みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (462ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163903460

感想・レビュー・書評

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  • 個人的興味をつのらせ過ぎて中世の楽器リュートを習い、長崎のキリシタンの足跡をとことん辿る旅。仏教の家庭に育ち、ミッションスクールに通った星野さん。歴史家でもなく宗教家でもない彼女ならではの、極めてフラットな視点から深く掘り下げた話がとても面白い。

  • レビュー省略

  • 今のところ 今年のナンバーワン!

  • 前半の楽器のくだりはあまり要らないのではと思いましたが、中盤からの実地での探索などを通して深めていく部分についてはとても良かったです。前半はスピリチュアルな要素?も書いてあったりして投げ出しそうになったので星3つ。

  • 西洋から見たキリシタン迫害は、どのように見えるのか。カトリック系大学で学んだ女性の視点による長崎、島原、キリシタン大名有馬晴信・大村の膝元などの探訪記。中浦ジュリアンなど4人の天正少年使節の里も。そしてスペインのロヨラ訪問。スペインでは日本の印象は、「村の出身の身近な宣教師(パードレ)たちが残酷に殺された場所!」その時、日本人が多く殺されたことも知らない!実は宣教師たちが日本に潜入したのは、日本人キリシタンを見捨てることができず、彼らと一緒に死ぬためであったとのこと。カトリック教会の列聖、列福という仕組みがあり、日本での出来事が詳細に欧州には伝わっていたということ。キリシタン所縁の地を世界遺産にというのは著者にとっては御目出度すぎる滑稽噺かも知れない。衝撃なのは、「信徒発見」と美談として語られる1865年に浦上天主堂に名乗り出た隠れキリシタンのその後である。彼らも迫害され、牢に入れられ、600人近くが死んでいった者も多いとは衝撃的な事実!多くの日本人たちの悲惨な生涯が記録されているのは、一部の人たちだけであるとのこと。イエズス会や托鉢修道会の宗派対立が全体を把握できなくしているということも残念なことである。またそのことを日本人たちも実は気がついていたのは驚きである。
    日本人の改宗に宗教画が効果があったとの記述は成程!というところ。特に聖母マリア像はいかにも日本人好みに思われる。1582年3月8日の巨大彗星出現が、この年の大事件!を予言していたのはいかにも神秘的。

  • 好奇心の赴くままに、読み漁り、足を運んでいます。当時の楽器リュートまで誂え習得して、広がる探究心と掘り下げる情熱が眩しい。おかげで血が通った我が国のキリスト教盛衰史になっています。ところで、教会群は今までの世界遺産としてはタイプが違います。海外のキリスト者が殉教の地に来る目的。長崎はその残虐な迫害史に向き合う覚悟があるのでしょうか?どうやらエキゾチックやノスタルジーだけでは済まない遺産と気づかされました。

  • 渾身の作品、というと余りに商業主義に染まった言葉の響きがしてしまうけれど、これは星野博美のまさに渾身の一作だと思う。この作家の好奇心の旺盛さは認識していたし、その好奇心を満たすために労をいとわないことも知ってはいたけれど、これはすごい作品だと思う。言うなれば執念の為せる業だ。

    何故という問いを発することは比較的簡単な事だしそれだけで猫は死なない。何故に答えようとする行動力が伴って初めて猫をも殺してしまう好奇心といえるのだと思う。その意味では、星野博美を読み続ける切っ掛けとなった「転がる香港に苔は生えない」や「愚か者、中国をゆく」でも作家は十分に好奇心の強さを発揮していたと思うし、その行動力を少し羨ましくも思っていた。その好奇心の向かう矛先はどこまでも直線的で鋭く前方を切り拓くような躍動感がある。それが面白く、時に襟を正されるような気分にもなるのが星野博美を読む魅力だと思っていた。

