私の男 (文春文庫)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167784010

感想・レビュー・書評

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  • 直木賞作品なので、タイトル程度は知っていたけど、読み始めてしばらくは「男にこんな文章書けるのか?」と驚いてしまった。しばらくして、この筆名の人物は女性だったと知り、腹に落ちた。(まあ作者の性別で物語の面白さが左右されるわけではないけど)倒叙形式で不思議な男女関係の謎が解れていくお話。

  • 気持ち悪いし到底理解はしがたい。
    それでも、現在から過去に遡って描かれている構成によって、二人の背景を知るべく引き込まれた。
    結局最後まで、二人を突き動かしたものがなんだか、わかったようなわからないような…。
    混沌としたままなのが、この作品のよさなのかもしれない。

  • 直木賞受賞のあと映画化してたし、当時の知人が桜庭一樹さんが好きだって言ってたから気になっていた作品。
    養父と娘の倒錯的な愛の物語。

    文学作品としてどうか、という見方ではなく一人の人間として読んだとき、どうしても精神的な気持ち悪さは拭いきれない小説だった。
    読んでいる間じゅう、あまり良い気持ちはしなかった。
    でも単純なその感想は多分それほど間違ってはいないというか、もしかしたら作者も、読者の多くがそう感じることを想定した上で書いたのかも?と想像したりもした。最初から理解は求めていないというか。

    震災で家族全員をなくした9歳の少女・花は、親戚である25歳の男・淳悟に引き取られ、養父と娘になる。
    しかしそこには大きな秘密がいくつか隠されている。
    物語は花が24歳になり結婚する場面から始まり、そこから時を遡っていく形で、様々な登場人物に視点を変えて進んでいく。

    愛というより共依存に近い二人の関係。
    それは複雑な生い立ちが背景にあることは読んでいてわかるけれど、とくに淳悟に関しては事実は分かれどその心理に迫った描写がほとんど無いから、彼がどうしてそうなってしまったのか理解出来ない気持ちが強かった。
    そしてそれは、もしかしたら作者の狙いなのかもしれないと思った。敢えて心理描写を避けたのかもしれない、と。
    花に関しても、元々いた家族に対する違和感を抱えていたことはわかるものの、冷めていてあまりにも全てを受け入れすぎている様が奇妙で、読んでいる側にも不思議な違和感を与えているように思った。

    周囲の人々はみな、ごく常識的で、この二人はそういう常識的な人々を蹴散らしながら二人だけの倒錯した世界に生きている。お互い以外は何もいらない、というような世界。
    それなのに場面は花が結婚するところから始まるから、それも奇妙でならない。

    評価が難しい作品。文学としては多分凄いのだと思うけど、心理的にはなかなか受け入れ難い。
    でも引き込まれてしまうのは間違いない。
    後味が悪いような、でも変に惹かれるものがあるような、そういう小説だった。

  • どの立場から読んでも、終始重苦しい。
    薄暗い世界を生きる花と惇悟。二人の世界がねっとりとした湿度を伴って、自分にまとわりついてくるような感覚でした。その感覚がどんどん麻痺して、読み進めて行くうちに、どっぷりハマっていたみたいです。
    絶対に理解できないような世界が、桜庭さんの描写にかかると、なぜか少しだけ理解できるような感覚に陥りました。現実にあったら、拒否反応だけど、小説だから受け入れられる、そんな世界。小説の醍醐味なのでしょう。久しぶりに物書きの偉大さにひれ伏した。

  • 珍しく3日に分けて読んだ。
    表紙の絵が、最初手に取った時は何とも思わなかったのに、章を追うごとにぞっとする絵に変わっていった。
    花しか見えない、血塗られた手。
    夜中に読んでたから余計怖かった。

    最後の嵐の章を読み終わると、今度は
    どうしようもない、いとおしいような、
    痛ましいような、離れてじっと見ていたいような
    そんな気持ちになった。

    2人の欠けた部分は欠けたままで
    お互いを補い合っていく様が悲しかった。
    あーそんな風にピースははまっていくんだね、と思った。

    花が大人になっていく、その移り変わりは別に特別なものじゃないように感じた。
    どこにでもある感じ。
    だから自分の顔にも殺人者の印がもしかしたらあるんじゃないかって少し不安になっている。

  • いままでいろんな本を読んで、この気持ちわたしも知ってるなって思うことは何度もあったけどここまで感情移入してしまうのは初めてでした。途中でくるしくて手が止まるくらい。
    紋別に限らず田舎って閉鎖されてるから外のものを受け入れにくいし似通った固定観念を持ってて、こういう生温かい思いやりや仲間意識みたいなものがあって、わたしはそれがすごく気持ち悪かったです。
    花と淳悟の関係はタブーとされてるものだけど、違和感も嫌悪感もありませんでした。
    ふたりがふたりきりになろうとすると常識とか正義が邪魔になってしまって、そこで正義を貫こうとか型にはめようとした人たちが排除されてしまったんだろうなと思いました。
    人が死ぬ死なないの違いこそあるけど、きっとみんなふたりきりを望んでいると思うし、そこで犠牲にしたものの大きさの違いというだけなのかな。
    だれかをほんとうに愛するためにはそれと同じくらい憎まないといけないとわたしは思っていて、だから花のいう「最低で最高なの」ってことばは本物だと感じました。
    欠損家庭で育ったひとは大人になってもおかあさんとおとうさんを求めて、もらうはずだった分の愛情をさがすんだと思います。
    だいすきな一冊になったのでこれからもたくさん読みたい。

  • 章が進むごとに、過去に話が遡っていく構成。93年に起こった奥尻島での地震・津波が発端となったストーリー。いびつな親子関係、親子愛?、淋しく苦しく、時として身の毛のよだつストーリー展開。

  • 映画を先に観てしまったので、
    妄想半分、映画の2人がちらついてしまったけど、小説よかった。
    こういうの好き。
    淳悟みたいなの好き。
    深い愛 。
    間違ってるけど間違ってないよ

  • 社会通念という概念から完全に逸脱した、愛の物語。
    汚いとか禁忌だとかそういう感情より先に、二人を美しいと感じてしまうような書きぶりに圧倒されてしまった。

  • ものすごく重くておぞましい内容なんだけど、読む手が止まらなかった……。最北端の冬の海の描写、キャラクターの描写、遡っていく構成、作者の筆力がすごい。

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著者プロフィール

1971年島根県生まれ。99年、ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。2007年『赤朽葉家の伝説』で日本推理作家協会賞、08年『私の男』で直木賞を受賞。著書『少女を埋める』他多数

「2023年 『彼女が言わなかったすべてのこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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