- Amazon.co.jp ・本 (383ページ)
- / ISBN・EAN: 9784167309916
感想・レビュー・書評
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驚くべき本。かねがね物語が持つ意味合いというものを考えたいとおもっていたけれども、ノンフィクションというものはまた違った形で人間の心にアプローチすることができるのだ、ということを悟った。非常に緻密、繊細に物事を調査し、描写する人だと思ったし、また心理状態や人間関係の捉え方が冷静かつ正確で見事。客観的に、客観的にと語ろうとしたその努力が感じられる。
人間はある一定以上の精神的損害を負うと、それは最早癒えることはなく、傷として完結するしかない。村上春樹はこの本を読んでこんな見解に達したそうですが、わたしもこれには大方賛成、というかこの本を読んだ後ではこんな考え方をする以外に方法がない。人間をそこまで深く損なうことができるのは生きている人間である、という事実にゾッとした。生まれながらの性質、というものにわたしは今まで深く捕らわれてきたけれども、ここに来て生まれてから周囲がその人間に与える影響のあまりの大きさというものの存在についての認識を改めなければならなくなった。愛と暴力の根源的同一性、なんて不幸なアメリカ。 -
永遠に「好転することない」という繰り返し。
死ぬことでしかそのリングから出ることが叶わない。
死ぬことで、その連鎖がそこで止まる、それだけ。
傷はある程度を超えるともう治癒しないという。
破壊されつくした人格は、周囲を破壊し、最後は……。
丁寧で客観的な「何故」を繰り返した先に、救済はあったのだろうか。
ねぇ、神様。
私はあなたの救済の意味を、分からないでいる。 -
まるでよく出来たフィクションのようだった。どんなホラーな物語より、恐ろしかった。ぞっとする箇所が何箇所もあり、この本が夜中に手元にあるのが不愉快で、眠れば中から何かが現われ出るように思い、分厚い辞書で蓋をしてみたり、聖書を重ねて置いておいたりしたほど、読んでいるこちらまで追い詰められた。何か得体の知れない闇がこの本の中には存在する。そして、これは小説ではない。ノンフィクションである。(ここに書かれていることが、本当に真実だとするならば)
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結末までじりじりと、軽い事務仕事をしている時くらいの緊張感と頭の状態をキープさせられながら読み進めることになると思います。事実は小説よりも奇なりとは言いますが、そういった事実、実在の人物の気温や体温なども感じとれるような作品なんじゃないかと思います。だからこそ、さらりと読み飛ばすことができません。
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長男フランクが切ない。
ご飯が用意されて、楽しみにしてるのに、両親が夫婦喧嘩で、床にぶちまけるという環境は、子供には残酷すぎる。 -
誰が家族による一番の犠牲者かっていうと、ゲイリーよりフランク・ジュニアでしょ。
親による子供の私物化に目を覆いたくなります。
この本の印税によってフランク・ジュニアのその後が楽しいものになりますように。 -
妄想的なパーソナリティの父親と
ヒステリックなパーソナリティの母親のもとで、
生まれた子ども達は、こうなるのか。。
パーソナリティ障害なんだな。やっぱり。
パーソナリティ障害の両親の子どもは、
普通のパーソナリティの両親の子どもより、
パーソナリティ障害になる確率が高い。環境的にも遺伝的にも。
彼らが、家庭や子どもを欲しがらなかった。
それは、パーソナリティ障害と無関係ではないと思う。
自分の子ども時代に幸福を与えられなかったからこそ、
子どもに幸せを期待することが少なくなり、
自分もそうなってしまうかもしれないという恐怖感に押しつぶされるのかもしれない。
自分が純粋に家庭や子どもを持ちたいと思えるってことは、
幸せであったことの証なんだと思う。感謝したい。
ゲイリーに関しては、複雑な思いを抱く。
彼の行ったことは許されるべきことではないが、
殺人を行ったもととなるものは、彼自身が生み出したものではない。
それに対して同情はするんだけど、
やっぱり最愛の人がゲイリーに殺されたとしたら、
自分はやはり死刑を望むと思う。
彼の立場に自分が置かれたら、そうなってしまうかもしれないと分かっていたとしても。
--気になった言葉--
時として荒廃した心が生み出すのは、殺人なのだから(P315)
愛というものは他人と悪い関係を持ち続けるための十分な理由にならない -
著者はローリング・ストーン誌のライターであってこの物語の中でも兄と一緒にジョニー・キャッシュを聞いたりと音楽の思い入れが濃い。
宗教/霊/暴力といった要素が複雑に絡まり合った結果としての血塗られた家族の黒歴史を描いた衝撃のノンフィクションであり、村上春樹をして訳させたわけだからおもしろくないわけはないわけで。
あとはちょっと印象に残ったのが著者は兄ゲイリーのことをチャーミングとか形容するんだけどそれがまた...ね。