    そんな星野博美だけれど「コンニャク屋漂流記」から彼女の好奇心はレベルアップしたように思う。単純に言えば何故に対する視点が輻輳化したのだ。鋭く切りつける為には躊躇してはならない。その為には、極端に言えば少し自己中心的な面が必要だ。しかし相手の事情を忖度しなければ見えてこないものもある。不遜な言い方をすれば、星野博美は切りつける前に周りに目が配れるように進化したように思われるのだ。とは言えその輻輳する視座を最初から得ている訳ではない。いわゆる小説における神の視点のようなものが本書の中にしかとあるわけではないのだ。ただただ好奇心に任せて広範囲に及ぶ何故の向かう先で集められた情報が、いつの間にか繋がり合い立体的に立ち上がり時空間に拡がる。その醍醐味を共感できる形に落とし込むことができるのが星野博美の才能だろうと思う。

    400年前のザビエルの来日から鉄砲伝来、種子島、南蛮貿易、長崎、天草四郎、と頭にただ詰め込まれたキーワードからは、内か外かの単純な構図しか見えていなかったけれど、外は外でポルトガル、スペイン、イギリス、オランダと、カトリックとプロテスタント、各宗派間の思惑やつばぜり合い、スペインと一括りに出来ない旧国家間の距離、宗教画に籠められた意図や残された書簡に書かれなかった事柄の意味。そんな複雑に縺れた糸の固まりを星野博美は一本ずつ自分の言葉で解きほぐしに掛かる。

    始まりはリュートを巡るエッセイかと思いきや、トンでもない歴史解説に発展していき、最後には時の隔たりをも超越する。さらに「島へ免許を取りに行く」や「コンニャク屋漂流記」の逸話にまで話は繋がってしまう。言ってみればエンデの「はてしない物語」の中で語られる「これはまた別の物語」と置き去りにされた物語たちを全て集めて来たようなものではないか。それを纏めた星野博美も凄いと思うけれど、何よりも主人公たちの物語を死に物狂いで遺してきた人たちがいたということに思い至ると衝撃すら覚える。世の中には名も知られていないアトレーユたちが如何に多く居たことか。それを思うと日本人はやっぱり忘れてしまうことが多すぎるのかも知れないとも思う。自分も少しは星野博美の拘りを見習おうか。

  • 重くて持ち歩きできず家でのみ読んでいたため、時間がかかってしまいましたが、本当に面白かったです。キリシタンについて多少は知識があるつもりでいましたが、誤った解釈を信じていたり、初めて知ることがあったり、たくさんの新しい発見がありました。

    本書はサブタイトルに「私的キリシタン探訪記」とあるように、著者のミッションスクール時代、香港での留学生活、ゆかりの地への旅、リュートという古楽器に魅せられたことなどと東西の歴史に関する記述が混ざり合い、著者の気持ちの動きを感じながら読み進めました。

    後半、長崎で殉教したハシントの故郷ラ・ハナで出会ったレオン神父とのエピソードが感動的で、納得、共感しました。かすかにモヤモヤする気持ちを抱きながら読んでいた箇所もあったのですが、それをパーッと晴らしてくれるように感じました。

    本書を読んで、もっと当時の歴史について知りたい気持ちが湧いてきました。私にとってガイドブックのような本になりそうです。

  • 丁寧な取材、地に足がついた視点。そして文章が読みやすいです。戦国時代の話でありながら現代の日本にも通じる主題です。

  • 大航海時代の話を読むと、いつも海に漕ぎだしていった人の勇気に感動する。
    宇宙に出て行った人の話でもそれは同じだ。

    ただ、多くの人たちは一発逆転を目指す山師だったという見方には妙に感心してしまう。

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著者プロフィール

1966年、戸越銀座生まれ。ノンフィクション作家、写真家。著書に『転がる香港に苔は生えない』(2000年、第32回大宅壮一ノンフィクション賞)、『コンニャク屋漂流記』(2011年、第2回いける本大賞、第63回読売文学賞随筆・紀行賞)、『戸越銀座でつかまえて』(2013年)、『みんな彗星を見ていた』(2015年)、『今日はヒョウ柄を着る日』(2017年)、『旅ごころはリュートに乗って』(2020年)など多数。

「2022年 『世界は五反田から始まった』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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