輪違屋糸里 下 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
3.81
  • (205)
  • (254)
  • (282)
  • (28)
  • (6)
本棚登録 : 2055
感想 : 179
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646073

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 浅田次郎・新撰組三部作の二作目。輪違屋の糸里は新撰組副長の土方に惹かれ、土方もまんざらでは無い様子だが、利用されているようで報われことはない。糸里の、島原の女性として矜持を失わず凛とした姿とは対照的に、格好いいと見られがちな新撰組の脆さや、武士に憧れてもなれない近藤たちと、武士である芹澤との確執の理由など美化せず、書いているところが良い。京都に旅行すると、今でも乗り合わせたタクシーの運転手さんの新撰組評価は厳しかった。関東の田舎者、人斬りという印象が強いのか。ついこの間の出来事のような感覚だった。

  • さすがに上手い。永倉と斎藤の関係が面白い。

  • 安定の浅田次郎品質。
    あまり良く知らなかった新撰組の事情が分かるのも嬉しいが、あの時代にしかない世の理不尽さが興味深い。

    当時の激動の裏側を主に糸里という太夫の目線を通して読ませる。
    女性は男性の考えが分かるけど、男性は女性のことなど一生分からない。なのに、男は偉そうにし、腕力、権威、立場を使って女性を駒のように使う。
    良くも悪くもそれがうまく機能していた時代。

    気を確かに持たないと上下通して五回ぐらいは泣いてしまう。また読み直すと違う視点で楽しめそうな一冊。

  • ずっと、読み止めていましたが、やっとこさ読みきりました。

    浅田次郎の新撰組三部作の二作目。
    これ買うまで三部作の存在しりませんでしたが(・・;)
    一作目「壬生義士伝」が最高だったので期待しましたが、そこまでは感情が動かなかった。
    やはり、女性がメインってところが、感情移入しずらいとこだったのかも。

    人物描写が素晴らしいので、壬生義士伝と違った感じで面白かった。

  • 壬生に行った直後だったので、臨場感を持って映画的に読めた。こういう読書もいい。クライマックスへのそれぞれの心の描写がうまい。

  • 大好きな土方歳三がちっぽけな人物に語られている。浅田次郎の新選組三部作を読んだが女性の見た幕末は他の話とは風景が違う。後半は糸里の力強さが心地よかった。新選組はこの後尻つぼみになって行くのだが、地獄を見た女は地に足をついて前に進んでいく。所詮、男は女に牛耳られているということを確信する話だった。

  • 女性の目線で新選組を描き、しかも大方の小説で悪漢とされる芹沢鴨を主役に据えてみせるんだからたいしたものだ。最後は糸里ではなく、吉栄の語りで結ぶのもいい。

  • 下巻は特に面白い。
    誰が1番悪いのか?誰が1番悲しいのか?
    最後まで読むと考えさせられる。

  • 2014. 2.16読了。
    芹沢暗殺を成功させた近藤たちは、会津藩からも一目置かれる存在となる。
    だが、糸里だけが、新撰組の出世は愛する平山五郎の子供を身ごもりながら、惚れた男を殺す手助けをした吉栄の犠牲の上に築かれたことを告発した。
    そして糸里はすべての理不尽を背負い、吉栄に女としての幸せを与える。

    いつの時代も女は非力で、それでいてとても強い。
    糸里のように芯の通った凛とした生き方をしたいものです。

    女性目線から語られる生と死、そして時代の狭間の理不尽さ。とても深く、おもしろかった。

    「その人はな、おのれに魔法をかけて、おなごの幸せをおかあちゃんとおまえにめぐんでくれたんや。あの人のほんまの幸せは、太夫に上がることやなかった。」

  • 浅田次郎新選組三部作の第二作。
    今回は女性の目から見た芹沢鴨暗殺事件を取り上げているのだが、他とは違ってかなり斬新な視点になっている。
    芹沢鴨といえば新選組の中でも悪役としてのイメージが強いが、ここでは酒さえ飲まなければ極めて筋の通った信念を持つ憂国の志士。
    しかも太夫の切り捨てにしろ、大和屋焼討の事件にしろ、裏には芹沢が動くべき理由があったと云う。
    そんな芹沢でも会津藩から目をつけられて近藤たちに暗殺命が下り、土方の書いた筋書きにそって進む話のなかで、八木家の女房おまさ、芹沢が逗留していた前川家の勝、菱屋の女将であり芹沢の愛人でもあるお梅が新選組の面々と残した思いのやり取りが、事件のあとにやるせなく残る。
    最も悪役らしく描かれる土方でさえ、非情な暗殺計画推進に込められた本当の思いが明かされる終盤には同情を禁じ得ない。
    土方に思いを寄せ計画を助ける糸里も、最後にそんな彼の思いに気づきながらも袂を分かつところは、その後の新選組の悲惨な末路を伺わせているようにも感じてしまう。
    新選組に対するイメージ自体も変わりうる、浅田次郎さすがの作品だった。
    三作目も早く読まなくては。

全179件中 61 - 70件を表示

著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×