影裏 第157回芥川賞受賞

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163907284

作品紹介・あらすじ

2019年10月めざましテレビで紹介され話題!
第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。〈著者略歴〉1978年北海道生まれ。西南学院大学卒業後、福岡市で塾講師を務める。現在、岩手県盛岡市在住。本作で第122回文學界新人賞受賞しデビュー。

感想・レビュー・書評

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  • 先に綾野剛と松田龍平で映画化された物を見た。
    映画を見て理解できない部分があったので、原作を読んでみた。が、原作を読んでもイマイチ理解できなかった。

  • ⚫︎受け取ったメッセージ
     人間を含む自然の美と不可知

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    第157回芥川賞受賞作。

    大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。

    北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、
    ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。
    ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。
    いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、
    「あの日」以後、触れることになるのだが……。

    樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。



    (✖️以下あらすじ✖️ネタバレ注意✖️)

    懇意にしていたにも関わらず、今野には何も言わずに日浅は会社を辞職し居なくなる。連絡手段がなくなる。数ヶ月後現れ、今野と再会。今野は以前の自由業者風の面影はなくなり、訪問型営業マンとなってビジネスパーソンといった出立ちである。日浅は会社を辞めた二日後には再就職をしていたことがわかる。再び釣りを一緒にするようになる。日浅は今野に仕事絡みの頼みをする。
    のち、釣りに行く2人。日浅はピリピリしており、今野も勧められた酒を頑なに固辞するなどの態度で仲違いする。
     震災で行方不明になる日浅。のちに今野の同僚にも同様の頼みの上、彼女に借金をしていることが判明。募る孤独と崩壊。大きな崩壊に感銘を受ける日浅が海に飲み込まれたであろうと想像する今野。
     日浅の実家を訪れる今野。今野の父親は被災から三か月経っても捜索願を出していないと知る。父親は、今野が大学に通わず、仕送りをしていた間ずっと遊んでおり、卒業証書は偽造であり、4年間騙されていたと言う。そんな息子とは絶縁したという。また、息子なら、死んではいない、と言う。息子の幼少期を語り、彼が不気味だったということ、決まって1人の人間としか付き合わないこと、どれも長続きしなかったことをつげる。 そして、震災の最中の泥棒すらやっていそうな人間であるとも言う。探すのはおやめなさいと言われる。が、最後に見せられる今野の大学の合格通知。
     後日、朝刊でATMを破壊しようとした男を思い出し、今野がその男の同胞であることを頼もしく感じた。


    ⚫︎感想
     エンタメ性や、はっきりとした帰結を求める人にはおすすめできない。
     純文学、文章表現の細やかさが好きな人にすごくおすすめ。

     自然。海へ繋がる川、樹木、小動物、鳥、猛禽類、昆虫などの美しい描写は、表現の仕方によって如何様にも美しくなるのだとわかる。大変細やかで、素敵だった。

    「そもそもこの日浅という男は、それがどういう種類のものごとであれ、何か大きなものの崩壊に脆く感動しやすくできていた。」という一文に痺れた。

     主人公である今野の目を通して描かれる日浅は、自然一つ一つの描写と同じく、繊細で丁寧に書かれてある。まるで自然と一体化しているような男として描かれていく。
     そんなふうに日浅を観察していたにも関わらず、突然居なくなったり、今野の知らないところで転職の動きをしていたり、何かピリついていたり、死んだのか?と思いきや、そんな簡単に死ぬような男ではないと思えたりする。

    著者は、日浅は自然そのものであり、今野の観察眼を通して、自然の美しさ、壮大さ、魅力、孤独、怒り、を描いたのだ、と思った。「一番身近な自然は、人間である」ことを日浅が代表している。

     自然観察同様、目に見える一部分の「今」はわかる。しかしながら、内部は全くわからない。しかもわからない部分の方が大きい。恩恵を享受し、仲良くなれるかと思っていたら、同時に命を取られる(作品では日浅が今野に精神的ダメージを与える)危険性がある。

     人間は、発生し、成長し、老いて、死んでいく。100パーセント人工物ではない。自然である。現代の私達は人工物にまみれながら思考し、それらを取り込みすぎるせいで、自分が自然であることを忘れている。我々は自然(この物語では日浅)に振り回される存在なのだ。そしてまた、今野自身も。もちろん自然である。周りを自分勝手に振り回し、助け、隠し、傷つき、回復する。

     なるほど、だから人間関係は複雑で難しいのだ。自然と自然のぶつかり合いなのだから。決して一筋縄では行かず、複雑にからみあって、こんがらがって、でも表面ではまとまっているように見えたりする。

