輪違屋糸里 下 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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感想 : 179
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167646073

感想・レビュー・書評

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  • 下巻を読んだ後も感想は同じく、「女は強い」。おいとやお梅のような女性がいたからこそ、現代の女性が活躍する社会になったのだと思います。

  • 壬生義士伝も本作もとても面白かったです。
    芹沢鴨の印象が変わり、登場人物全員が好きになれる物語でした。3作目も楽しみです。

  • 新選組に関わりのある女性から見た近藤、土方、芹沢らの描きかたが新鮮でした。百姓が武士を倒す。
    女性は強いですね。

  • 下巻は後半の盛り上がりがあり、どんどん引き込まれて読んだ。
    試衛館が芹沢を襲うのは、百姓が武士を乗り越えることというのが、本小説の三つの主題の一つである。
    永倉新八の「浪士文久報国記事」では、芹沢鴨を襲ったのは、御倉伊勢武(みくらいせたけ)・土方歳三・沖田総司・藤堂平助とある。これが史実に近いはずで、百姓(試衛館)対武士の構図ではない。(御倉伊勢武は後に長州の間者であることが分かり、斎藤一に斬られてしまった。芹沢粛清後に、芹沢が長州にやられたという噂を流されたのは、御倉にとって歯がゆいことだったに違いない。後の小説「一刀斎夢録」では御倉・永倉について斎藤一が語っている。)また芹沢はあくまでも兄二人が水戸に仕官した郷士なだけで、大百姓が武士に成りあがっただけである。芹沢の乱暴の理由は会津藩からの指図の一つだとして、芹沢の株を上げようとしても、私はあまり受け入れることはできなかった。酔わなければ尽忠報国の士であるというのはおかしいだろう。
    百姓が武士を乗り越える要は土方である。彼に語らせるとひたすら武士に成りたかったそうで、そのために好いてくれる糸里を駒として使い、糸里や吉栄・その子供の命も奪おうとした。また最後には糸里に多摩に百姓をやりに帰ろうと誘い、糸里から舞台を降りるなと言われて、仕方ないなあ嘆くところ、ただのチャラ男のようだ。これは著者の貶め作戦がうまく作用して、土方ファンとしてはとても残念だ。
    二つ目の主題は、主人公糸里が男を超えて強くなっていくところ。この主題のために冒頭で、芹沢に斬られた音羽太夫から「誰も恨むのやない。恩だけ刻め。」と言わせたんだろう。糸里が桜木太夫になる設定は、相手が土方→桂小五郎→伊藤博文と変遷していく強き女性だ。
    三つ目の主題は、浪士組に乗っ取られたかのような八木家おまさ・前川家お勝が隊士から話を聞くことで、女性の立場から浪士組・新選組の状況を推測していくことである。女性がメインの小説であるため、芹沢と共に斬られてしまう菱屋のお梅の心情や行動も丁寧に書かれていて、とても悲しい最期を迎える。
    受け入れられない内容もあるが、新選組初期の状況をいろいろな人物が一人称で語っていく構成にのめり込まされた。さすがである。(2021.11.4)
    ※2021.10.25読書開始、10.30読了(文庫2回目、honto版と併用して読んだ)

  • 最後まで女の優しさに頼っていて最悪な話だったけど、こちらが惚れ込みすぎた相手に、1回だけ、やっても良いと思った。

  • これは・・・。よかった・・・。壬生義士伝に引き続き嗚咽が止まらなかった。
    そして手に汗握る。結末が分かっていても、それぞれの想いが絡みあったりすれ違ったりで、ページを捲る手が止まらなかった。一気に読了。

    物語は、芹沢鴨暗殺事件をめぐる。
    新撰組と関わりのあった女たちを中心に、それぞれの立場で、それぞれの芹沢鴨暗殺事件が描かれる。
    新撰組の成り立ちや芹沢・近藤の対立についても詳しく描かれていて、読み物としても面白い。芹沢鴨の印象が少し変わるかもしれない。

    浅田次郎作品、実は壬生義士伝と王妃の館しか読んだことがないのだけれど、群像劇というか、それぞれの登場人物の描き方がとても魅力的だなと思う。
    当たり前のようだけど、それぞれの思いや信念があって、それはどう足掻いても変えられない場合があって、そのために人はぶつかってすれ違って、裏切って裏切られる。そのどうしようもなさを俯瞰で見ている、なんとも言えない気持ち。
    そしてそれぞれの思いをよりリアルに際立たせてくれるのが、日常の描写。食事の場面や、稽古の場面。何気ない日常会話から、登場人物たちが生き生きと動き出す。リアルに見てきたとしか思えない。新撰組の時代に生きていらっしゃったのかしら・・・。

