり、でした。けして読みにくくもなく長くもなく(むしろ短い)、水を飲むようにすいすいと入ってきて、読んでいて不思議な感覚でした。一番印象的だったのは文体です。予備知識なしに読み始めたので驚きました。普段自分が生活している中で何を考えるでもなく頭の中でぼーっとあれこれとりとめもない考えや思いが渦巻いているのですが、それを文字にしたような、ひとつの文章で句点がいくつも連なって、目に入るもの耳に聞こえるものそれらで連想するもの感じることのすべてを網羅していくような、口語とも文語とも違う不思議な文章でした。それでいて読みにくくなくすっと意味も通るし迷走することもなかったのがすごいと思いました。もう一遍収録されていた男女の出会いについての小編は、グッサリくるというか、喉に引っかかった小骨のような、錠剤を飲み込んだけど食道の途中で滞っているような、体験として知っている不快感を思い出させる話でした。他の作品も読んでみたいと思います。

  • ”夏物語”を読んで、また再読したくなった。
    夏子も姉の巻子も姪の緑子も、登場人物みんな愛おしい。
    思春期だからといって片付けられない緑子の心の不安定さ。
    (でも芯の強い聡明な子というのはわかる。)
    すでに反出生主義者で卵子と精子を合わせないほうがいいのではと考えてるし。
    この先どうなっちゃうんだろ、と心配してたけど夏物語では、大学に進学して彼までできて、もちろん口も聞いてくれて青春を謳歌してて安心したよ。
    巻子は結局、豊胸手術はせなんだね。あれは別れた元旦那に会う為の口実だったのか…
    当時、新人の小説は滅多に読まないと言っている村上春樹が”ずいぶん深く感じいってしまった””歳月をかけて更新されたその光景を目にすることを、僕としては個人的に楽しみにしている”(夏物語として更新された)と言わしめた川上未映子はやはり稀有な作家さんだ。

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著者プロフィール

大阪府生まれ。2007年、デビュー小説『わたくし率イン 歯ー、または世界』で第1回早稲田大学坪内逍遥大賞奨励賞受賞。2008年、『乳と卵』で第138回芥川賞を受賞。2009年、詩集『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』で第14回中原中也賞受賞。2010年、『ヘヴン』で平成21年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、第20回紫式部文学賞受賞。2013年、詩集『水瓶』で第43回高見順賞受賞。短編集『愛の夢とか』で第49回谷崎潤一郎賞受賞。2016年、『あこがれ』で渡辺淳一文学賞受賞。「マリーの愛の証明」にてGranta Best of Young Japanese Novelists 2016に選出。2019年、長編『夏物語』で第73回毎日出版文化賞受賞。他に『すべて真夜中の恋人たち』や村上春樹との共著『みみずくは黄昏に飛びたつ』など著書多数。その作品は世界40カ国以上で刊行されている。

「2021年 『水瓶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

川上未映子の作品

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