     純文学を読むことの醍醐味は、今の自分を知ることにあると思う。同じものを読んでも、人によって、読む時期によって、感想や惹かれる部分が変わるのは本当に面白い。それは、人間は自然だからだ。人工物は決して感動したり、理解したりしない。

     改めて、人は自然であり、自然は人であると思うと、知り得ない部分を抱えているどうし、そりゃあコントロールできないよね、自分が自分でですら不可能と思った。

    表題「影裏」は、四字熟語「電光影裏」からきてい言葉である。(以下オンライン四字熟語辞典より引用)

    人の一生は短く儚いものだが、悟りを得た者の魂は滅びることなく、永久に存在するということのたとえ。
    中国の宋の僧の祖元が元の兵に襲われたときに唱えたとされる、「電光影裏、春風を切る」という経文の一句を略した言葉。
    命は落としても魂は消えることはないということをたとえた言葉で、春風を鋭く光る稲妻で切り裂いたとしても、春風は何の影響もなく、いつもどおり吹くという意味から。

    日浅=自然=魂=永久

    日浅の魂は今野の中に生き続ける。

  • 芥川賞受賞作。

    謎が多い本です。

    主人公は、男性ですよね?
    2年前、東京の会社から転勤になり、岩手に移住。
    2年前、東京で、付き合っていたのが、和哉。ん?
    同性愛なのか…和哉が女性系なのか…。

    岩手に移住してから、日浅という会社の同僚と仲良くなる。釣りに行ったり、酒を飲んだりした。

    突然、日浅が退職し、連絡の手段が無くなる。半年ほどして?日浅が、会社に現れ、また、釣りに行くようになった。
    日浅は、営業の仕事をしていて、一度、結婚式の会員になるのを頼まれ、申し込んだ。

    その後、東日本大震災が起こった。

    主人公の住んでいるところは、内陸部だったので、震災の被害はさほどなかった。

    しかし、ある日、日浅が亡くなった可能性が高いと、パートの女性から知らされる。
    パートの女性は、日浅に頼まれ、保険なども家族分入ったり、35万円貸したりしていた。震災後、返金して欲しく連絡したが、つながらず、会社に尋ねると、津波に飲み込まれたようで行方不明。

    主人公も、日浅の行方を探すが、手掛かりはなく、実家を訪ねた。実家の父は、日浅とは縁を切ったと。
    日浅は、親をだまして、大学の4年間、仕送りさせて、卒業証書を偽造していた。
    父に言わせると、日浅は生きていて、そのうち、震災のごたごたのまぎれて、窃盗などの犯罪を犯すに違いないと。

    最期に、震災後間もない頃、釜石市内の銀行ATMをバールで壊して捕まった男がいた。
    わたしは日浅がその男の同胞であるのを頼もしく感じた。

    これは、日浅が捕まったわけではないですよね?
    謎だ。

    映画化されているのですね。
    https://eiri-movie.com/
    全く興味が無いのですが、和哉が中村倫也なのが気になる…。予告動画を見ると、女装してました。
    あと、自然がキレイそう。


    ブクログ内で、小説読了207冊。

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/volume/1195648

  • ▼福岡県立大学附属図書館の所蔵はこちらです
    https://library.fukuoka-pu.ac.jp/opac/volume/294927

  • 2022/1/9購入
    2023/3/18読了

  • なんだろうか、終始 重苦しく不穏な話でした。100ページもいかない話でしたが、時系列もズレ、難しい漢字も多く、何を語りたいのか考える話でした。しかし、このモヤモヤ感が記憶には残る。

  • 坦々と誰かの日記帳を垣間見る様であった。
    何も感じとれなかった。

  • 急に大震災が絡んできた。

  • 最も親しいと思っていた友人(わたし)からも、家族からも見えない部分を残したまま行方不明になった日浅。完全な人物像など誰も掴みきれない、日浅の姿は語り手の「わたし」や会社の人間、父親の心の内に映ったものでしかない。
    自ら行動して行方不明になるよりも、強大な力によって身元不明の死者も多く出たあの災害で行方不明になったという結果が、日浅の曖昧な輪郭(人物像だけでなく生死も)を表現しきる為に必要だったのでは、と思う。何となく匿名タイプのSNSでの人間関係と似てるなとも思う。近いけれど遠い関係性

    時系列がバラバラなのと、元恋人とのやり取りを追想するシーンで少し混乱。日浅に対する距離感が近いな…と思ったらそういう事かと納得。個人的に、日浅の行動に含まれる隠喩表現(なのか?)が苦手で☆1つマイナス

