小さいおうち (文春文庫 な 68-1)

著者 :
  • 文藝春秋
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  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784167849016

感想・レビュー・書評

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  • 昭和の初め普通の人がどんな風に暮らしどんな楽しみがあったのか、回想として女中のタキの目線で色鮮やかに語られていく。
    私が想像していたよりずっと満ち足りた時代で、とても楽しい日常がわかる部分は読んでいて楽しい。
    その幸せなで平凡な日常にそっとそっと静かに戦争の影響が忍び寄ってくることが怖さを感じた。
    戦争だけではない色んな事が絡み合っていて読み応えがありました。
    読んでよかったと思う。

  • この本については「おもしろいか否か」ではなく読んだ方がいいと思う。女中タキの視点でみた昭和初期。描かれる大部分は奉公にあがっていた平井家(とりわけ時子奥様)であり、第二次世界大戦前後の社会の気風や人々のくらしがみえる。
    戦中も過酷さや貧しさよりタキと時子の間にあるあたたかいものにスポットがあたる。故に切ないラストを迎えるも読後はいい。良作。

    • kuroayameさん
      この本を以前読み終わっていたので、レビューを拝見させていただきとてもうれしかったです♪
      この本を以前読み終わっていたので、レビューを拝見させていただきとてもうれしかったです♪
      2013/02/22
  • 昭和初期、戦前戦後の裕福な家庭に女中奉公するタキちゃんの手記。
    その時代の暮らしがリアルでよくわかる。
    戦争のことを庶民はどういうふうに感じてたか。
    戦争になんの疑問も持たず、教えられたままを信じてる民衆が怖い。

  • 最後の最後までタキの謎や展開が分からなかった点が結構好きでした。

    自分の祖母も戦後ですが東京のお金持ちの家で女中をやっていたらしいので孫に感情移入して読めました。
    時子さん魔性の女ですね。
    絵の描写も凄く想像力掻き立てられて良かったです。
    戦後全てが無くなってしまったことで最後の絵の中のおうちの世界がより清く美しいものになり、もののあはれを感じました。

  • 昭和の初期。難しい時代を女中として生きた女性の手記によって物語は進みます。柔らかく静かな中に、ざらっとした不安定な危うさを持ち続けている文章だな、と感じながら読み進めました。自分は嫁ぐことなくずっとここで暮らしたいと思うほどタキの心をとらえたものとは何だったのか。
    最終章は衝撃でした。物語の流れが一変して、もう一度最初から読み返すと全く違った物語が見えてくる程。胸の奥に隠していた想いをぎゅっとつかまれたような鈍い痛みが残りました。
    一人の女性の生き方に、大きな余韻がしばらく続いた一冊です。

  • 2010年の直木賞受賞作。松たか子さんと黒木華さんの映画で有名。
    映画とおおよそのストーリーは同じだが、映画は映画、小説は小説で、それぞれの面白さがあった。一般大衆から見た、第二次世界大戦に突き進む日本の様子が細やかに描かれていて、とても興味深かった。現代と過去を行き来する進行や、語り手の交代など、小説の構成が面白く、最後まで飽きずに読める。
    暗くはないが上品でもの悲しくしっとりとした感じが中島さんらしくて、好きなタイプの小説だった。

  • この世界の片隅にと少し世界観が似ている気がした。きっと今のパンデミックも、今後の歴史で大変だったことがクローズアップされていくだろうけど、私達の生活もちゃんと幸せがあって、人と人との繋がりの中で生きていくんだろうな。

  • 映画を先に見てしまったのでずっと未読だったものをやっと。
    主人公が雇い主の妻に抱く恋にも近い感情は映画では描かれていなかったように思う。

  • 学校で習った戦時中の話と全く印象の違うことに驚いた。こんな風に楽しく過ごしていたなんて。なにが真実なのか戦後生まれの者には分からないのですが、恐いだけの歴史の授業では語られない、新たな面を知ることができ心が動かされました。こんな戦前戦中戦後の人々の生活があったなんて。

  • 戦時下の恋愛事件ー

    というほど、ドロドロした感じではなかった。
    昭和初期のドロドロは平岩弓の方が話が面白い。

    最初はゆったりと楽しそうに話が進んでて、よく考えると、13歳で女中なんてけっこうハードなんだけど、奉公先に恵まれて、楽しみながら成長していく。

    戦争物の悲惨さや暗さがなく、昭和初期の明るい街並みや、美味しそうな食べ物、レストランや別荘の様子など、戦前、戦中とは思えないほど豊かな暮らしぶりが見える。

    なんとなく似ているなと思ったのは、

    この世界の片隅に

    最初は子ども時代から始まり、結婚して夫が出征するまでは昭和の楽しい暮らしぶりが伝わる見ていて楽しい物だった。子供もドラマを時代劇を見るような感じで見ていたが、楽しんでみれた。

    でも、その頃実際では、外洋でことごとく日本が負け始め、資源もなく、若いたくさんの人たちを次々と送り込んでは、尊い命が次々と砕け散っていったのではないだろうか。国民には知らされなかったことだけど。

    本当にしんどいのは19年20年なんでしょう。

    学童疎開での子供社会での厳しい戦い。
    南洋に送られた兵隊の想像を絶する生活。

    読めば読むほど、子供たちの生まれた時代が、戦争がなくてよかった。と思った。うちの子に乗り越えていけるとは思えない。

    でも、後書きの対談でおばあさんの話として、
    80年代、景気が右肩上がりでどんどん良くなっていきそうだった時代に
    「ちょっと嫌だわね、戦前みたいで」
    ていう話が出てきて、少し怖かった。
    今もいろいろ条件が揃ってると思う。

    戦時中の人たちはみんなあの頃大丈夫だと思ってたけど、東京は焼け野原になった。
    今もみんな平和に暮らしてるけど、どうなるかわからない。日本の周りを見れば安心はできないと思う。

    最後の最後にタキさんは小中さんに言われた「女中の心得」みたいなものを思い出して、奥様のために罪を被ったのかなー。それとも別の何かのかなー。それにしても、タキさんが渡してないとは思ってなくって驚いた。

    あとがきで盧花公園の話が出てきて、うれしかった。

    直木賞苦手意識少しなくなったかも。

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著者プロフィール

1964 年東京都杉並生まれ。小説家、エッセイスト。出版社勤務、フリーライターを経て、2003 年『FUTON』でデビュー。2010 年『小さいおうち』で第143 回直木三十五賞受賞。同作品は山田洋次監督により映画化。『かたづの!』で第3 回河合隼雄物語賞・第4 回歴史時代作家クラブ作品賞・第28 回柴田錬三郎賞を、『長いお別れ』で第10 回中央公論文芸賞・第5 回日本医療小説大賞を、『夢見る帝国図書館』で第30 回紫式部文学賞を受賞。

「2022年 『手塚マンガで学ぶ 憲法・環境・共生 全3巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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