ミカエルの鼓動

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784163914428

感想・レビュー・書評

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  • 説明 (Amazonより)
    この者は、神か、悪魔か――。
    気鋭の著者が、医療の在り方、命の意味を問う感動巨編。

    大学病院で、手術支援ロボット「ミカエル」を推進する心臓外科医・西條。そこへ、ドイツ帰りの天才医師・真木が現れ、西條の目の前で「ミカエル」を用いない手術を、とてつもない速さで完遂する。
    あるとき、難病の少年の治療方針をめぐって、二人は対立。
    「ミカエル」を用いた最先端医療か、従来の術式による開胸手術か。
    そんな中、西條を慕っていた若手医師が、自らの命を絶った。
    大学病院の闇を暴こうとする記者は、「ミカエルは人を救う天使じゃない。偽物だ」と西條に迫る。
    天才心臓外科医の正義と葛藤を描く。


    『月下のサクラ』に続いて 好きな作家さんなのにまたもや入り込めなかったわ...
    医療モノは好きなのにおかしいな...?!
    それにしても、医療行為が目の前に見えるような気になってしまうくらい情景が鮮明に描かれてますよね。
    このコロナ禍が続く世の中、私はお医者さんにちょっと不信感を持ってしまっています。
    西條先生や真木先生のようなお医者さんもいるはずです。と思いたい...

  • うーん、400ページ以上あるのに物足りなかった。
    これから救う命と今救える命どっちを取るかという難しいテーマが出てくるのに、軽く読めてしまったのはなぜだろう。
    ミカエルが天使か堕天使かというめちゃめちゃ緊迫したシーンでも、真木がいるから助かるだろうと思ってしまって。すべて西條目線だからかなあ?
    せっかく真木という人間がいるのだから、真木の過去も人伝じゃなくてその存在感をもっと活かして欲しかったです。

  • 病院の派閥の話かと思いきや(もちろんそれもあるけれど)、自分の弱さと向き合い、そこから一歩踏み出す姿を描いている。
    当然、自分に問い続け、踏み出すのもまた自分自身で。
    その葛藤がとても人間臭い。
    そしてただただ命の尊さと生きる強さが印象的だった。

    後半は怒濤。あっという間に読んでしまった。
    ロボットと人間、生と死、建前と本音。
    様々な対比が絶妙に絡み合う。
    そして生きることを描いているからこそ、人間の複雑な心理がまざまざと浮かび上がり、人間らしくて面白かった。

  • 何が正義なのか。自分としての正義を貫き通すことは困難かもしれないが、自分のことはだませない。

  • 医療現場を舞台にした闇と医療従事者の人としてのありようをテーマにした作品だが、さすが柚木裕子だけあって、医療についても綿密な取材、調査に裏打ちされた迫真の描写に物語の中に引き込まれていく。
    主人公の西條医師は、そのライバル的な存在である真木医師に似たような匂いを感じながら、激しく対立していく。彼は、ミカエルという医療支援ロボットを使った手術の第一人者であるが、その機器の闇の部分が明らかになったとき、どう振る舞うのか。物語の先に先にと引き込まれていくが、プロローグとエピローグで何を語りたかったのか、今ひとつわかりにくい。
    柚木作品では、佐方検事シリーズを待望する。

  • Audible で。
    主人公が自分にも医療にもとことん誠実な姿が潔く、好感を持ちました。
    ここに描かれた医療はここ数年のうちに現実になる、その時に、この作品で指摘された問題は一般国民にどう捉えられるのだろうと、興味深かったです。

  • ミカエルはユダヤ教・キリスト教における大天使のうちの一人だ。そして、この小説の中に出てくる手術支援ロボットの名前だ。
    天使が広げる大きな翼のような長くて繊細なアームで人間を病から救う様は、まるで天使のように見えるのかもしれない。

    北海道にある大学病院の外科医である西條は、ロボット支援下手術の第一人者といわれ、業界では注目を集めていた。その西條が務める病院に、真木という、早さと技術を兼ね備えた優秀な外科医がドイツからやってきた。
    既に確立しつつあるミカエルの存在があるのに、なぜ今になって真木を迎える必要があるのか。自身の出世の道が立たれるのではないかと西條は疑心暗鬼になり、真木に対してライバル心を燃やす。
    最先端のロボットによる手術と、抜きんでた才能を持つ人間の手による手術。
    幼い頃から心臓の難病を抱えてこの病院にやってきた少年を救うことができるのは、一体どちらの翼、もしくは腕なのか。


    わたしはこの著者の本が大好きなのだけれど、この本はそれほどいいとは思えなかった。特に最初と最後のシーン。あれには一体何の意味があったのか。
    過去に読んだ彼女の本の中には、最初にページをめくると、なんの説明もなく唐突にある場面から始まり、そしていきなり本編に入るというものがいくつかあった。あの場面はなんだったんだ?と薄っすら疑問に思いながら読み続けると「そうか、あれはここの場面だったのか」と衝撃を受けるのだが、今回はそれもなかった。
    二人の医師が出てくるが、彼らの目指す方向は同じなので激しい対立はない。極端に悪いヤツというのも出てこないので、そういう意味での盛り上がりにも欠けるように感じた。

    心のどこかで『白い巨塔』と比べてしまっていたのかもしれない。
    ああいうのを期待して読んでしまったから、読んだあとにモヤモヤしてしまったのだ。
    だけど手術のシーンの緊迫感は凄かった。詳細に調べて調べて、だからこそ描くことができる。素晴らしいと思った。

  • 面白かったですね。
    ただ主人公の葛藤が重過ぎるように思いました。
    医師というのはそれほど重い仕事なんですね。
    続きがあるなら主人公を救って欲しいと思います。

  • 懐かしい樽前山登山から支笏湖畔の丸駒温泉コースが、目に浮かんだ。とても面白く一気に読み終えたが、メーカーはともかく北大病院が不具合隠蔽する意味と理屈が理解できないし、自分を責める西條教授の純粋すぎる思考も理解できない。天使とか悪魔とか大袈裟すぎ!機械だから不具合は起きるし、そのためにバージョンアップしているんでしょ。「人間は何かを失ったとき、いままでいかに満たされていたのかを知る」「人生の意味は自分が納得できるかだ。結果がどうあれ、自分が決めた道なら後悔はない」その通りだけど、難しい…

  •  医学の世界における人間の葛藤を上手く描けていると思う。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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