  • ごめんなさい、なんか読みにくかった。
    芥川賞ってどれもこんな書き方の作品ばかりなのか?
    私の肌には合わなかったです。。。

  • えぐいね。この作品。

  • 余韻がすごい作品だ。
    先日盛岡を訪れた際、これも縁かと思い、以前から気になっていた、盛岡が舞台の本作を購入した。
    今野が仕事で住むこととなった盛岡で、親しくなった同世代の男・日浅。緑の美しい川辺で趣味の釣りに興じ、酒を酌み交わす今野と日浅。自然の描写がとにかく美しく瑞々しい。日浅が転職してから、じわじわと不穏な影が忍び寄ってくるのだが…後半、まさかの展開に目眩を感じる。現実と過去が入り組んで分かりにくい箇所もあるけれど…読み終えて、この作品は舞台が盛岡だからこそ成立する作品だなと納得した。
    長くはない作品なので、描かれていない部分を脳内で補う必要があるけれど、それが苦ではない。むしろ、いつまでも余韻に浸っていたくなる。淡々とした文章と思っていると、時々感情描写の生々しさに戸惑ったり、後半を覆う重苦しい空気が若干不気味に感じられたりもするのだが…そういったところも含めて、この作品の雰囲気が妙に好きなのだ。
    これは、是非映画版も見てみたい。

  • さらっとすぐ読み終えられた。釣りや自然の美しさ、雄大さの描写が素敵。

  • 映画を先に見た。原作がどうなのかが気になって登録。こちらは評価が分かれている感あり。だからこそ読みたいと思うのかも。
    ---
    読了。
    東北の自然、特に森林と河川生態系に関する描写が非常に美しい。釣り文学という分野があるが、そちらに属するものとも思える。
    短文の中に、「わたし」の心情のゆらぎが繊細に表現されている。東京近郊から地方へ転勤してきたお一人様の所在のなさ、またはLGBTというマイノリティの身の置き所。多様性への社会的包摂をそれとなくしのばせてある文体は、おそらく映画を先に見ていなければ行間を読めなかったかもしれない。
    そして、あの東日本大震災の津波で行方不明となった友人の知らない横顔が明かされていくくだり。地縁、血縁、社縁、いろいろな縁で生きていく地方の群像劇と、個々人の集合体である都市部から、地方へ出向してきた若者のこれからが、東日本大震災後の「いま」と現在進行形の未来をよく表している。

  • 文學界新人賞(第122回/2017年)
    芥川賞受賞(第157回/2017年上半期)

  • 時間の流れが掴みにくく、戸惑った。
    とても面白い部分と、とてもつまらない部分が織り混ざっていた。
    釣りや川辺の状況については、描写が細かく生き生きと感じたが、その他の部分では意味のわからない描写も多かった。
    芥川賞受賞作品であるが、文章の向こう側にあるモノを自分が上手く捉えられないのか、未消化部分が残った。

  • 面白かったけど難しかったな。岩手の川の自然の描写が壮大だった。濃密で。大きなものの崩壊に心を奪われてしまう日浅。「わたし」の釣り仲間だった日浅。岩手の唯一の友人だった日浅。突然会社を辞めた日浅。ノルマが足りないからと知人をまわって契約をとりつける日浅。学歴を詐称していた日浅。
    「わたし」はひとりで釣りを続ける。



    でんこう-えいり【電光影裏】
    人生は束の間であるが、人生を悟った者は永久に滅びることがなく、存在するというたとえ。▽「電光」は稲妻のこと、「影」は光の意。「電光影裏春風を斬きる(稲妻が春風を斬るようなもので、魂まで滅し尽くすことはできない)」の略。中国宋そうの僧祖元そげんを元げんの兵士が襲って殺そうとしたとき、祖元が唱えた経文の一句。

  • 第123回文學界新人賞受賞作品 として『文學界』2017年5月号に掲載。
    第157回芥川賞も受賞。
    本作が沼田真佑のデビュー作となる。

    震災前後の岩手を舞台に、突然親友を失った男性を取り巻く日常が淡々と書かれている。
    読む人によって、そして読むたびに、その物語の受ける印象と解釈は変わっていく、そんな作品だ。

    2020年綾野剛と松田龍平の共演で映画化。

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    OPACはコチラ!▼
    https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000034365

    貸出期間 1週間
    貸出希望の際は、図書館カウンターまで

    ◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇─◇

  • 芥川賞作品って自分とは合わないと思っているから読まないんだけれども、岩手が舞台と聞いて読んでみた(^^)思ったほど読むのが辛くはなかったけれど、やっぱり合わないな~(--;)でも二戸が出てきた時は嬉しかった♪

