ミッドナイト・バス

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (445ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163900063

感想・レビュー・書評

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  • 東京⇔新潟間の深夜バスを運転するアラフィフの男。離婚歴あり、2人の子持ち、東京に一回り歳の違う恋人がいる。そんな男を主人公に、家族や仕事、様々な形の愛を描いた作品。淡々としていながら大事なことは譲らない男と作品が一体となっていて、読んでいて共感する箇所が多かった。結局最後は落ち着くところに落ち着いたというか、長男の行動以外は予想できてしまったのが残念だったが。

  • 彼方の友へ、がよかったんで、借りてみる。
    ミッドナイトバス、夜行バス、なかなかつかれるけれど、
    お財布には優しく、乗ってたら目的地まで連れてってくれる、便利な交通手段だ。
    それに乗る人たちの人間模様かな?っと思ったら、
    それを運転してる人の諸々家族小説でした。
    過去に守れなかった人、選べなかった未来、
    先の見えない未来への不安、それでも掴みたい未来。
    家族でも、家族だから言えないこと。
    そんな諸々がごった煮でちょっと疲れた。
    やっぱ、夜行バスより新幹線がいいー。先立つものあれば。笑
    いやいや、好きって言ってるじゃん、そばにいてっていってるじゃん、昔の女、抱きしめてんじゃねーよ、っとちょっと毒づいてみたりしちゃった。
    でもまあ、それぞれに朝が来て、それぞれの目的地に向かってまたみんなが進みだしてるんで、読後感はよい。
    怜司くんの過去話は少々突然で、そっちかあ、重いーーっとまたぐったりした。

  • 地元に戻り深夜バスの運転手として働く利一。
    姑との仲違いの結果家族を置いて出ていった美雪、
    心を病んで身体に不調の出て東京から戻った息子怜司、
    クリエイティブなことを半分仕事と趣味で極める娘彩菜。
    元4人家族が、それぞれの事情で故郷新潟に集まった。


    2人の女性の間で気持ちを揺るがす利一と、別れた原因が自分にあると自覚しながらも、利一に再び思いを寄せるかのような仕草をする美雪に少しイライラしました。
    怜司の悩みの原因も、なかなか分からないため、ハッキリしない感じが好ましくなく、終盤まではあまり良い感情をもてずに読んでいました。

    所々に登場する脇を固める方々のエピソードはとても良かった。
    そして、彩菜の姿が1番好ましかったです。

    少しずつの歩み寄りで、わだかまりが解け、元いた場所に戻ったり、更に先に進んだりと、最後は穏やかに丸く収まります。

    美雪の父敬三と4人のドライブのシーンには泣きました。

    家族の再生の物語。
    スッキリした話ではないですが、心の奥底に響く作品でした。

  • いい小説を読めたなあ。話を追っていくのが楽しみでいいペースで読めた。面白い本だと読み進めるが惜しくてチビチビ読んだあげく、読み疲れてグダグダで読了ということもままあるんだけど、この小説はそういうこともなく最後まで、どうなるんだろう、こうなればいいのになあ、と思いながら、「うん、まずまず」と読み終えた。
    淡々と新潟に家があるアラフィフの高速路線バス運転手・利一さんの周囲の出来事が描かれる。淡々といっても、周囲には成人した息子と娘、学生自分にできちゃった結婚して離婚した元妻、最近いい仲になっている東京の女性といった人々がいて、けっこういろんなことが起きるんだけど、それらがいい意味で淡々と、長い人生のひとコマのように綴られる。この落ち着いた筆致が深夜便の高速バス(ミッドナイト・バス)や利一さんの人柄とあっているようで好感がもてる。挿話的に、バスの乗客の人生のひとコマも垣間見える。本筋と関係ないこの部分が意外といい効果を出している。
    この小説は家族を描いているようでもあるが、あえてそうではないのだと解釈したい。血や紙でつながった「家族」というものでなく、合縁奇縁で出会った人々がつながったり離れたり、また結びつきを心の拠りどころにして生きていく物語。数十年ともに生きることも、同じバスに乗ってつかの間ふれ合うのも、ひとつの人どうしの出会いとしては等価値のように思える。だから、バスの乗客の挿話も読み捨てにできない気がするのだと思う。
    終盤に向けて、登場人物たちは一歩いい方向へ踏み出していく感じがするんだけど、そのなかで利一さんだけがどうなのかなと思ってしまう。バス運転手として新潟と各地を行き来するかたわら、利一さんは子どもたちや元妻を包み込んで後押ししてあげている気がするんだよね。それでいながらいい仲だった女性とはぎくしゃくしたあげく、いったんはつき合いを断ってしまう。利一さんは人のために気働きして自分は一歩いい方向へ踏み出せていない気がする(最後の最後はそうでもないのだと思うけれど)。
    利一さんがそうしてしまうのはなぜか。そこがかつての離婚や人づき合いの背景に影響していると思うんだけど、それって勝手な「男たるもの」意識なんじゃないかなとふと思う。利一さんがマッチョ思想なわけではないのだけど、世の男性が心ひそかに思ったり重荷にしている意識に利一さんも縛られているんだろうなあ。
    こんなふうに思ったのは、元妻の父親が「男たるもの」的なことを利一さんに話すところがあったから。ちょっとステレオタイプな描きぶりで、この小説にそぐわない気もしたんだけど、女子ども以外として生きるのってつらくもあるだろうし、よかれと思っていることが、ほかの人を不幸にしていることもある。小説の定石として最後は示唆的に終わっているけど、その先の利一さんを知りたい。