    それはともかく、女性たちがそれぞれに真っ直ぐで強くて、圧倒される。
    男はんのようにおなごは自由には生きられない、そんな時代に、強く生きた女性たち。


    まずはタイトルロールにもなっている、京都・島原の置屋、「輪違屋」の芸妓、糸里。正直初めの方はあまり出番ないなと思っていたけど、ラスト圧巻だった。
    土方歳三といい仲、なはずなのに土方の思いは一つも見えてこない。そんな土方にちゃんと「踏み絵を踏ませてあげた」糸里が強くてかっこよくて。
    平間重助とのシーンはもう、おいとぉぉぉぉ、ってなる。重助との間にもちゃんと情が生まれていたことが最後にわかるけど、余計に辛い。
    「娘さんのとこへ、お帰りやす。わてを抱いてくれはったよりももっとやさしう、娘さんと抱いとくりゃす」
    糸里を通して見る土方歳三の姿。掴みどころがなく、「あの人だけはやめておいた方がいい」とさんざ言われた土方が、おいとに本音を語るシーン。
    「見えるか、おいと。俺ァ、本物の侍になるんだ。」
    でもやっぱりラストが強すぎる。ここがおなごの正念場や。


    吉栄はひたすらに辛かったな。ただ愛する人と幸せになりたかっただけ。
    でも強かった。
    愛した人が、殺されなければならない運命だと知った時、あんなに強く振る舞えるだろうか。
    「せめて明日の晩は、きょうのような月夜になってほしいわ。ほしたらもう一晩、夢を見さしてもらえるやんか。おとうちゃんとおまえと三人で、仲良う暮らす夢や。」
    そして糸里の愛が深すぎて泣く。きっちゃん、あんただけは幸せにならなあかん。


    新撰組の屯所、前川のお勝と、八木家のおまさ。
    家を守るものとして、隊士たちの母親として、複雑な思いややりきれない思いも多々あったと思う。それでも、ただ流されるのではなく、何が起きているのかを知り、自分が何をするべきかを考え、時にはちゃんと意見もする。自分が守るべきものを守るため。


    でもなんと言ってもお梅、かもしれない。
    西陣の太物問屋、菱屋の四代目、太兵衛の妾として江戸からやってきたお梅。店の切り盛りどころか台所の指図もできない妻を追い出し、使用人たちに疎まれながらも、傾きかけた菱屋をその商才で持ち直していく。そして掛け取りに出かけた先の壬生で、芹沢鴨に手込めにされる。
    彼女が一番強かで、人間らしくて、魅力的だなと思った。
    莫連で、気が強くて、でも優しくて。くるくると表情を変えながらもまっすぐに生きるお梅が傷つけられるのは見ていられなかった。
    「あたしが何をした。神さんも仏さんも、文句があったら言うがいい。女は乞食じゃあない。」
    そんなお梅が最後に神さん仏さんにかける最後の願い。
    「金も夢も、人の情けも、何もいらない。やさしいこの男と一緒に、あたしを毀しておくんなさい。」
    あーーーー。


    あと、暗殺前の最後の最後に沖田総司目線の章が入るの、演出として本当にニクすぎて辛かった。
    そりゃ怖いよね。

  • 非常に面白かった。てっきり史実に基づいた話かと思ってしまったが、基本的に虚構のようらしい。浅田次郎の幕末ものは、思った以上に生き生きと登場人物が描かれており、面白く読める。巻末の現輪違屋の主人との対談で、輪違屋のご主人が肯定的にこの小説を評価していたのが印象的だった。

  • 壬生義士伝で期待をして、こちらも読んだけど、正直期待外れ
    あまり印象に残りませんでした
    京都の書店でご本人にサインまで頂いたのに、なんだか残念

  • 上巻では、表題について違和感があったけど、最後まで読んで、腑に落ちました。

    どこかに幼いかわいらしさを残していた糸里が、終盤で切る啖呵のかっこいいこと。身の処し方の、鮮やかなこと。

    女の芯の強さが印象的な新選組の小説でした。

  • 知ってる話を違う視点から見るとこうなるという話で、その目の付け方はなかなか興味深かったが、元々が愉快な話ではないので、イマイチ入り込めなかった。でもまあ浅田さんらしい話でしたわ。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

浅田次郎の作品

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