  •  沼田真佑「影裏(えいり)」、2017.7発行。初読み作家です。タイトルの意味が不明で手に取りました。全94頁ですが、20頁付近で失速しました。意味不明でした。部分部分の表現はいいなとは思いますが、面白くないと読み進めることはできませんね。

  • 影裏
    著作者:沼田真佑
    発行者:文藝春秋
    タイムライン
    http://booklog.jp/timeline/users/collabo39698
    大きな崩壊を前に、目に映るものは何か交差する追憶と現実

  • ざっと読んでしまってからやっとこれは一文一文噛み砕いて読まなきゃいけない系の文章だと気づく...。全体としてはそんなに長くないが、婉曲に語られる部分など、「含み」をもたせた文章に敏感であったらもっと楽しめたんだろうなぁと。自分の読み方を反省しました。

  • 不思議なくらい、なかなか読後頭から離れることがなかったストーリーでした。
    表現がやや難解で、今野と日浅の関係性が直截的に語られず随所に散りばめられた比喩表現のみだったところが、なんだか高尚な文学の雰囲気を醸し出していて、普通に読みたかった読者をとてつもなく困惑させてしまう原因になっている気がしました。
    匂わせがわかる人だけにわかる仕掛けが、評価の分かれどころかも。

    普通にわかりやすく書いたら、今野は陰キャで日浅はだらしなくて不実なオトコ的な話。それをここまで昇華させて美しい文章で仕上げていてすごいです。
    今野の日浅への想いや印象が、美しかったり雄々しかったり時には残酷だったりする盛岡の自然描写で表現されているところが一番良かったです。
    今野は一途に日浅に憧れていいところばかり見ていたけれど、美しい風景にも災害があるように、日浅にも裏の顔があったという残酷さを容赦なく突きつけられて、お気の毒としか言いようがなかったです…
    アバエクの極みだったのでは。
    日浅のことを理解しようと努力していた今野ですが、やはりいいところしか見てなかった、自分の都合のいい理想像でしかなかった、というのが痛いところで、わりと恋愛ではありがちな心理だったのが共感ポイントでした。面白かったです。

  • 場面の転換が突然起こるので、夢を見ているような朧気な印象を受ける文でした。驚きどころが偶にあって、興味深いです。

  • 芥川賞、映画化ということで読んでみた作品。
    初めの方の自然、風景描写はとても素敵で気持ちを奪われたが、内容的にはちょっと?
    日浅、謎の人物。
    読後のレヴューで LGBTモノといのをみて、そういう視点で読まなかったから分からなかったのかも?とも思った。
    でも多分再読はしない。

  • 映画を見て、原作を読んでみたいと思って読みました。
    映画と原作は、同じところは同じだけど全く違うところが多くて。
    映画の蛇の場面はなんだったの?原作では出てこなかったし、映画で見た今野の気持ち的な感銘が原作にはまったくなかった(あったけど私には感じられない形で、それを凡人にもわかりやすくするために映画には蛇の場面を入れたのか?)
    どの部分が芥川賞なのか。難しい賞の良さは私には分からないみたい。

    ---- あらすじ ----
    第157回芥川賞受賞作。大きな崩壊を前に、目に映るものは何か。北緯39度。会社の出向で移り住んだ岩手の地で、ただひとり心を許したのが、同僚の日浅だった。ともに釣りをした日々に募る追憶と寂しさ。いつしか疎遠になった男のもう一つの顔に、「あの日」以後、触れることになるのだが……。樹々と川の彩りの中に、崩壊の予兆と人知れぬ思いを繊細に描き出す。

  • miu404がよくって、綾野剛の他の作品も…と思い、この本を読んでからDVD「影裏」を観ることに。岩手に出向になった今野。唯一心を許せたのが日浅だったが、ある日いきなりいなくなり。足跡をたどるうちに、日浅の知らなかった一面が見えてきて…と。釣り、灌木、日本酒、岩手の風景を分かち合い、お互いに存在が大きくなったように感じていたのに。再会はあっけなく、そして、契約をしてくれという懇願。お礼だから、という川縁の釣りは、日浅が負い目を覆い隠すかのように今野に攻撃的で、今野の繊細さが耐えられず泊まりの予定を日帰りに変更し。そしてそれが二人の会った最後であった…と。静かな印象、繊細な心理描写、淡々としつつちらちらとほのめかされる事情。東日本大震災を挟んでも、それほど揺るがなかったはずの世界観が、日浅の行方不明でおおきく揺るがされ。最後の釣り場のシーン、呆然としつつも、すこし自分の足で歩む思いが描かれたのが救いか。

  • 実は奥深いのだろう。私の修行が足りず、読み込めなかった。重苦しかった。

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