  • 家族がバラバラとなり、再生を図りたい一家の主であるバス運転手利一が乗務中に乗客として現れたのは元妻だったことが余計に家族とのギクシャクした関係に苛まれてしまう。息子は東京での仕事や人間関係などに疲れ果て仕事を辞め実家に戻り、娘は知人と共に企業をしたい気持ちが強いこと、結婚を控え、更に家族はギクシャクしてしまうが、元妻の父と一緒に旅行で一家が集まり、少しづつ蟠りも解けて、家族が元の形へ戻りつつあるのが明るい兆しだと感じる。元妻の父も良い思い出となり、夫婦同士きちんと思っていたことを話せて、歩みだす姿が良い。

  • 離婚した家族の物語。
    それぞれが口にできない想いを抱えて生きている。
    父、母、息子、娘だけじゃなく、その周りにいる人々もたくさんの想いを抱えている。
    結局、皆が身勝手で、傷付くのが怖いから壊れた理由に向き合おうとしないんだと思うと、その弱さに腹が立つけれど、自分も同じじゃないかとハッとしたり…
    唯一、逃げようとしなかった志穂の強さが心に残る。
    壊れた家族は元には戻れないけれど、なんとなくスッキリと再出発できるような終わりでよかった。


  • 「ミッドナイト•バス」by伊吹有喜

    深夜の高速バスの運転手である高宮利一。

    東京の大学を卒業し、不動産開発の会社に就職、結婚。過酷な仕事を離れてゆっくり生きようと地元新潟に帰り、高速バスの運転手に。

    妻美雪は16年前に家を出て離婚。

    手元で育てた娘彩菜、息子怜司もそれなりの年頃となり自活するも、うまく社会には乗れていない。

    互いに慕い合う小料理屋の志穂。

    利一を始め皆それぞれ繊細で人の気持ちに気がつくが故に自分を息苦しくしていく。そんな彼等が交わっていく..

    新潟を深夜に発ち、東京に向かうバスはやがて長いトンネルを超えていく

    夜の世界がトンネルを越えると明け方を迎えるように
    吹雪の世界がトンネルを越えると晴れた朝を迎えるように

    彼等の人生も新しく輝いて欲しいな。

    .

  • 東京での仕事に挫折し、故郷で深夜バスの
    運転手として働く利一。そんなある日、
    16年前に分かれた妻が乗車してきて…。
    おだやかな筆到で描く家族の再生、
    そして再出発の物語。

  •  離婚によってそれぞれが心に傷を負って、なんとなく幸せになれないままに生きてきました。それぞれに何かしらの負い目を感じ、自分を罰しながら生きている。
     それでも陰鬱な感じにならないで、寧ろ爽やかな感じがします。
     抱えていた問題を、家族がやり直す事で解決する。皆が幸せに向かって行く最後がよかった。
     

  • 様々な登場人物に感情移入して涙してしまった。
    物語が淡々と進むので、続きが読みたいという気になりにくいが、その世界に入ってしまったら登場人物がすぐ近くにいるように感じる。
    一番堪えたのは、主要人物ではなく序盤に出てきた東京の大学に通う息子を送ったお母さんのパート。「あと4年、あと4年」と口ずさむも帰ってくる保障はない。
    自分の母もこのように自分を見送ったのかと思うと涙が止まらなかった。
    レイジと同年代の自分も、もっと親孝行しないといけないと思った。

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著者プロフィール

1969年三重県生まれ。中央大学法学部卒。出版社勤務を経て、2008年「風待ちのひと」(「夏の終わりのトラヴィアータ」改題)でポプラ社小説大賞・特別賞を受賞してデビュー。第二作『四十九日のレシピ』が大きな話題となり、テレビドラマ・映画化。『ミッドナイト・バス』が第27回山本周五郎賞、第151回直木三十五賞候補になる。このほかの作品に『なでし子物語』『Bar追分』『今はちょっと、ついてないだけ』『カンパニー』など。あたたかな眼差しと、映像がありありと浮かぶような描写力で多くのファンを持つ。

「2020年 『文庫 彼方の友へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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