水に眠る (文春文庫 き 17-1)

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  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167586010

感想・レビュー・書評

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  • せかせかと読む本ではなかった。
    後で、ゆっくり読んだら違うかな。
    解説スゲエ…

  • 北村薫の初期短編で編まれた初めての短編集。著者の短編と、そしてアンソロジイに対する強い思い入れは異例の「あとがき」とそして本当に贅沢な「贅沢な解説」で窺い知ることができます。

    でも、収録されている短編は古い。いい意味で古いものもあるが、中には陳腐化してしまっているようなものもあります。

    例えば「くらげ」。誰もがスマートフォンの画面を眺めている現状は、「くらげ」で語られるディストピアをはるかに超越してしまっています(おまけに、この作品に対する解説は「パソコン通信」を引き合いに出されています。作品も古ければ解説も古いのです…)。「ものがたり」の忍ぶ思いも、寂しいことかもしれませんが、今の時代には合いません。松本清張の「遠くからの声」を思い出してしまいました。

    一方で、例えば、著者の作品の中で繰り返し語られるモチーフの萌芽を見ることができて楽しいです。例えば「はるか」。はるかちゃんと「かとりせんこうはなび」の真喜、他の本では「盤上の敵」の友貴子。きっとみんな同じ人ですよね。その原型がはるかちゃん。同じモチーフが後に形を変えて語られた例もあります。例えば、「一人暮らしのOLの部屋に無言電話がかかってくる」モチーフは、「恋愛小説」よりも、「紙魚家崩壊」に収録された「溶けていく」を思い出しました。でも、不自然さを強く感じてしまう「恋愛小説」より、「溶けていく」のほうがストーリーとしてよく書けているように思えてなりません。モチーフではありませんが、「植物採集」などは、俊一視点の「日常の謎」として読んでみたいと思うのは贅沢でしょうか。

    何となく「文章の練習をしているのかな」と思わせられる部分もあります。例えば「植物採集」のラスト一文は、著者の「詩歌の待ち伏せ」で取り上げられていた「朝の食事」のラストと共通するものを感じます。「恋愛小説」「植物採集」「かすかに痛い」などの女性視点の物語は「空飛ぶ馬」から始まる「円紫さん」シリーズに結実していますね。この頃は北村薫は性別不明の覆面作家、でした。

    こんな感じで、ずっと北村薫の作品を楽しんでいる視点からはいろいろと楽しめるところはありますが、やっぱり著者お得意の連作短編集のほうが理屈抜きで面白いと思います。逆に、直木賞受賞作の「鷺と雪」が面白くて、同じ著者の本をもう一冊、とこれを手に取った人は、もしかしたら「思っていたのとちょっと違う」って思っちゃうかもしれません。

    あと、本当に贅沢な「贅沢な解説」は一読の…いや、二読・三読の価値があります。


    【追記】
    「新型コロナウィルス感染症」の拡大防止のため、誰も彼もマスクをしている今日、「マスクの中身が入れ替わっていたら」なんてちょっと考えてしまいました。
    あと、<ソーシャルディスタンス市女笠>
    https://dailyportalz.jp/kiji/social-distance-ichimegasa
    これがくらげかな…

  • かなり読みづらかった。リタイア寸前だった。
    読むのやめればいいのにね〜
    おばかさんよね。

  • 以下の10作品がつまった短篇集。

    ・恋愛小説
    ・水に眠る
    ・植物採集
    ・くらげ
    ・かとりせんこうはなび
    ・矢が三つ
    ・はるか
    ・弟
    ・ものがたり
    ・かすかに痛い

    表題の「水に眠る」が一番好きだった。
    一部の人にだけ味を理解することができる、不思議なカクテル。
    その正体がなんとも美しい。
    小川洋子さんの世界に似ているので、好きな人にはおすすめ。

  • 少し不思議なやさしい物語。

  • 見合い話に苛立ち、後輩の若さがふと眩しい美也子の淡々とした日々に鳴り響く謎の電話。そして一年が過ぎて…「恋愛小説」。同僚に連れていかれた店で飲んだ水割りの不思議な味。ある切ない夜、わたしはその水の秘密を知る…「水に眠る」。人の数だけ、愛がある―様々な愛の形を描く短篇集。(「BOOK」データベースより)

    北村薫さんは覆面作家シリーズをついこの前、読み終わったところで、その流れで手に取った一冊でした。
    これ、ミステリじゃないじゃん(笑)。
    読み始めてすぐ、星新一氏のショート・ショートっぽいと思いました。
    だって現実味のない話ばかりで……。
    その中で「はるか」は好きだなあ。
    「ものがたり」もいいなあ、受け取り方が色々ありそうだけど。
    「かすかに痛い」の中の眼鏡越しの視界の描写はいつも私が思っていることそのもので、そうそう、そうなのよーと妙に共感してしまいました。

    何を感じていいのかわからない作品が多かったのは、私の感性の乏しさ故でしょうか。
    すんなりは読めたのですが、おもしろかったかと聞かれれば、うーんイマイチと答えざるを得ない……。

  • この人の本は透明感があります。短編集ですが、特にこの中でも「恋愛小説」「水に眠る」「植物採集」の3編は若い女性が主人公の場合の澄みきった悲しい心情が心を打つように思います。「恋愛小説」の美也子がピアノの音を聞かせてくれる謎の電話の主に初めて会う場面は感動的でした。「植物採集」の京子が俊一のために無駄なネクタイ購入をする悲しい気持ちが手に取るように分かりました。

  • 幻想小説。不思議系の短編。「?」という結末が多い。

  • 不思議なお話・・・。

  • よく解る話とよく解らん話が1:1。せつなさを感じるにはまだ幼いのかもしれない。

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著者プロフィール

1949年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学時代はミステリ・クラブに所属。母校埼玉県立春日部高校で国語を教えるかたわら、89年、「覆面作家」として『空飛ぶ馬』でデビュー。91年『夜の蝉』で日本推理作家協会賞を受賞。著作に『ニッポン硬貨の謎』(本格ミステリ大賞評論・研究部門受賞)『鷺と雪』(直木三十五賞受賞)などがある。読書家として知られ、評論やエッセイ、アンソロジーなど幅広い分野で活躍を続けている。2016年日本ミステリー文学大賞受賞。

「2021年 『盤上の敵 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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