扉守(とびらもり)

著者 :
  • 文藝春秋
3.66
  • (25)
  • (71)
  • (55)
  • (6)
  • (4)
本棚登録 : 380
感想 : 86
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163287300

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 不思議な町の、不思議なお話短編集。
    主人公は同じかと思いきや、まったくきれいさっぱり違う人。
    一度出て、そのまま終了…と思いきや
    脇役の人で再登場している人も。
    全編通して出ている脇役がいましたが…正体が…狸? と
    思ってしまうような性格の方がw

    不思議な、けれど大事なものを大事だと思わせてくれるような
    そんな気分にさせてくれました。
    感情、想い、そんなもの? でしょうか??

    思わず頷いてしまったのは、表題になっている話。
    それは『友達』ではありません。
    勇気を持って捨てましょう! なんて、普通はできません。
    そういう意味ではいいきっかけになったかと。
    人間、思っていても動く事がすぐ直結、ではありませんから。

    そういう意味では『桜絵師』も。
    人を小馬鹿にするような人種には関わりたくもないですし
    関わりも持ちたくないです。
    己の選択に恥じる事がないように、が一番です。
    後悔は、いつだってついてきますから。

  • 尾道をモデルにした潮ノ道という、
    気、エナジィの集まる街のちょっと不思議な、
    絡んだ糸をふわりと解いてくれる様な柔らかな優しいファンタジー。

    共通して出てくるのは持福寺の了斎翁。
    そして集まる不思議な旅人達。
    了斎と旅人と交流したい。追っていきたいシリーズ(多分次でますよね?)が増えた。
    「ピアニシモより小さな祈り」「帰去来の井戸」が切ない。

  • 読んでいると自分の故郷を思い出しました。
    一つの街で起こる不思議な物語。
    この本を読むと、周りのどんなものにも命があるのかなと感じます。

  • ささやかで優しい話。どの話もすきで1つを選べなかった。なんとなく蟲師を思い出す。尾道がモデルの舞台、憧れる。

  • 「潮の道」で起こる不思議で静かな短編集。
    第1回広島本大賞受賞。

    読んでいると優しい気分になる。
    表紙に惹かれて読んだけど、読み終えて表紙を見てみると秀逸。
    「桜絵師」「旅の編み人」とか好き。

  • 伯母の営む小さな飲み屋で
    代々守っているという不思議な井戸を見せられる
    「帰去来の井戸」
    場所が語る物語を芝居にする劇団「天音」の今度の公演は
    解体作業中に怪現象が起こるお屋敷を舞台とする
    「天の音、地の声」
    クラスメイトや母に対して逆らえずにいた雪乃が
    突然気の強い物言いが出来るようになる
    「扉守」
    美しい絵の中に男の人を見た早紀は
    その絵の中に入り込んでしまう
    「桜絵師」
    独身の祥江は家庭の愚痴を言う晃代をうとましく思い
    思いつめているところを美青年から写真に撮られる
    「写想家」
    編み物作家のバッグから飛び出した靴下を追いかけて
    町内を案内する羽目になる
    「旅の編み人」
    幻のピアニストと呼ばれる零と専属調律師の柊に
    ずっと家で鳴らないピアノを直してもらう
    「ピアニシモより小さな祈り」
    装画:丹地陽子 装丁:大久保明子

    大地を流れる力が強い潮ノ道と
    そこにある持福寺の住職、了斎の元を訪れる様々な人々による
    不思議な連作短編集です。
    遠い地で死んでも最後にこの地へ帰ってこられる力、
    場所の持つ記憶を読み取る力、
    他の世界への扉を開く力、
    無念の死を遂げたものを慰める絵を描く力、
    人の持つオーラを写し取る力、
    毛糸に限らず全てのものを編んでしまう力、
    ピアノに語りかけ、最高の音を奏でる力。

    実在のアーティストさんからインスピレーションを得ているところも
    大きいようなのであとがきから新しい世界が広がるかもしれません。
    あと舞台が尾道なので出身者はまた違った読み方ができそう。

  • 表紙につられて読んだら、予想以上に不思議でやさしい物語たちでした。
    脳内で現実の尾道と物語の「潮ノ道」がクロスオーバーして、なんだか幻燈を見ている気分に。…モデルになった場所近郊の出身ゆえ、標準語アレンジされた方言に逆に現実に戻される部分もありましたが。

  • 広島県の尾道を舞台に繰り広げられる短篇物語。帰去来の井戸の伝説や古い洋館に宿る妖怪畳たたきの話など・・・・不思議な存在と人間の存在のコラボレーションをみごとに描かれた,ホッとする読み物でした。

  • その水を飲めば必ず潮ノ道に帰ってこられる。戻れない時は・・・。おばが護り続けた井戸の不思議を知った由布は・・・「帰去来の井戸」

    奇怪な現象が起こるお屋敷と、ちょっと変わった旅劇団・・・「天の音、地の声」

    潮ノ道にまぎれこんでしまった〈この世のほかのもの〉。彼女はその地に同類を見つけ、とりついた少女・雪乃を使って接近したが・・・「扉守」

    潮ノ道の持福寺にやってきた絵師・行雲。彼が描いた絵の中に、動く人影を見た早紀は・・・「桜絵師」

    子育てに疲れた主婦の友人からの愚痴メール。そのやり取りのうちに心に育てしまった赤黒い感情。そんな祥江に近づいたのは怪しげなカメラマンで・・・「写想家」

    ピンクの羽を広げるように、飛び去ってしまった赤ちゃんの毛糸の靴下。それを追うのは気難しくて恐ろしく腕の良い編み物職人で・・・「旅の編み人」

    ある時を境に鳴らなくなってしまったピアノ。知る人ぞ知る天才ピアニストと彼専属調律師の二人組は、その歌声を取り戻すことができるのか・・・「ピアニシモより小さな祈り」

    尾道をモデルとした〈潮ノ道〉
    そこを舞台にした独特なファンタジー短編集7編。
    光原さんらしい、不思議で爽やかで心に沁みわたる作品ばかりでした。
    「桜絵師」と「ピアニシモより小さな祈り」がお気に入り。
    特に、
    「~思いきり歌うがいい。歌を愛する者が増えるように。~中略~それがこの世界の片隅で、ピアニシモより小さい音でしかなくとも、沈黙に比べれば限りなく大きな力を持つ」
    ってセリフが胸に残りました。
    こういう雰囲気の作品をもっと読んでみたいなーと思っていたら、どうやら作者ご本人もこれをシリーズ化されるおつもりのよう。
    気長に待っていますので、ぜひとも書き続けていただきたいです♪

  • 心やさしいお話たち。ただ、ずうっと昔友人の弟くんが言った、『人に‘いい’人、‘わるい’人ってないんだよ。』という言葉が思い出された。例えば、「扉守」の雪乃の今までの友だちも、きっとそんなに悪くないにのだろうな。彼女たちと一緒でも楽しいことだってあったのだろうに、と思ってしまうのであった。

全86件中 41 - 50件を表示

著者プロフィール

広島県尾道市生まれ。詩集や童話集を出版したのち、一九九八年『時計を忘れて森へいこう』でミステリ界にデビュー。二〇〇二年「十八の夏」で第五十五回日本推理作家協会賞短編部門、十一年『扉守 潮ノ道の旅人』で第一回広島本大賞を受賞。主な著書に『星月夜の夢がたり』『イオニアの風』『風の交響楽』など。

「2022年 『おいしい旅 想い出編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

光原百合の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×