- Amazon.co.jp ・本 (540ページ)
- / ISBN・EAN: 9784163904160
感想・レビュー・書評
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前作『空の拳』で、ボクシング専門雑誌の編集部に配属されたためにボクシングジムに通い始めた空也の数年後を描いた続編だ。
ボクシング専門誌は廃刊となり、ようやく希望の文芸編集部に異動となった空也は、ジムも退会し、ボクシングからは遠ざかっていたが、ある日、ふと試合を目にしたことから再びボクシングに関わり始める。
いいやつなんだけれど、ややコミュニケーション障害気味な空也(でもこの数年で大人になったなぁと感じる)、本当は気のいい男なのにヒールを演じている立花、愛嬌があって商店街の人気者の坂本、時折ぞっとするほど悪意の感じる言動をする有田。ああそうそう、こういう人たちの物語だった、と数年ぶりの続編であるのに懐かしい気持ちですっと物語に入っていけた。
そして新キャラの「ノンちゃん」がすごくいい。
ボクシングを練習しても練習しても強くなれない、どうやって闘ったらいいのかわからない少年。
テーマはボクシングであるけれども、とても普遍的なことを描いている。何かを追い求めて極めつつある人が感じる、その「先に」ある茫漠としたものへの恐怖。その恐怖とどうしたら闘えるのか。さらにその先には何があるのか。
ただ強い人を描いた話ではない。むしろ強さの中の弱さを描いていて、だからこそ、胸を打たれる。
作中で、登場する小説家の筆名を検索したら3万件のヒットだった、それほどでもない、というようなニュアンスのシーンが出てくる。試しに「角田光代」と検索したら7万件以上ヒットした。
これだけの数、自分のことについて書いた何かがあって、作品を出すたびに勝手なことを論じられる、その恐怖の先に、作者は何を見たんだろう、と考えてしまう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2016.7.27読了
前作同様やっぱり長いし、何かと飲みに行きたがるのも飽き飽きだったけど、ノンちゃんの存在が最後まで読ませてくれた!ノンちゃん頑張れ!こうして魅力的な人物が一人いるだけで、小説って物凄く面白くなる。(図書館) -
どんなに強くても絶対はないし、最後は恐怖に耐えれる精神力の強さになるんでしょうね。
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最初からある種の予感を持ちながら読んでいましたが、みんなずっと同じじゃいられないからノンちゃん含め逃げたってもがいたって苦しみながら生きてる姿にぐっときました。
本気で生きるって自分と戦い続けることなんですね。それはボクシング以外でも、どんな人でも、限界って思い立ち止まりたくなる人生を歩いているから当然…。立花も坂本も中神もそして空也も本当に成長しました。どんな未来だってまっすぐ突き進めます。
一つのことをやりきった先に見える世界は明るくあってほしい。
登場人物みんな応援したいし自分も頑張ろって思えました。 -
うーん、ボクシングを見たくなった。
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角田さんはボクシング好きなんでしょうねぇ。チャンピオンになれる人もいるけど、当然なれない人の方が多いわけで、そういう人を書きたかったんだなあ。やはりそれほど入り込めなかったです。
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おもしろかった。空也の、有田さん評を読めただけでも収穫があった。
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ボクシングの話、長い、あまり感動しなかった。
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無自覚な悪意は、善意ずらした悪意より、自覚ある開くより、もっと凶暴で恐ろしいのかもしれない。
誰もが少しだけ強くなってその違う世界に向かうのだ。 -
前作が主人公がボクシングに関わるきっかけとなる配置転換から始まり、配置転換で終わる話となっており、登場したボクサー達はどうなったのということでの続編なのか、タイトルが拳の先となっている野かと思っていたが、最後まで読んでそのタイトルの意味が分かる。登場する人物達が書くことを見失った作家とかいじめられっ子とか、切ない話も含めて、すべて拳の先として描かれているが、作家は救われなかった。