「食糧危機」をあおってはいけない (Bunshun Paperbacks)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163712406

感想・レビュー・書評

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  • 食糧危機に関する主張の嘘がデータに基づいて説明されている。
    地球の人口は増えているのだし、食生活はだんだん豊かになっているので、食糧危機は漠然とあると考えていたが、この本を読んで考えがかなり変わった。どこの国でも農業政策って自国の農業従事者(≒票田)守るためだったりするんだな。

  • 食糧危機という言葉が誇張されてる、理由がさまざまに述べられているのが良かった。

    日本の農業の未来像は、共通して、付加価値の高い高品位の農作物の生産を推奨している。。。

    技術的に生産性があがることなど食糧危機の可能性が低いのは分かったのだが、わが国で一番問題なのは農業従事者の高齢化と収益率の格差による若年層の就業率低下と思われる。。。もちろん、いい化学肥料と農業技術が向上すれば、数字上問題はないと思われる。。。もしくは、海外のように雨まかせの農業であれば問題はないだろう。。。わが国の農業はたぶんに地域コミュニティ形成や文化的側面を含んでいることを考えると。。。また、問題点としてはズレるのかもしれないが、化学肥料などの使用に伴う土地が痩せる、土地や河川の富栄養化などの問題点を考えると、これらは今後も積極的にすすめれる生産性向上の技術なのだろうか?。。。わが国の農業事情を考えると、述べられてるような合理的な分析はその通りだと思う。。。ただ、要素が合理的過ぎるとも思う。。。また、金融市場に翻弄される農業という産業については、なんら提言をしていない。。。データとしては理解したが、わが国で農業が直面してる問題に対して、何か考えられたものではない。。。

    世界の食糧生産とバイオマスエネルギー 2050年の展望

    は是非、読んでみたい。

  • 日本人がどれだけ無知で、ドMかが伺える。振り回されてはいけない。日本がすべてのことに振り回されるのは戦後平等に飢餓に晒されたからだというのはすばらしい知見だと思う。

  • ■BRICsの成長で穀物の需要急増?
    ・アジア人は牛肉を食べない。
    ・豚肉・鶏肉は、牛肉ほど穀物を必要としない。
    ・大豆の絞りかす(大豆ミール)を使用。小麦やトウモロコシを大量に使わなくて済んだ。
    ・ブラジルが中国の需要をまかなえる。


    ■魚の買い負け?
    ・世界の魚ブームは一時的。
    ・日本のような魚文化は他の国にない。
    ・経済成長過渡期には一時的に魚の需要が増える。


    ■食糧生産は限界?
    ・緑の革命
      他収穫量品種への改良
      化学肥料・農薬の普及
      灌漑面積の拡大
    ・上のような集約農業が行われているのは世界的に見ればごく限られた地域でしかない。
      オーストラリア・ブラジル・アルゼンチンのような農業大国でさえ、あまり行われていない。
      土地の値段がただ同然の国々では、手間を省いたほうがよい。
    ・アフリカは貧しいのに肥料を使わない。
      豊作だと価格が暴落してしまう。インフラが整備されていないため、地域の外に運び出すことができないから。
    ・WTOで先進国が話し合っているのは、穀物の押し付け合い。途上国の穀物なんか買ってられない。
    ・本当にアフリカの人を助けたいなら、米や小麦を輸入してやれ。

    ・農業→工業化→IT
      食糧を買ってくれる国がないから、途上国は、工場誘致やIT産業が農業の先にある。


    ■農業用地が減少?


    ■水が足りない?
    ・農業大国は、降った雨だけに頼る「天水農業」を行っている。手の掛かる「灌漑農業」は行っていない。
    ・バーチャルウォーター・・・天水農業なら水の無駄遣いではない。


    ■地球温暖化の悪影響?
    ・逆に生産はアップする。
    ・熱帯ではマイナス。温帯や亜寒帯ではプラス。世界的にはプラス。
    ・寒冷化の方が危険。
    ・温暖化は100年という極めてゆっくりとしたスピードで進行。科学技術の発達と人間の適応能力でなんとかなる。
    ・温暖化で蒸発量が増え、雨量が増える。



    ■バイオ燃料?
    ・アメリカのバイオ燃料政策
      休耕地の利用を念頭に置いたもの。理論上、食糧需要には影響ない。
      中近東に対する牽制。
      生産者農民の歓心を買う。
      バイオエタノール生産に補助金を出したとしても、全体としては財政支出を削減できる。
      穀物価格上昇は貿易収支改善。
      牛肉・牛乳業者からは反感。
      本当は地球環境に優しくない? バイオ燃料の生産は、生産に費やすエネルギーのほうが高いかも。
    ・ブラジルのサトウキビ由来エタノール (1バレル34ドル) は普及するかも。
    ・アメリカのトウモロコシ由来エタノール (1バレル77ドル) は一時的なブームだろう。



    ■日本の食糧自給率が4割の理由

    米の自給率・・・90%
    野菜・・・・・・・・・80%

    豚肉・・・50% → 50%×10%=5%
    飼料・・・10%

    肉の自給率は飼料の自給率からも計られる。

    高度経済成長で肉・油の消費が上がり続けた結果、自給率が下がった。
    輸入量が増えたのは油と飼料穀物だけ。

    飼料穀物は自由化されている。国産価格は世界の10倍なので太刀打ちできない。


    ■フードマイレージ?
    ・船による穀物の大量輸送のほうが、陸上のトラック輸送に比べ、CO2排出量が少ない。

  • いかに自分の知っている事が非常識か…。何でも平均で考えてしまうと正しくない結果を導きかねない。日本は1946年に皆が飢餓を経験し、食糧危機に対して強い危機感を持っているため、世界の常識とはかけ離れた食糧危機が独り歩きしている

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著者プロフィール

川島博之(かわしま・ひろゆき)
ベトナム・ビングループ主席経済顧問、Martial Research & Management Co. Ltd., Chief Economic Advisor。1953 年生まれ。1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得退学。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授を経て現職。工学博士。専門は開発経済学。著書に『日本人が誤解している東南アジア近現代史』(扶桑社新書)、『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』『習近平のデジタル文化大革命』(いずれも講談社+α新書)、『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋)、『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版社)等多数。

「2021年 『中国、朝鮮、ベトナム、日本――極東アジアの地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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